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梅が教師
お見舞い
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「お、山本来たか」
「早えな龍也!まだ皆来てないだろ」
「もうそろそろ来るだろ」
今日は日曜日だが、皆で集まって佐伯のお見舞いに行く事にした。
佐伯は3日前に盲腸の手術をして、経過は良好との事。
ならば、せっかくだしお見舞いにでも行こうと、駅前で待ち合わせする事となった。
行くメンバーは、龍也、泰彦、謙司、チャッピー、そして女子はデザイアーと片野と優希。
まぁ、いつものメンバーだ。
「おはよう!あれ、まだ2人しか来てないの?」
「おう、おはよう!まだ10分前だし、そろそろ来るんじゃないかな」
「おいっす、片野。デザイアーと一緒に来るかと思ってたよ」
片野は走ってきたらしく、息を切らせていた。
「あ、泰彦達が来た」
泰彦、謙司、チャッピーの3人が到着した。
「皆早えなぁ、ところでお見舞いだから何か持っていった方がいいのかな?」
お見舞い品には何がいいんだろうか。
「花とか、果物の詰め合わせとかじゃないか」
「後で皆で出し合って買おうぜ」
「あ、デザイアーと相沢が来た」
「おはよう、皆待った?」
「今来たばかりだよ」
「お、おはようございます…」
「デザイアー、休みの日もその頭なのかよ?」
「えっと…その、中々似合う髪型が無いから」
文化祭の時にはおかっぱ頭のカツラを取ったのに。
「じゃあ、行こうか」
駅前のバス停にはちょうどバスが着いたばかりだった。
オレたちはバスに乗り込み、病院へ向かった。
「そう言えばさぁ、佐伯が戻ってきたらサヤカちゃんはどうなるんだ?」
「どうって…そりゃお前、サヤカちゃんとはサヨナラだろうな」
「マジかよ…」
「瑠璃子がもう少し入院してくれりゃいいんだが」
「ちょっと、それじゃ佐伯先生が可哀想でしよ!」
「でもなぁ、サヤカちゃんには学校に残って欲しいよな」
車内は梅の話で持ち切りだ。
「だったら、期末テストでいい点数取るしかないだろ。オレらが90点以上取れば、サヤカちゃんの評価が良くなるし、臨時という立場から正式な教師になれるかもしれないじゃん」
オレがそう言うと、龍也は「そうか、いい点数取ればいいんだよ!そうなりゃ、学校だってサヤカちゃんの事を見直すだろし」と続けた。
「じゃあ、佐伯先生はどうなるの?」
「片野、お前はサヤカちゃんよりも瑠璃子派かよ?」
何だ、その派って?
「でも…どっちもいい先生だと思う…」
「うーん…国語の先生は2人も必要ないしな」
「こうなったら、瑠璃子には他の学校に行ってもらうってのはどうだ?」
「そんな事、出来るワケないでしょ!」
こればっかりはどうしようもない。
バスはもうすぐ病院の停留所へ着く。
「あ、次降りなきゃ」
降車のボタンを押した。
「とにかく、期末テストは何がなんでも90点以上取らなきゃな。そして絶対にサヤカちゃんの家でクリスマスパーティーやるんだ!」
「オレも絶対に行く!」
「オレも!」
女子達は呆れていた。
停留所に着き、バスを降りた。
目の前に病院がある。
「えっと、病室は何番だっけ?」
「ちょっと待って…えっと、503号室ね」
中に入り、エレベーターに乗り込んだ。
「あっ、しまった!」
急に泰彦が声を上げた。
「何だよ、急に!」
「お見舞い品買うの忘れた」
「あっ!」
もう遅い…
エレベーターの扉が開くと、目の前に503号室があった。
「個室かよ」
てっきり大部屋だと思ってた。
優希がドアをノックした。
【はい、どうぞ】
佐伯の声だ。
「失礼します」
ドアを開けると、佐伯はジャージ姿でベッドの上で本を読んでいた。
「あら、皆。わざわざお見舞いに来てくれたの?」
声のトーンが上がった。
「先生、元気そうで良かった」
「ゴメン、先生!お見舞いの品買うの忘れた」
「いいのよ、そんな気を使わなくて!」
佐伯は笑顔で答えた。
「そんな事より、代わりの先生が授業やってるんでしょ?皆ちゃんと真面目にやってるの?」
「何言ってんだよ、先生!オレらチョー真面目に授業受けてるよ!なぁ?」
「ホントに?信じられない!」
「先生、聞いてよ!男子ったらね」
片野は梅の事、そしてご褒美に梅の家でクリスマスパーティーをするという事を話した。
「何、それ!あなた達、そんな理由で勉強頑張ってるの?」
佐伯が眉をひそめた。
「あれ、もしかして先生ヤキモチ焼いてる?」謙司が軽口を叩いた。
「何バカな事を言ってるの!いい、そんな不純な動機で勉強しようなんて、ふざけるのもいい加減にしなさい!」
「おい、こんなんじゃお見舞いに来るんじゃなかったよな」
「ホントだよ…」
龍也と泰彦が声を潜めて話をした。
「でもオレら、そのお陰で真面目に勉強するようになったんだぜ!」
「お陰でも何でもない!どうせ、私に変わったら元に戻るんでしょ!」
「…」
否定する者はいない。
「はぁ~…どうせ先生はそのサヤカちゃんって先生みたいに若くないし、美人でもないからね」
「先生、いじけてるよ」
「いじけてない!」
何だか、寂しそうな感じに見えるな。
