仲村慶彦の憂鬱な日々 社会人編

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どうやったら卒業できるか

失神(おち)た

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沙織はオレの直属の上司だ。

入社以来、仕事を教わっており、教育係でもある。


いつもパンツスーツ姿で、スタイルは悪くない。

背は160半ば、やや茶髪でセミロング。

メイクは薄めだが、少し細目で、鼻筋が通っていて、純和風の顔立ちがクールに感じる。

後ろ姿なんか思わず襲いかかりたくなるようだwww

「仲村君!」

「あ、はい」

「この在庫見つけてきて、早く!ダッシュ!」

「は、はいっ」

人使いが荒い女だ。

まだ頭痛薬の効果が表れてねぇってのに!

教育係というより、パシりみたいな存在だ、オレは。


走ると頭に響く~!

「はい、ありました」

「ご苦労さん、それちゃんとチェックしておいてね。後、こっちの発注元の数もチェックしといて」

ああ、頭が…頭がグワングワンする~。

「聞いてる?解ったの?」

「は、はい」


口喧嘩だけじゃなく、実際の喧嘩も強そうだろうな。

ヤンキーというタイプではないが、怒らせたら恐そうな人物なのは間違いない。



「しっかりしてよね。二日酔いだから仕事にならないのは通用しないのは解ってるよね?3年も社会人やれば?」


「はい…承知しました」


うるせえ女だ!


だから男が寄り付かないんだよ、アンタには!


沙織は全く男っ気がなくて有名だ。

いくら美人でも、一言多い女は敬遠される。

「おぅ、二日酔い!今日もパシられてるじゃねえか」

廊下を走ってる時、野村とすれ違った。

「マジでキツいっすよ」

「あの女、人使い荒いな…アイツもう少し人当たりが良ければいいんだがな」

野村の言う通りだ。


仕事の出来る女ってのをアピールしたいんだろうが、下で働く連中は大変だ。


何も、こんな中小企業でバリバリやらなくてもいいのに…

キャリアウーマン気取りじゃん。


「仲村君、この伝票の数間違ってるじゃない!」

「エッ…あっ、間違えました!すみませんっ!」


「まだ酔っ払ってんの?しっかりしなさい!」

二日酔いとは言え、オレのミスだ。

ペコペコ頭を下げるのもオレの日課になっている。


「仲村~っ!またまたミスったのか!こうなりゃ、お仕置きだべ~」

野村がその様子を見ていた。

次の瞬間、背後から腕を巻き付け、スリーパーホールドで締め上げてきた。

「ぐっ、苦しい、ギブ、ギブ…」

「仲村、オマエ失神(おち)たふりしろ…」

野村が背後で耳打ちする。


締め落とされる事?

よくわからんが言われた通り、オレはバタバタともがきながら落ちたフリをした。

「仲村くんっ、仲村くん!
ちょっと、何してんの!
ねぇ、仲村くんっ!
…野村さん、何やってんですかっ!
仲村くん気を失っちゃったじゃないっ!」

オレが失神したと思い込んでる。

「ありゃ、頸動脈締めすぎたかな。おぉ~い、仲村、起きろ~」

わざとらしく野村はオレに問いかけ、パンパンと軽く頬を張った。

「冗談でスリーパー掛けたら落ちちゃったw
コイツがミスしたから、お仕置きしようとしたんだが…
参ったな、とりあえずコイツ起きるまで医務室に連れていくゎ」

野村はオレを背負い部屋を出た。

「医務室って…野村さん、これは完全な暴力行為ですよ?
こんな事許されると思ってるんですかっ!」

物凄い剣幕で野村を詰めた。

「ねぇ、仲村くん!起きて!」

心配そうに沙織がオレの顔を覗きこんだ。

こんな近くまで顔を!

どさくさに紛れてチューしちゃおうかwww

いや、そんな事は出来ねえし、やる度胸もない。
しかし…見れば見るほど美人だよな。

薄目で沙織の顔を見た。
目が綺麗だな…

こんな美人が彼女だったらいいんだけどな~。

いかんいかん、こんな女に騙されるな、しかし顔近すぎ!
これ以上失神したふりは出来ねえ!

「いや~、本当に申し訳ないっ!
高橋、とにかく医務室に連れてくから、後は頼んだ!」


「チョ、チョット野村さん…」

そのままオレを連れて医務室へ。


しばらくオレを背負った野村は

「おい、もういいぞ」

と言ってオレを下ろした。


「あの…これで良かったんですか?高橋さん、物凄い剣幕で野村に詰め寄ってましたよね?」



「関係ねぇよ!ちょっと早いが飯にしようぜ!
オマエとメシが食いたかったから、小芝居をしたんだw
オマエだって、途中で抜け出せて良かっただろ?」


「…ハァ~っ?」

このオヤジ、何考えてんだ?
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