仲村慶彦の憂鬱な日々 社会人編

どうやったら卒業できるか

オレを巻き込むなっ！

これ、バレたら沙織にマジでぶん殴られるんじゃないのかな…


「あの、野村さんマズくないすか？仕事中に抜け出すのは」

オレをダシにサボりたかったんだろうが、他に方法は無いのかよ？


「まぁ、そう言うな！オマエ腹減ってねえか？」


「まあ、腹減ってますが」

「いつも行列ができるトンカツ屋で飯食おうぜ。昼休みだと並んで食えないからな」

そのまま外に出た我々は少し離れた住宅街にあるとんかつ屋に入った。


昼前という事もあって、まだ人は並んでいない。

「まだ誰も並んでねえぞ、オレたちが一番乗りだ」

仕事よりトンカツ優先って…クビにならないかな、オレたち？

「仲村、何食う？オレの奢りだ、遠慮するな」

「いや…コレ、バレたらクビになるんじゃないすか？」


「安心しろ、クビなんかにならねぇよ！
仕事なんて何時でもできるが、ここのトンカツは今しか食えねえんだ。だから遠慮すんな！」

「じゃ、野村さんと同じヤツで…」

「すいませーん、特上ロースカツ定食二人前で」

野村は、席からカウンターに聞こえるように大声で注文した。

「はぁい、特ロース二人前」

店の人がお茶を運びながら注文を聞いた。

「なぁ仲村。
オマエ、あの女の下にいてやりづらくないか？」


野村が真顔で聞いてきた。

「でもまぁ、仕事だから仕方ないっす。高橋さんは入社以来仕事を教えてくれてますし」


あれこれパシられるのはイヤだけどね。

「アイツな、前に新入社員を辞めさせたんだよ」

「えっ！パワハラですか？」

マジか、あの沙織が？

「ここだけの話な。
その新入社員もまだ学生気分が抜けなかったのか解らんが、
アイツが【ヤル気がないなら辞めてもらって結構！】なんて言ったから、その新入社員も売り言葉に買い言葉で、じゃあ辞めますっ！って次の日から来なくなったんだよ」

それ、パワハラになるのかな？

「それって、高橋さんがフツーに注意しただけでは？」


「うん…その新入社員は女だったんだが、遅刻の常習犯でな。
挙句に、仕事中スマホばっか弄って、とうとう高橋がキレたらしいんだな」


その女子社員の勤務態度悪いのが原因だろうが。

「へー、そんな事あったんすか。高橋さんて、前は企画部でしたよね？こっちに来た理由がそれなんですか？」

「まぁそんなとこだ。
しばらくはやりづらいとは思うが、何とか上手くやってくれよ」

「エッ、まさかこれを言いにわざわざあんな小芝居したんすか？」

「んなワケゃねーじゃん！腹減ってここのトンカツ食いたくなったからオマエを誘ったんだよwww」

なんてヤツだ、コイツは！

オレまで巻き込んでサボりたかったのかよ！

「なぁ、これ食い終わったら風俗行かねえか？」

「はぁ？」

バカか、コイツは！

「大丈夫！
二時間や三時間ぐらい戻って来なくても問題ないからwww」


コイツをクビにした方がいいんじゃないかな？


「高橋さんにバレたら、ぶん殴られますよ！」

「んー、そうか。じゃ、オマエだけ戻れ。
オレは少し時間潰してから戻るから」


何しに会社へ来てんだ？



しかも、将来的にはかなりのポストに就くってウワサでは聞いた事あるけど。

大企業とは違って、従業員300人にも満たない中小企業だけどさぁ。

そんな事より、戻ったら沙織に物凄く怒られるのかな…

トンカツ食ってる場合じゃね～よ！