上 下
104 / 124
ようやく馴染んだ高校生活

旧友達との再会2

しおりを挟む
「あっ、オレちょっとトイレ行ってくる」

花山はトイレに行こうとしていた。

「花っぺ~、帰りに店員からコーヒーもらってきて!」

ここのゲーセンは、サービスでコーヒーを一杯飲ませてくれる。

井上はコーヒーを持ってくるように頼んだ。

「バカヤロー!オレは吉川だって言ってるだろ!」

「いつまで言ってんだよアホ!」

花山はおどけながらトイレに入った。

「アイツ、高校でもあんな感じなの?」

花山の事を二人に聞いてみた。

「アイツのクラスさぁ…どういうワケか、アイツとおんなじようなヤツラばっかなんだよ」

気がつけば、皆タバコを吸っている。

その周辺だけが、白い煙に包まれている。

「花みたいなヤツばっかのクラスって、何かキツそうだな。
オレが先生だったら、絶対に担任になんかなりたくねえよ」

「ワハハハハ!そうだな、アイツ中学ん時と何も変わってないよな」

「えー、皆もそう大して変わってないぜ」

僕は皆が変わってないのが嬉しかった。

「まだ卒業して半年ちょいだからな」

「そういやさぁ、中学ん時
【高校は絶対に共学じゃなきゃダメだ】
とか
【制服は学ランのとこなんて行きたくねぇよ】
なんて言いながら、結局は男子校で学ランのとこ通ってんのな、オレら」

そう!

あの時は何がなんでも共学に行く!

なんて息巻いてたが、結局はこんな感じだ。

「だよなぁ~?これじゃ、中学の時の方が断然良いよ」

…そうだな、太田の言うとおり中学の方が良かった気がする。

その後中学時代の話に変わる。

あぁ、そんな事もあったっけ…なんて言って、バカ話をして笑った。

「ほら、吉川様が持ってきたコーヒーだぞ」

花山が人数分のコーヒーをトレイに乗せて来た。

「いつまで言ってんだよ!
そういやお前、中学ん時
【オレはトシちゃん】て言ってたじゃないかよ!」


ホント、コイツはしょうもないヤツだ…

でも、そこが変わってなくていいんだよな。

花山は天然パーマで、顔の作りはどことなくトシちゃんこと、田原俊彦に似ているような気がする。

…あくまでも、気がするだけだが。

「お前、アイドルなら誰でもいいのかよ!」

「そのうちフミヤとか、モックンとか言いそうだぞ!」

「ダハハハハ!」

僕たちは大笑いした。

すると、太田が思い出したかのように

「あ、そういや小野っち」

「ん?」

「お前、波多野と付き合ってんの?」

「何~っ?お前波多野と付き合ってのか?」

花山が食い気味に身を乗り出す。

「で、ヤッたのか?もうヤッたのか?」

花山…お前、ホント中学の時から全く変わってないな…ったく。

「ヤッてねえよ!っていうか付き合ってるっつうか、たまに会って遊ぶぐらいだよ」

「ホントかよ?付き合ってねぇのかよ」

「て事は、今度ヤルつもりだな?おい、ヤルんだろ?」

しつけーな、花は…

「何ですぐそうなるんだよ?吉川!お前はどうなんだよ?」

「バカヤロ、オレはアイドルだぜ!皆のものに決まってるじゃねーか!」

「やかましい、このチリチリ頭が!」

一斉にツッコミをいれる。

「じゃあ、波多野とは何もないのか?」

井上も太田もしつこく聞いてくるし…

「ないない、何にもないよ」

「出かけるって、何処へ行ってんだ?」

「ん~、渋谷とか原宿とか」

「スゲーな、オレらそんなとこに行く機会なんて無いぜ!
さすが池袋が学校だと、遊ぶ場所も都会だなぁ」

花、お前オレの代わりに学校行ってくれよ。

オレがそっちの高校に行きたいぐらいだ。

「いや、でもただプラプラしてるぐらいだよ。
あっ、波多野って酒飲むんだぜ!」

「マジで?アイツ酒飲むのかよ!」

3人共、驚いていた。

あの波多野が飲酒とはって。

「オレらタバコだけど、アイツはケッコー飲むんだぜ!」

「大酒飲みかよ」

井上はタバコは吸うが、まだ1滴も飲んだ事がないらしい。

「うん、かなり飲めるって言ってたぜ」

「そんなに飲めるのかよ!」

「アル中じゃねーの?」

花山、今度波多野に会ったら直接言ってみてくれ。

コイツなら言いそうだ。

「ギャハハハハ!」

それから波多野=酒飲み。

更に話が大きくなって、波多野=アル中という事になってしまった。


まぁそれも数年後のクラス会で、僕がおニャン子クラブのオーディションを受けた事と一緒にバラしてしまったんだけどね…

いつしか外は暗くなり、話が盛り上がり過ぎて時間が経つのを忘れていた。

「じゃあ、小野っち!もし編入するなら、絶対こっちに来いよ」


「わかった!じゃあ、またな!」


「じゃあね、バイバーい!」


「小野っち、またなぁ!」

3人はチャリに乗って帰った。

編入したいなぁ…もう1度、オヤジに頼むしかないか。

1人でぼんやりと編入の事を考えながら、歩いて帰った。
しおりを挟む

処理中です...