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新団体設立
初代タッグ王座にしてあげよう
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【1億円争奪戦パンクラチオントーナメント】の発表に他のプロレス団体は冷ややかな対応だった。
ある団体の主力選手は
「いくらグローブを付けてるからといって、ブック無しで顔面を殴り合うなんて出来るワケないだろう」と吐き捨てるようにコメントした。
また他の団体の選手は、
「サラリーマンに例えると、○○商事に勤めて、××商事でアルバイトしてますって公言してるようなものだろ。
一体何考えてこんな事言い出したんだ?」と首を傾げていた。
他にも、
「そんな闘いは総合の選手がやればいいだけの事だろ。
プロレスラーに顔面パンチ有りなんて、選手を潰すつもりか!」
等々厳しい意見が多かった。
中には「面白い、出ようじゃないか」
というフリーのレスラーが名乗り出た。
だが、こう言っては失礼だが、これと言った実績もネームバリューも無く、実力者であることは違いないが、1億円争奪のトーナメントに参加するにはインパクトに欠ける。
結局、名乗りを上げた選手は、フリーランスのレスラー数名と、マイナーな総合格闘技イベントに出場する、ウェルター級の日本人選手だけだった。
「こんなメンツじゃ1億円を賭けて闘う程のトーナメントじゃない」
佐藤さんがそう判断し、1億円争奪戦トーナメントは夢のまた夢という形で消滅した。
マスコミもオレにコメントを求めてきたが、
「やれ、と言われればオレはレスラーだからリングに上がるけど、リングの外の件に関しては何も知らない。
ただ、ウチがそういうプランを打ち出したが、他の団体が協力的じゃなかった、それだけの事でしょう」
とだけコメントした。
リングの外に関しては、オレは一切関知していない。
それは佐藤さんや山田さんのやる事で、オレはリングに上がり試合をするだけだ。
この辺りからTMNは暗雲が立ち込めてきた。
外国人選手の来日キャンセルが相次いだ。
ケガを理由に欠場したい、という事だが、他にも理由はありそうだ。
だがこの時点では、オレは何も知らせれていなかった。
外国人選手が来日出来なくなると、カードが組めない。
次回予定した、都内の中規模のホールでの大会は、諸事情により中止になりました、というファックスをプロレス関係者に送った。
TMNはどうなってしまうんだ?
日本人選手もオレ一人しかいない。
入門してまだ僅かな新人が3名しかいない。
何億も掛けて総合、立ち技、キャッチレスリングという、各階の道場を建てたのはいいが、その為に雇ったコーチ達も暇をもて余している状態だ。
「外国人が来れないってどういう事ですか?しかも全てケガでキャンセルって。
試合じゃそれほどダメージは残っているようには思えないんですが…
他にも何か理由があるんじゃないですか?」
オレは何度か佐藤さんや山田さんに問いただした事があるが、二人とも歯切れの悪い返事しか出て来ない。
(もしかしたら、TMNは相当苦しいのじゃないだろうか)
そんな事が頭をよぎる。
TMNの試合が無いからといって休んでばかりではない。
前回キャッチレスリングで対戦したマクダエルとタッグを組み、WFE初代タッグ王座トーナメントに出場する為、オレはWFEシリーズに参戦した。
参戦というか、元々はオレの所属していたWWAが母体なのだから、古巣に戻ったという感じにしか過ぎない。
WFEのタッグトーナメント戦はオレとマクダエルの他に、財前と真田がタッグを組み、中堅レスラーや外国人同士がタッグを組んで華々しく開催した。
オレも久しぶりの従来のプロレスが出来た。
コスチュームは相変わらず、黒で統一したショートタイツにレスリングシューズ。
マクダエルは、赤と黒のロングタイツに黒のニーパッドにレガースという、キックを多用するスタイルのコスチュームだ。
初戦は中堅コンビの日本人レスラーと闘った。
先発はオレが買って出た。
昔ながらのクラシカルな攻めで、相手をグランドに引きずり込み、トゥホールドやハンマーロック、打撃もエルボースマッシュやドロップキックといった具合で、対するマクダエルは切れ味鋭いキックやラリアット、投げっぱなしジャーマンという、ハードヒットなスタイルで試合を進めた。
最後はマクダエルが場外乱闘を繰り広げている間に、オレはバックドロップで投げ、最後は現在使い手があまりいない、ダブルアームスープレックスからブリッジしてスリーカウントを奪った。
初戦は危なげなく勝利した。
試合後、WFEのフロントと食事をしながら話をしようと言われ、都内の高級中華料理の店に入った。
この店はミシュランでも二ツ星のお墨付きで、滅多に口にしないフカヒレのスープや、黒鮑の酒蒸し、ツバメの巣のスープ等、ズラリと高級食材がテーブルに次々と置かれた。
WFEは儲かってるんだなぁ、それに引きかえ、TMNは…何て事を思っていると、フロントから思いもよらない言葉が出てきた。
「WFEの初代タッグ王座は君たちにしようと思っている」
「…えっ?」
まさか元WWA所属とはいえ、分裂したTMN所属のオレがタッグチャンピオンに?
フロントはオレの唖然とした顔を見てニヤリと笑みを浮かべた…
ある団体の主力選手は
「いくらグローブを付けてるからといって、ブック無しで顔面を殴り合うなんて出来るワケないだろう」と吐き捨てるようにコメントした。
また他の団体の選手は、
「サラリーマンに例えると、○○商事に勤めて、××商事でアルバイトしてますって公言してるようなものだろ。
一体何考えてこんな事言い出したんだ?」と首を傾げていた。
他にも、
「そんな闘いは総合の選手がやればいいだけの事だろ。
プロレスラーに顔面パンチ有りなんて、選手を潰すつもりか!」
等々厳しい意見が多かった。
中には「面白い、出ようじゃないか」
というフリーのレスラーが名乗り出た。
だが、こう言っては失礼だが、これと言った実績もネームバリューも無く、実力者であることは違いないが、1億円争奪のトーナメントに参加するにはインパクトに欠ける。
結局、名乗りを上げた選手は、フリーランスのレスラー数名と、マイナーな総合格闘技イベントに出場する、ウェルター級の日本人選手だけだった。
「こんなメンツじゃ1億円を賭けて闘う程のトーナメントじゃない」
佐藤さんがそう判断し、1億円争奪戦トーナメントは夢のまた夢という形で消滅した。
マスコミもオレにコメントを求めてきたが、
「やれ、と言われればオレはレスラーだからリングに上がるけど、リングの外の件に関しては何も知らない。
ただ、ウチがそういうプランを打ち出したが、他の団体が協力的じゃなかった、それだけの事でしょう」
とだけコメントした。
リングの外に関しては、オレは一切関知していない。
それは佐藤さんや山田さんのやる事で、オレはリングに上がり試合をするだけだ。
この辺りからTMNは暗雲が立ち込めてきた。
外国人選手の来日キャンセルが相次いだ。
ケガを理由に欠場したい、という事だが、他にも理由はありそうだ。
だがこの時点では、オレは何も知らせれていなかった。
外国人選手が来日出来なくなると、カードが組めない。
次回予定した、都内の中規模のホールでの大会は、諸事情により中止になりました、というファックスをプロレス関係者に送った。
TMNはどうなってしまうんだ?
日本人選手もオレ一人しかいない。
入門してまだ僅かな新人が3名しかいない。
何億も掛けて総合、立ち技、キャッチレスリングという、各階の道場を建てたのはいいが、その為に雇ったコーチ達も暇をもて余している状態だ。
「外国人が来れないってどういう事ですか?しかも全てケガでキャンセルって。
試合じゃそれほどダメージは残っているようには思えないんですが…
他にも何か理由があるんじゃないですか?」
オレは何度か佐藤さんや山田さんに問いただした事があるが、二人とも歯切れの悪い返事しか出て来ない。
(もしかしたら、TMNは相当苦しいのじゃないだろうか)
そんな事が頭をよぎる。
TMNの試合が無いからといって休んでばかりではない。
前回キャッチレスリングで対戦したマクダエルとタッグを組み、WFE初代タッグ王座トーナメントに出場する為、オレはWFEシリーズに参戦した。
参戦というか、元々はオレの所属していたWWAが母体なのだから、古巣に戻ったという感じにしか過ぎない。
WFEのタッグトーナメント戦はオレとマクダエルの他に、財前と真田がタッグを組み、中堅レスラーや外国人同士がタッグを組んで華々しく開催した。
オレも久しぶりの従来のプロレスが出来た。
コスチュームは相変わらず、黒で統一したショートタイツにレスリングシューズ。
マクダエルは、赤と黒のロングタイツに黒のニーパッドにレガースという、キックを多用するスタイルのコスチュームだ。
初戦は中堅コンビの日本人レスラーと闘った。
先発はオレが買って出た。
昔ながらのクラシカルな攻めで、相手をグランドに引きずり込み、トゥホールドやハンマーロック、打撃もエルボースマッシュやドロップキックといった具合で、対するマクダエルは切れ味鋭いキックやラリアット、投げっぱなしジャーマンという、ハードヒットなスタイルで試合を進めた。
最後はマクダエルが場外乱闘を繰り広げている間に、オレはバックドロップで投げ、最後は現在使い手があまりいない、ダブルアームスープレックスからブリッジしてスリーカウントを奪った。
初戦は危なげなく勝利した。
試合後、WFEのフロントと食事をしながら話をしようと言われ、都内の高級中華料理の店に入った。
この店はミシュランでも二ツ星のお墨付きで、滅多に口にしないフカヒレのスープや、黒鮑の酒蒸し、ツバメの巣のスープ等、ズラリと高級食材がテーブルに次々と置かれた。
WFEは儲かってるんだなぁ、それに引きかえ、TMNは…何て事を思っていると、フロントから思いもよらない言葉が出てきた。
「WFEの初代タッグ王座は君たちにしようと思っている」
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