転部したら先輩が神だった

神河 斉

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おべんと

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「いやー、いい天気ですねー。暑いっ。」
暦上では秋とはいえ、やはり暑い。30℃をゆうに超える日々が続いている。中庭は風があるからいいものの、体育館の中はまさに地獄。運動部の皆さんにはご愁傷様・・・と思いつつ、先輩に話しかけると、
「そーだねー。暑さは応えるにゃー。」

霧峰東高校は3年前までは制服のない高校だった。今では男子は紺野ブレザーに赤のネクタイ。女子はセーラーにリボンとなっている。男女ともに、暑い季節はもっぱらカッターシャツだが。男子は白、女子は薄い青なのでわかりやすい。

「ベンチまで熱いじゃないですか!こりゃ中のほうがよかったっすかね~。」
「まぁもう外だから、外で食べるっ!」
先輩はそういって、弁当箱を広げ始めた。
結構色とりどりのおかずが入った弁当。なかなかおいしそうだ。

「おいしそうですね、楓牧先輩のお弁当。」
僕もお弁当を広げる。今日もいつも通りの自作弁当。普通のご飯に、昨日の残りの酢豚、マリネ、卵焼きが入っている。

「ん!おいしそうっ!ボクは酢豚をいっただっくよ~。」
そういってがっつり口にほおばった先輩の表情がみるみるゆるみ、徐々に驚愕へと変わっていく。
「え!?なに!?これ。おいしすぎるでしょ!?孔太のお母さん料理上手すぎない!?」
初めて孔太って呼ばれた事に感慨を覚えつつ、しっかりと訂正する。
「いや、それお母さんが作ったのじゃなくて、僕が作ったやつです。昨日の残りで申し訳ないんですが。」
たっぷり10秒ほどの絶句。
「両親が家にほとんどいないので・・・」
「それは知ってる。けど、こんなおいしい料理が作れるなんて・・・コウ君!」
先輩が僕の手を握る。そして、至近距離で
「ボクのお嫁さんになってくださいっ!」

あーだめだ、この人。今の1周回ったぼけでドキドキがおさまり、冷静になる。
「いいですよ。そのかわり、楓牧先輩がちゃんと稼いできて下さいよ。」
「あ、ごめんなさい。むりです。でも、コウ君!!これから、弁当作ってきてくれない?」

そういって最接近。近い。ヤバい。かわいい。惚れそう。
「良いですよ。その代わり・・・」
そこで、言葉を止め、意地悪い笑みを作ってみる。ちょっと怯えてる先輩かわいい。
「先輩が僕の分の弁当作ってきて下さいっ!」

先輩の口が空いてとってもだらしない顔になる。
「そんな上手じゃないけどいいの?」
「いいですよ!先輩の作る弁当なら!昔ちょっとあって、自分の料理がおいしくないんです。周りの人はおいしいおいしいって言ってくれるんですけど、自分はなんというか無感動で・・・」

「こんなのがおいしく感じられないなんてかわいそうだにゃ~。わかった、ボクもがんばって練習するよ!これからは、毎日物理実験室でお弁当交換ね!」

そういって、先輩は笑った。僕が今まで見た中で1番かわいい女性がそこにいた。そして、なぜか僕の目からは止めどない涙が流れる。




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