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第二十九話 別荘の殺人事件考察とドライブデートのお誘い
しおりを挟む「ねえ、さっき少し妬いた。急に不機嫌そうな顔になったよ」
美都留は嬉しそうに吉川を見つめた。
「夢の中の相手に妬くわけは無いだろう」
「ふふふ。夢の中の私のパートナは私の目の前の刑事と顔が何故か似ているのよね」
吉川は急に表情が和らぐことを自覚したが、嬉しそうに見える顔をしないように必死で表情を取り繕った。
吉川の注文した山口名物バリそばも来たので、食べながら話題を変えて、ブスッとしたまま美都留に質問した。
「川田の殺害と、淡路島の別荘で死体として見つかった林田と大内と関係があるのか」
「そうね。別荘の大内の死体の手にも桂馬が残されていて、それがダイイングメッセージだとすると二つの事件とも桂馬が犯人を示していて、川田も大内も犯人が桂馬と関連していることを知っているということになるわ」
「別荘の事件もやっかいなことがある。別荘は外へ出る扉も勝手口も中から鍵がかかっていて、鍵は暖炉付近の部屋の中に残されていると鑑識から聞いている」
「犯人がいたとすると、密室殺人事件というわけね」
「ああ、タブレットに偽造された遺書が残っていたから、犯人は自殺か事故に見せかけたかったはず。
密室のトリックを解かないと犯人を捕まえても法廷で事故か自殺の判断になってしもうかもしれないな。
ホテルも別荘も殺人事件として捜査本部は開いたが、一部では事故では無いのかという意見もまだ残っている」
「別荘の林田と大内の死体は、夾竹桃の煙だけで事故か自殺として中毒死させるっていうのは難しいと思うわ。
私もピンピンしているし。夾竹桃の毒は経口だと青酸カリよりも強いはずだから、殺人なら口に入れるようなものにもあらかじめ工作をしていると思うの。
遺書を偽造した犯人だから、別荘で自分だけ安全で、林田と大内だけ料理を食べたら殺せるような仕掛けもしているはずよ。
例えば調味料をふりかけるものに毒を仕込んでおいて、自分だけその調味料は使わないとか。
先に食べ物で中毒症状を起こさせた後、部屋に夾竹桃の木を暖炉に入れて毒の煙で確実に殺したのだわ。
そして自分だけ外から逃げた。
どうやって逃げたかはこれから考えるわ」
吉川はレストランから兵庫県警に電話をした。
別荘の事件に関して美都留からヒントをもらったことが気になり、淡路島の別荘以外にもその付近に怪しい調理用品や台所用品が無かったか、夾竹桃の毒が付着しているようなものがなかったかを改めて確認の電話をした。
「そう言えばさっき塚本社長が前夜祭で気になることを言っていたような。金銀ザクザク、真夜中で高嶺城の山頂とか」
美都留の瞳が一段と大きくなった。
「真夜中で高嶺城の山頂!
塚本社長も古文書のコピーを持っているのかなあ。
凄く気になる。
古文書は確か
『大内義長が残した埋蔵品の場所を記す。高嶺城天守から見渡す2九桂へ』
と書いてあったよね。
高嶺天守から見渡すということは、今の高嶺城山頂のことよ。
山頂付近に何かがある。
塚本社長も何か掴んでいるみたいだし。
ねえ今晩、レクサスで高嶺城にドライブデートしない?」
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