梅には残ってもらいたいが、佐伯にも戻ってもらいたい。
どうすればいいのやら…
とんだ、お見舞いだ。
「早えな龍也!まだ皆来てないだろ」
「もうそろそろ来るだろ」
今日は日曜日だが、皆で集まって佐伯のお見舞いに行く事にした。
佐伯は3日前に盲腸の手術をして、経過は良好との事。
ならば、せっかくだしお見舞いにでも行こうと、駅前で待ち合わせする事となった。
行くメンバーは、龍也、泰彦、謙司、チャッピー、そして女子はデザイアーと片野と優希。
まぁ、いつものメンバーだ。
「おはよう!あれ、まだ2人しか来てないの?」
「おう、おはよう!まだ10分前だし、そろそろ来るんじゃないかな」
「おいっす、片野。デザイアーと一緒に来るかと思ってたよ」
片野は走ってきたらしく、息を切らせていた。
「あ、泰彦達が来た」
泰彦、謙司、チャッピーの3人が到着した。
「皆早えなぁ、ところでお見舞いだから何か持っていった方がいいのかな?」
お見舞い品には何がいいんだろうか。
「花とか、果物の詰め合わせとかじゃないか」
「後で皆で出し合って買おうぜ」
「あ、デザイアーと相沢が来た」
「おはよう、皆待った?」
「今来たばかりだよ」
「お、おはようございます…」
「デザイアー、休みの日もその頭なのかよ?」
「えっと…その、中々似合う髪型が無いから」
文化祭の時にはおかっぱ頭のカツラを取ったのに。
「じゃあ、行こうか」
駅前のバス停にはちょうどバスが着いたばかりだった。
オレたちはバスに乗り込み、病院へ向かった。
「そう言えばさぁ、佐伯が戻ってきたらサヤカちゃんはどうなるんだ?」
「どうって…そりゃお前、サヤカちゃんとはサヨナラだろうな」
「マジかよ…」
「瑠璃子がもう少し入院してくれりゃいいんだが」
「ちょっと、それじゃ佐伯先生が可哀想でしよ!」
「でもなぁ、サヤカちゃんには学校に残って欲しいよな」
車内は梅の話で持ち切りだ。
「だったら、期末テストでいい点数取るしかないだろ。オレらが90点以上取れば、サヤカちゃんの評価が良くなるし、臨時という立場から正式な教師になれるかもしれないじゃん」
オレがそう言うと、龍也は「そうか、いい点数取ればいいんだよ!そうなりゃ、学校だってサヤカちゃんの事を見直すだろし」と続けた。
「じゃあ、佐伯先生はどうなるの?」
「片野、お前はサヤカちゃんよりも瑠璃子派かよ?」
何だ、その派って?
「でも…どっちもいい先生だと思う…」
「うーん…国語の先生は2人も必要ないしな」
「こうなったら、瑠璃子には他の学校に行ってもらうってのはどうだ?」
「そんな事、出来るワケないでしょ!」
こればっかりはどうしようもない。
バスはもうすぐ病院の停留所へ着く。
「あ、次降りなきゃ」
降車のボタンを押した。
「とにかく、期末テストは何がなんでも90点以上取らなきゃな。そして絶対にサヤカちゃんの家でクリスマスパーティーやるんだ!」
「オレも絶対に行く!」
「オレも!」
女子達は呆れていた。
停留所に着き、バスを降りた。
目の前に病院がある。
「えっと、病室は何番だっけ?」
「ちょっと待って…えっと、503号室ね」
中に入り、エレベーターに乗り込んだ。
「あっ、しまった!」
急に泰彦が声を上げた。
「何だよ、急に!」
「お見舞い品買うの忘れた」
「あっ!」
もう遅い…
エレベーターの扉が開くと、目の前に503号室があった。
「個室かよ」
てっきり大部屋だと思ってた。
優希がドアをノックした。
【はい、どうぞ】
佐伯の声だ。
「失礼します」
ドアを開けると、佐伯はジャージ姿でベッドの上で本を読んでいた。
「あら、皆。わざわざお見舞いに来てくれたの?」
声のトーンが上がった。
「先生、元気そうで良かった」
「ゴメン、先生!お見舞いの品買うの忘れた」
「いいのよ、そんな気を使わなくて!」
佐伯は笑顔で答えた。
「そんな事より、代わりの先生が授業やってるんでしょ?皆ちゃんと真面目にやってるの?」
「何言ってんだよ、先生!オレらチョー真面目に授業受けてるよ!なぁ?」
「ホントに?信じられない!」
「先生、聞いてよ!男子ったらね」
片野は梅の事、そしてご褒美に梅の家でクリスマスパーティーをするという事を話した。
「何、それ!あなた達、そんな理由で勉強頑張ってるの?」
佐伯が眉をひそめた。
「あれ、もしかして先生ヤキモチ焼いてる?」謙司が軽口を叩いた。
「何バカな事を言ってるの!いい、そんな不純な動機で勉強しようなんて、ふざけるのもいい加減にしなさい!」
「おい、こんなんじゃお見舞いに来るんじゃなかったよな」
「ホントだよ…」
龍也と泰彦が声を潜めて話をした。
「でもオレら、そのお陰で真面目に勉強するようになったんだぜ!」
「お陰でも何でもない!どうせ、私に変わったら元に戻るんでしょ!」
「…」
否定する者はいない。
「はぁ~…どうせ先生はそのサヤカちゃんって先生みたいに若くないし、美人でもないからね」
「先生、いじけてるよ」
「いじけてない!」
何だか、寂しそうな感じに見えるな。
梅には残ってもらいたいが、佐伯にも戻ってもらいたい。
どうすればいいのやら…
とんだ、お見舞いだ。
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