66 / 189
忌まわしき過去
慟哭
しおりを挟む
亮輔が授業を終えて帰宅すると、アパートの前に一台の高級車が停まっていた。
すると、中から達也が現れた。白い納骨袋に覆われた桐箱を手に。
「テメー、何しに来やがった!」
亮輔は怒りの表情で達也に殴りかかろうとした。
「待てよ!ほらこれ。テメーの母ちゃんの遺骨だ!」
えっ!…遺骨?何だ遺骨って?
亮輔は何の事だか理解できなかった。
「お前の生みのオフクロの遺骨だ。
この前事故死した」
先生が?何故、どうして?
頭の中が真っ白になった。
達也は更に続けた。
「ったく、テメーが経営してるソープが潰れてかなりの負債を背負って、挙げ句に事故死だなんて」
「ウソだ!そんな事あるはずがない!」
達也はポケットからタバコを取り出し、火を点けた。
「ウソじゃねえ!
しかも、その借金をこっちが肩代わりして、おまけに葬儀の費用まで出したんだ。本来ならテメーが葬儀代出すはずなんだぞ。でも、ウチの秘書だったワケだから会社で葬儀をあげた」
「借金って何だ?テメー、また何かやりやがったな!」
「おいおい、人聞きの悪い事言うなよ。いいか、お前の母ちゃんはウチとは別にソープを経営してたんだよ。だが、客は入らねえし、赤字になって潰れたんだ。こっちはその借金の肩代わりをしたんだよ!」
何がどうなってんだ?
「店の資金が無くなって、また金を借りたんだろ?
詳しくは知らねえけど、会社には無断で借金作って死んだってワケだ。そういう事だからこの遺骨はお前に渡すわ」
「おい!テメー、何やりやがった!オフクロを消したのもテメーだろ」
「バカな事言うな!オレは潔白だ。とにかく、会社としては無断でソープなんてやりやがって、挙句に潰して借金まで作りやがったんだ。ウチとしてはえらい迷惑してんだよ!こっちはその尻拭いをしてやったんだ、有難く思え!」
あの先生が死んだなんて考えられない。
確かに最近は疲れきった表情を見せていたが、事故死だなんて絶対にあり得ない…それに何があってもオレの事は守るとまで言ったのに。
「そういう事だから、この遺骨はお前に渡すのは同然の事だろ?こっちは善意で葬儀までやったのに、感謝の言葉すらねえのか!
ホントにロクでもねえガキだ!
母親が死んだのも知らずにフラフラしやがってこの、親不孝もんが!
いいか!これはお前に渡すから墓はテメーの金で立ててやれ!それから、もう二度と会うことは無いが、また会社に来たら今度は警察呼ぶからな、覚えとけ!」
達也は亮輔に骨壺を渡すと、車に乗り、走り去っていった。
この白い桐箱の中に先生が…
部屋に入り、骨壺を前に亮輔は呆然としていた。
あの先生が、こんな小さな箱の中に…
初めて鴨志田に会った高校の入学式。
高校を辞めざるを得なくなった時に一緒に住んだ日々。
サラ金に追われ、千尋に金を工面してもらう為に、目の前で鴨志田と交わった事。
行方をくらまし、ソープに沈められた時を見かけた日。
そして、アパートの保証人になって、生活を援助してもらい、見守ってくれていた。
色んな事がこの数ヵ月の間にあった。
亮輔はまた孤独になった。
まさか、こんな最期を遂げるなんて…
亮輔は声を上げて泣いた。
何故、身内がこんなに死ななきゃならないんだ!
亮輔は自分を呪った。もしかしたら、オレと関わる人々は全て死ぬんだろうか?
もうこんな悲しい思いはしたくない。
もう、誰とも仲良くならない。
もう、誰も信じられない。
もう、誰も愛せない。
亮輔は泣きながら心に決めた。
自分と関わっちゃいけない、
関わったら悲惨な結末を迎える。
ならばいっそ、他人と関わるのは止めよう。
それと同時に、達也を地獄に突き落とす。
証拠は無いが、千尋の件と言い、今回の事も達也が仕組んだワナに違いないと思った。
そのためなら何だってやってやる…そう、心に決めた。
すると、中から達也が現れた。白い納骨袋に覆われた桐箱を手に。
「テメー、何しに来やがった!」
亮輔は怒りの表情で達也に殴りかかろうとした。
「待てよ!ほらこれ。テメーの母ちゃんの遺骨だ!」
えっ!…遺骨?何だ遺骨って?
