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Roots Of Wrestling 最強

シュート技【クルスフィックス】

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【尚、試合に先立ちまして、今回は特別立会人として両団体の創始者でもある、カイザー大和氏と浅野透氏にお越し願いました!】 

するとバックスクリーンのオーロラビジョンから二人の人物を映し出していた。

カイザー大和と浅野透だ…

共に団体を設立し、プロレス界に多大な貢献をしたこの二人がリングへと向かった。

【大和~】

【浅野~】

かつてのエース同士が特別立会人として久しぶりに公の場に姿を現れた。

一人はプロレス最強を掲げ、世界各国の格闘家と異種格闘技戦を行った我が団体の創始者と、もう一人は斬新なデスマッチでプロレス界に衝撃を与えたカリスマ。


この両者がリングに上がった。

さすがに両者共に老いたとはいえ、日本を代表する名レスラーだ、その鋭い眼光は現役時代と変わらない。

大和コールと浅野コールの中、二人はリング上でこのデスマッチのルールを伝えた。

まず浅野がマイクを持ち、現役時代と変わらず、マイクパフォーマンスで観客を盛り上げた。

【Danger所属、斎川秀樹!WWA所属神宮寺直人!この両者の対決は完全決着のデスマッチとして、ギブアップまたはKOでの勝敗を決する事!】

浅野の発した完全決着ルールで観客は大いに沸いた。

そしてカイザー大和がマイクを持ち、オレと斎川に向かい、激を飛ばした。

【お前ら!この試合で互いの息の根を止める覚悟でやれっ!
見事首をかっ斬ってみやがれっ!やれるのか、おいっ!】

カイザー大和も現役時代と変わらずマイクで観客を煽る。

スタジアム内の歓声は更に大きく、地響きがする程のボルテージだ。

両者はリング上でマイクパフォーマンスをした後、リングをおり、リングサイド最前列に座り試合を見届けるみたいだ。

このアングルを考えたのは誰だ?
Dangerサイドか?それともWWAサイドなのか?

オレは全く知らされてない、全ての試合方式は向こう側に任せてある。

だが、斎川も事前に知らされてなかったのか、かなり驚いた表情をしている。

記者の話によると、Dangerは浅野が引退し、斎川がエースになった途端、浅野との関係を一切絶ったと言っていた。

斎川と浅野は師弟関係だが、浅野が退いた後はDangerとの関わりをするな!と一方的に通告し、Dangerの関係者にも、今後浅野と関わりを持つ者は排除する、と告げたらしい。

斎川にしてみれば、浅野はもはや過去の人間で、OB面して新体制になった団体に口を挟むな!とかつての師匠に絶縁状を叩きつけ、Dangerへの出入り禁止を通告した…

そして会社を私物化して、やりたい放題という有り様だ。

この斎川という男は何を企んでいるのか、オレには全く理解出来ないが、かつての師匠を私利私欲の為に追放してまでDangerを乗っ取ったというゲスなヤローだという事だ。

リングアナウンサーがマイクを持ち、改めてコールした。

【只今よりメインイベント、完全決着デスマッチ時間無制限一本勝負を行います!】

観客の声援より、四方に置かれている松明の炎で背中が熱くてそれどころじゃない。


【青コーナーWWA所属、186㌢108㌔、神宮寺直人~っ!】

オレは微動だにせず、ただ目の前にいる斎川しか見ていない。

【赤コーナーDanger所属、192㌢135㌔、斎川秀樹~っ!】

高々とバットを手に、不適な笑みを見せていやがる…

こんなのがプロレスラーだと?
プロレスラーなら鍛え上げた己の身体で勝負してみろ!

オレは斎川と対峙した時、コイツの力量を見抜いた。

あの厄介なバットが無ければ10分以内で腕の一本をへし折る事など容易い。

リングの上ではオレと斎川、そして試合を裁くレフェリーの3人だけだ…

オレはコーナーでゴングが鳴るのを待つだけだ。

対する斎川はバットを手に素振りをしている。

威嚇のつもりか、フルスイングでブンブンと振り回す。

そしてレフェリーの合図でゴングが鳴った。

沸き上がる歓声、そして暗くなった夜空を松明の炎がリングを明るく灯している。
しかもメラメラと燃え上がり、時折火の粉が飛んで来る。

オレも斎川もコーナーで微動だにせず、相手の出方を伺っている。

いつあのバットを振り回し、襲いかかってくるのか…

オレはグレコローマンスタイルの時と同じようにやや前傾で腰を落とし、ジリジリと斎川に近づく。

斎川はバットを手に、どっからでもかかって来い、とばかりに腕を広げ、大きくアピールしている。

あのバットをかいくぐってどうやってレスリングに持ち込もうか。

互いににらみ合いながら距離を保ち、リングを回るようにして様子を伺う。

ロープが無いせいか、リングが広く感じる。
おまけにコーナーには松明の炎で場外には五寸釘が敷き詰められている。


この状態のまま、何分が過ぎたのだろうか。

「ファイッ!」

レフェリーが組むように促すが、迂闊に飛び込んで行ったらあっという間に有刺鉄線を巻いたバットでフルスイングされ、オレは敗けてしまう…

だが、先に仕掛けてきたのは斎川だ。
全く動かないオレに痺れを切らせたのか、バットを上段に構え、襲いかかってきた!

オレは素早く避け、スタンドでバックを取り、ねじ伏せてグラウンドへ。
左サイドからのしかかって左手で首根っこを押さえ付ける。
反発して斎川が四つんばいの腕を伸ばすと、素早く左足で左腕を刈った。
そのとき左手は頭を押さえ続け、右手を斎川の右脇に差し込んだ。
体重をのし掛けられ、斎川はがくっと頭が落ちマットにのめり込んだ。
ハーフ・ネルソン(片側の羽交い締め)に入った右手と、左手とで斎川の後頭部に体重を掛けて押すと、首がくの字に曲がって耐え切れず両足が浮き、両肩がピンフォールされた状態になった。

【クルスフィックス】別名十字架固めと言い、相手が両手を広げ、十字架のような体勢で抑え込まれるので、この名が付いた。

昭和のプロレスでは、この体勢に持ち込み、スリーカウントを奪うケースが多く、一瞬の隙をついた返し技としてポピュラーに使われていた。

元々レスリングにある技で、ピンフォールを奪う方法だ。

この試合、スリーカウントは無い。
斎川は十字架の如く、上半身を抑えつけられ、下半身は浮いた状態でエビのようになっている。

これがレスリングだ。

斎川は上体をコントロールされ、右手に持っていたバットを離さなかったが、オレはこのクルスフィックスで抑え込んだ状態のまま、斎川がどうやってこの体勢から抜け出す事が出来るのか。

「おい、デスマッチ王。オレは何もしてねぇぞ。ただ抑え込んでるだけだ。悔しかったらこの状態から返してみろよ」

オレは抑え込みながら斎川に言ってみた。

「…んぐっ、クソッ」

斎川の方が上背もあるし、体重も20㌔近く重い。

だが斎川はこの状態から抜け出す事が出来ない。

当然だ、これがレスリングというヤツだ。

「テメー、シュートの本当の怖さを知らないだろう…早くこの体勢から抜け出してみろよ、おい」

このままアームロックを極め、肘を壊す事も出来る。

だがオレは何もせず、ただクルスフィックスで斎川を抑え込んでるだけだ。

コイツは何も出来ずにただ呻いているだけだ。
オレはこうやって斎川がどう脱出するのか見せてもらおう、とこの体勢のままで数分が経過した。
 
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