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流浪の如く
やりたいようにやりなさい…
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寒さと水の冷たさで手が悴んでいるが、墓石を綺麗に水拭きした。
線香を上げ、手を合わせて会話をする。
「先生、妹がいたなんて知らなかったよ…
しかも、先生を探してるんだってさ。
その妹もかわいそうなヤツで、父親に犯されてたらしいよ。
まぁ、色々あって北海道から出て来て、どういうワケかオレと知り合ってしまったよ。
何でだろうな…偶然にしては、あまりにも不自然なんだけど、もしかして先生が引き合わせたのかな?
でも、オレ…
ナツの事が気になって仕方ないっていうか…でも先生との過去は言えないよ。
なぁ、先生。
ナツってオレの叔母さんにあたるんだよな?
これから、アイツとどう接していけばいいのやら…
…また来月ここに来るよ。
じゃあな、先生。いや、オフクロ」
必ず鴨志田の墓前で色々と話をする。
もしかして、約束をまだ果たしてないから怒ってるのかもしれない。
今はとてもじゃないけど、学校に通える余裕なんてない。
でも、どんなにかかっても学校だけは卒業しないと、ただのウソつきになってしまう。
それにしても、ナツは変な事を言ってきたな…
ーーーーーーー昨晩公園でのやり取り。
「古賀くん、しょっちゅう過呼吸になるの?」
「…はぁ、はぁ…もう大丈夫、心配ない」
まさか、ナツの前でこんなに呼吸が苦しくなるなんて。
「ねぇ、一度病院で診てもらったら?心療内科とかそういう所で」
「ギリギリの生活で、病院なんて行けるワケないだろ?」
「古賀くん、蓄えとかないの?こういう時、貯金しないと何も出来ないじゃない?」
「節目節目に色々と金が必要だったんだよ。せっかく貯めたのにあっという間に吹っ飛んだよ、金なんて」
「将来の時の為にって貯金するもんでしょ、フツーは!」
…レンタルクラブのオーナーにも口酸っぱく言われたな…
買い物もいいけど、ちゃんとお金を貯めておきなさい。
いざという時、お金が無いと辛いもんなのよ。
オーナーも結局は死んでしまった…
甥の瓜田に絞殺されて首を切断…
イヤな思い出ばかりだ!
「ねぇ、古賀くん…病院行きなさいってば」
「だから何度も言わせるなよ。
オレは食っていくだけで精一杯なんだよ…病院なんかに行ってる場合じゃないんだ」
「何で、大人にもなって貯金が無いの?お金入ったらすぐにパーっと使うタイプなんでしょ?」
…カチンときた。
「こっちはな、十代の時に親亡くして葬儀代やら、墓石買うのにどれだけかかったか!
テメーに分かるか?分かんねえだろっ!16,17のガキが親の葬儀やって、墓石建てて、一人で暮らしてきたんだよ!
テメーにそれが出来るか?出来ねえだろ!
その年齢で、理不尽な事言われて怒鳴られて、それでも仕事して食ってかなきゃなんねえんだよ!
親の財産なんて、アニキが全部持って、こっちには一円も入ってこなかったんだよ!
それでも、貯金貯金と言うなら、テメーがやってみろ!出来るか?
出来ねえクセに、分かったような口利くんじゃねえぞっ!」
静かな公園で、オレの怒声が響き渡った。
ナツはただ驚き、オレの過去にただただ唖然としていた。
「…」
「もういいよ、帰るよ。こんなとこにいたら、風邪引くぞ。分かったらもう、オレに構うなよ」
体調を取り戻し、公園を出ようとした。
「…待って古賀くん」
「いいから早く帰れよ、風邪引くぞ」
「そのお金私が出すから…だから病院に行って」
「オレは乞食じゃねえんだよ。何が悲しくて、女に金出してもらわなきゃなんねえんだよ」
哀れむような目で見てる。
「慢性化して、運転中とかに発作が起こったらどうなるの?下手すると事故になるんだよ?古賀くん仕事で車に乗るでしょ?
だからお願い、病院に行って!」
「気持ちはありがたいよ。ありがたいけど、借りても返す余裕なんて無いんだよ。だから借りる事なんて出来ないんだよ。
ほら、見ろよ…このカップラーメン。これが今日の夕飯だよ。
こんなもんしか食えないんだよ、今のオレには」
山下がいるが、見習いの為にあまり金を入れる余裕が無い。
ただでさえ、1人でも苦しいのに、もう1人増えて家計は火の車どころの状態じゃない。
もっと正直に言えば、家賃だって1ヶ月遅れで払っている。
しかも、アイツがアパートに住み着いてるのがバレたら出ていかなきゃならないかもしれない。
オレはこの先、ずっと金に苦しんで生きていくのだろうか?
「古賀くん。もし、もし良かったら家に住まない?ワンルームで狭いけど…そこで病院に通って少し療養したらどう?
お金の事は心配しないで、大丈夫だから」
一緒に住む?
「確かお前、前に言ったよな?誰も信じないって?オレも一緒で誰も信じないんだよ。おたがい信じられない者同士が住んでどうなるってんだよ?バカかお前は?」
相手にならん、オレはそのまま公園を出た。
後からナツが追うように付いてきた。
「何だよ、早く仕事に戻れよ。もういいだろ?だからオレに構うな」
「古賀くんさぁ、学校で習わなかった?マイナスとマイナスをかけるとプラスになるって。確か数学で習ったはずよね?」
「…何が言いたいんだ?」
「いいじゃん、マイナス同士で?誰も信じない者同士が住んだって。お互いの事干渉しないで済むじゃん?」
…そんなに上手くいくものじゃないと思うんだが。
「少し考えさせてくれないか?」
「…うん、分かった。それからもう1つ、着信拒否を解除して?」
「分かったよ。じゃ、答えが出たら連絡するよ」
「うん、待ってるから」
公園でナツと別れた。
(亮輔、好きにやりなさい。アナタはアナタの人生なんだから…)
…!オレは後ろを振り向いた。
鴨志田の墓石だけが、キラキラと光って見えた。
やりたいようにやれって事か…
帰ってナツに連絡しよう…
線香を上げ、手を合わせて会話をする。
「先生、妹がいたなんて知らなかったよ…
しかも、先生を探してるんだってさ。
その妹もかわいそうなヤツで、父親に犯されてたらしいよ。
まぁ、色々あって北海道から出て来て、どういうワケかオレと知り合ってしまったよ。
何でだろうな…偶然にしては、あまりにも不自然なんだけど、もしかして先生が引き合わせたのかな?
でも、オレ…
ナツの事が気になって仕方ないっていうか…でも先生との過去は言えないよ。
なぁ、先生。
ナツってオレの叔母さんにあたるんだよな?
これから、アイツとどう接していけばいいのやら…
…また来月ここに来るよ。
じゃあな、先生。いや、オフクロ」
必ず鴨志田の墓前で色々と話をする。
もしかして、約束をまだ果たしてないから怒ってるのかもしれない。
今はとてもじゃないけど、学校に通える余裕なんてない。
でも、どんなにかかっても学校だけは卒業しないと、ただのウソつきになってしまう。
それにしても、ナツは変な事を言ってきたな…
ーーーーーーー昨晩公園でのやり取り。
「古賀くん、しょっちゅう過呼吸になるの?」
「…はぁ、はぁ…もう大丈夫、心配ない」
まさか、ナツの前でこんなに呼吸が苦しくなるなんて。
「ねぇ、一度病院で診てもらったら?心療内科とかそういう所で」
「ギリギリの生活で、病院なんて行けるワケないだろ?」
「古賀くん、蓄えとかないの?こういう時、貯金しないと何も出来ないじゃない?」
「節目節目に色々と金が必要だったんだよ。せっかく貯めたのにあっという間に吹っ飛んだよ、金なんて」
「将来の時の為にって貯金するもんでしょ、フツーは!」
…レンタルクラブのオーナーにも口酸っぱく言われたな…
買い物もいいけど、ちゃんとお金を貯めておきなさい。
いざという時、お金が無いと辛いもんなのよ。
オーナーも結局は死んでしまった…
甥の瓜田に絞殺されて首を切断…
イヤな思い出ばかりだ!
「ねぇ、古賀くん…病院行きなさいってば」
「だから何度も言わせるなよ。
オレは食っていくだけで精一杯なんだよ…病院なんかに行ってる場合じゃないんだ」
「何で、大人にもなって貯金が無いの?お金入ったらすぐにパーっと使うタイプなんでしょ?」
…カチンときた。
「こっちはな、十代の時に親亡くして葬儀代やら、墓石買うのにどれだけかかったか!
テメーに分かるか?分かんねえだろっ!16,17のガキが親の葬儀やって、墓石建てて、一人で暮らしてきたんだよ!
テメーにそれが出来るか?出来ねえだろ!
その年齢で、理不尽な事言われて怒鳴られて、それでも仕事して食ってかなきゃなんねえんだよ!
親の財産なんて、アニキが全部持って、こっちには一円も入ってこなかったんだよ!
それでも、貯金貯金と言うなら、テメーがやってみろ!出来るか?
出来ねえクセに、分かったような口利くんじゃねえぞっ!」
静かな公園で、オレの怒声が響き渡った。
ナツはただ驚き、オレの過去にただただ唖然としていた。
「…」
「もういいよ、帰るよ。こんなとこにいたら、風邪引くぞ。分かったらもう、オレに構うなよ」
体調を取り戻し、公園を出ようとした。
「…待って古賀くん」
「いいから早く帰れよ、風邪引くぞ」
「そのお金私が出すから…だから病院に行って」
「オレは乞食じゃねえんだよ。何が悲しくて、女に金出してもらわなきゃなんねえんだよ」
哀れむような目で見てる。
「慢性化して、運転中とかに発作が起こったらどうなるの?下手すると事故になるんだよ?古賀くん仕事で車に乗るでしょ?
だからお願い、病院に行って!」
「気持ちはありがたいよ。ありがたいけど、借りても返す余裕なんて無いんだよ。だから借りる事なんて出来ないんだよ。
ほら、見ろよ…このカップラーメン。これが今日の夕飯だよ。
こんなもんしか食えないんだよ、今のオレには」
山下がいるが、見習いの為にあまり金を入れる余裕が無い。
ただでさえ、1人でも苦しいのに、もう1人増えて家計は火の車どころの状態じゃない。
もっと正直に言えば、家賃だって1ヶ月遅れで払っている。
しかも、アイツがアパートに住み着いてるのがバレたら出ていかなきゃならないかもしれない。
オレはこの先、ずっと金に苦しんで生きていくのだろうか?
「古賀くん。もし、もし良かったら家に住まない?ワンルームで狭いけど…そこで病院に通って少し療養したらどう?
お金の事は心配しないで、大丈夫だから」
一緒に住む?
「確かお前、前に言ったよな?誰も信じないって?オレも一緒で誰も信じないんだよ。おたがい信じられない者同士が住んでどうなるってんだよ?バカかお前は?」
相手にならん、オレはそのまま公園を出た。
後からナツが追うように付いてきた。
「何だよ、早く仕事に戻れよ。もういいだろ?だからオレに構うな」
「古賀くんさぁ、学校で習わなかった?マイナスとマイナスをかけるとプラスになるって。確か数学で習ったはずよね?」
「…何が言いたいんだ?」
「いいじゃん、マイナス同士で?誰も信じない者同士が住んだって。お互いの事干渉しないで済むじゃん?」
…そんなに上手くいくものじゃないと思うんだが。
「少し考えさせてくれないか?」
「…うん、分かった。それからもう1つ、着信拒否を解除して?」
「分かったよ。じゃ、答えが出たら連絡するよ」
「うん、待ってるから」
公園でナツと別れた。
(亮輔、好きにやりなさい。アナタはアナタの人生なんだから…)
…!オレは後ろを振り向いた。
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