亮輔は何の事だか理解できなかった。
「お前の生みのオフクロの遺骨だ。
この前事故死した」
先生が?何故、どうして?
頭の中が真っ白になった。
達也は更に続けた。
「ったく、テメーが経営してるソープが潰れてかなりの負債を背負って、挙げ句に事故死だなんて」
「ウソだ!そんな事あるはずがない!」
達也はポケットからタバコを取り出し、火を点けた。
「ウソじゃねえ!
しかも、その借金をこっちが肩代わりして、おまけに葬儀の費用まで出したんだ。本来ならテメーが葬儀代出すはずなんだぞ。でも、ウチの秘書だったワケだから会社で葬儀をあげた」
「借金って何だ?テメー、また何かやりやがったな!」
「おいおい、人聞きの悪い事言うなよ。いいか、お前の母ちゃんはウチとは別にソープを経営してたんだよ。だが、客は入らねえし、赤字になって潰れたんだ。こっちはその借金の肩代わりをしたんだよ!」
何がどうなってんだ?
「店の資金が無くなって、また金を借りたんだろ?
詳しくは知らねえけど、会社には無断で借金作って死んだってワケだ。そういう事だからこの遺骨はお前に渡すわ」
「おい!テメー、何やりやがった!オフクロを消したのもテメーだろ」
「バカな事言うな!オレは潔白だ。とにかく、会社としては無断でソープなんてやりやがって、挙句に潰して借金まで作りやがったんだ。ウチとしてはえらい迷惑してんだよ!こっちはその尻拭いをしてやったんだ、有難く思え!」
あの先生が死んだなんて考えられない。
確かに最近は疲れきった表情を見せていたが、事故死だなんて絶対にあり得ない…それに何があってもオレの事は守るとまで言ったのに。
「そういう事だから、この遺骨はお前に渡すのは同然の事だろ?こっちは善意で葬儀までやったのに、感謝の言葉すらねえのか!
ホントにロクでもねえガキだ!
母親が死んだのも知らずにフラフラしやがってこの、親不孝もんが!
いいか!これはお前に渡すから墓はテメーの金で立ててやれ!それから、もう二度と会うことは無いが、また会社に来たら今度は警察呼ぶからな、覚えとけ!」
達也は亮輔に骨壺を渡すと、車に乗り、走り去っていった。
この白い桐箱の中に先生が…
部屋に入り、骨壺を前に亮輔は呆然としていた。
あの先生が、こんな小さな箱の中に…
初めて鴨志田に会った高校の入学式。
高校を辞めざるを得なくなった時に一緒に住んだ日々。
サラ金に追われ、千尋に金を工面してもらう為に、目の前で鴨志田と交わった事。
行方をくらまし、ソープに沈められた時を見かけた日。
そして、アパートの保証人になって、生活を援助してもらい、見守ってくれていた。
色んな事がこの数ヵ月の間にあった。
亮輔はまた孤独になった。
まさか、こんな最期を遂げるなんて…
亮輔は声を上げて泣いた。
何故、身内がこんなに死ななきゃならないんだ!
亮輔は自分を呪った。もしかしたら、オレと関わる人々は全て死ぬんだろうか?
もうこんな悲しい思いはしたくない。
もう、誰とも仲良くならない。
もう、誰も信じられない。
もう、誰も愛せない。
亮輔は泣きながら心に決めた。
自分と関わっちゃいけない、
関わったら悲惨な結末を迎える。
ならばいっそ、他人と関わるのは止めよう。
それと同時に、達也を地獄に突き落とす。
証拠は無いが、千尋の件と言い、今回の事も達也が仕組んだワナに違いないと思った。
そのためなら何だってやってやる…そう、心に決めた。
0
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる