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写鏡の師
008
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文弘がふと目を覚ますと、そこはどこか懐かしい景色だった。
ふわりと香る甘いケーキ匂いに少し混ざる苦い煙草の匂い。
――この煙草は、祖母ちゃんの?
愛煙家だった祖母のことを文弘は思い出し、数回瞬きする。
「祖母ちゃん、いるのか……?」
周りを見ても、そこに文弘の祖母――福世の姿はなかった。
文弘はため息を吐き、目を閉じようとすると、呼び鈴が鳴った。
文弘が扉を少し開けると、そこにはなぜか優がいた。
優はニコッと笑い「こんにちは」と文弘に挨拶をした。
文弘は警戒するように優を見ながら「こんにちは」と返事をする。
「何の用ですか?」
「いえ。あなたに興味があるだけです」
「俺に? あんた、正気?」
「正気ですよ。俺はいつだって」
「……面白くも何ともないけど」
「俺にとっては面白いです。川中さん」
「…………」
優の言葉を全て聞いたら、何かいけないような気が文弘はした。
――さっさとこんな夢、覚めてほしい。
福世に会えるならもう少し、と思ったが。
優に会い、話をするとは。
文弘は扉を閉めようとすると、優は「無駄ですよ」と笑う。
「あなたは扉を閉めることはできない」
「は?」
「試しにやってみてください。きっとできませんから」
「……なぜできないと思うんですか」
「君は僕のものだから」
ニコッと優は笑う。
文弘はその笑顔にゾクッとし、扉を閉めようとした。
しかし、上手く身体が動かず、扉を閉めることができなかった。
「何で……」
いや、動くはず。
動かないと思い込んではいけない。
文弘はそう思い、ドアノブにかける手に力を入れ、思いっきり閉める。
バタンッ、と強く扉は閉まり、文弘は深くため息を吐いた。
――何だ、あれ。
閉めた扉に文弘は凭れる。
「…………」
文弘の心臓は、彼にあれに関わってはいけないと警告するように騒ぐ。
文弘は心臓を押さえながら、何とか落ち着こうと呼吸を整える。
「あんなの……ありかよ……」
ただただ他人に恐怖を与えるだけ。
それだけである。
――こんな夢なら、早く覚めてくれ。
文弘が強く願うと、次の瞬間、視界はいつも通りの文弘の部屋の天井だった。
ふわりと香る甘いケーキ匂いに少し混ざる苦い煙草の匂い。
――この煙草は、祖母ちゃんの?
愛煙家だった祖母のことを文弘は思い出し、数回瞬きする。
「祖母ちゃん、いるのか……?」
周りを見ても、そこに文弘の祖母――福世の姿はなかった。
文弘はため息を吐き、目を閉じようとすると、呼び鈴が鳴った。
文弘が扉を少し開けると、そこにはなぜか優がいた。
優はニコッと笑い「こんにちは」と文弘に挨拶をした。
文弘は警戒するように優を見ながら「こんにちは」と返事をする。
「何の用ですか?」
「いえ。あなたに興味があるだけです」
「俺に? あんた、正気?」
「正気ですよ。俺はいつだって」
「……面白くも何ともないけど」
「俺にとっては面白いです。川中さん」
「…………」
優の言葉を全て聞いたら、何かいけないような気が文弘はした。
――さっさとこんな夢、覚めてほしい。
福世に会えるならもう少し、と思ったが。
優に会い、話をするとは。
文弘は扉を閉めようとすると、優は「無駄ですよ」と笑う。
「あなたは扉を閉めることはできない」
「は?」
「試しにやってみてください。きっとできませんから」
「……なぜできないと思うんですか」
「君は僕のものだから」
ニコッと優は笑う。
文弘はその笑顔にゾクッとし、扉を閉めようとした。
しかし、上手く身体が動かず、扉を閉めることができなかった。
「何で……」
いや、動くはず。
動かないと思い込んではいけない。
文弘はそう思い、ドアノブにかける手に力を入れ、思いっきり閉める。
バタンッ、と強く扉は閉まり、文弘は深くため息を吐いた。
――何だ、あれ。
閉めた扉に文弘は凭れる。
「…………」
文弘の心臓は、彼にあれに関わってはいけないと警告するように騒ぐ。
文弘は心臓を押さえながら、何とか落ち着こうと呼吸を整える。
「あんなの……ありかよ……」
ただただ他人に恐怖を与えるだけ。
それだけである。
――こんな夢なら、早く覚めてくれ。
文弘が強く願うと、次の瞬間、視界はいつも通りの文弘の部屋の天井だった。
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