天才学級

福竜キノコ

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第1話 新人教師宵宮美月

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     宵宮美月(よいみやみづき)     22歳

    明日からついに高校の教師になります。


「それにしても信じられない。 お姉ちゃんが一流高校の教師になるなんて。」
「私にもそれほどの実力があるってことよ」


妹の朝日(あさひ)は部屋のベッドで腰掛けている。
「っていうか、あんた何してんのよ。」
「別にお姉ちゃんちゃんと教師できるかなって。」
「余計なお世話よ!もう出ていきなさい!」

朝日は部屋から出ていった。一人残った美月は夜空を見上げた。
「楽しみだなぁ・・・」

   4月5日(火)     6:30

家族の思い思いの声援を受けて家を出た。
(今日から先生、今日から先生)
頭の中は楽しみと不安があった。けれど、
楽しみのほうが大きかった。

曲がり角を曲がった。そのとき、
「あんた、今日から8組なんでしょ。」
「あんた、見るからにクズっぽいしね。」

どうやら一人の女子生徒が二人の女子生徒にいじめられているようだ。

「とにかく、あんたみたいなヤツがいると学校の評価が下がるの。」
「早く退学しなよー。」

いじめた二人はどこかへいってしまった。
美月はいじめられた生徒に駆け寄った。

「あなた大丈夫?」
「う、うん。」
「生徒手帳・・・これ、あんたの?」
「あっ・・・」

美月は落ちていた生徒手帳を開いた。
「七瀬・・・美秋さん?」
「あ・・・はい。」
美月は次の単語に目がかかった。
「展再学園高校・・・3年8組?」


実は美月はこの単語に見覚えがあった。

3日前
彼女宛てに一通の手紙が届いた。
内容はこうだ。

宵宮美月様

貴方に展再学園高校3年8組の担任として

本校に赴任してもらいたいと思います。

詳しい話は始業式で

展再学園高校             理事長
           
                            神童      才能


後日、朝日に頼んでインターネットを使い
調べたところ、展再学園高校は国内一といっても過言でないほどエリートが集う高校であることがわかった。噂では
「この学校を卒業できれば、人生薔薇色らしい。」

しかし、入学できるのは難しく、いろいろな面でエリートな生徒しか受験を許可されず、さらに、その中から上位250人しか入学を許可されない。
倍率なんて多い年で200倍を超えることもある。

しかし、闇の噂が一つあった。

それは、3年8組という呪われたクラスがあるということだった。

通常クラスは7しかないのだが、3年だけ8あり、そのクラスに属している者はとんでもなくヤバいという噂だった。

見間違いでなければ、目の前にいるひ弱そうな生徒の所属クラスは3年8組。だが彼女からはヤバいというものは一切感じられない。それ以前に違和感を感じていた。
同じ制服の生徒にいじめられていたのだ。
しかも、一切抵抗していなかった。

「あのー」
「あっ!」
七瀬美秋(ななせみあき)は腕時計に目を向けた。
「遅刻しちゃう!失礼します!」
七瀬は走っていってしまった。
「何だったんだろう。」
美月は嫌な感じがした。そのとき、大変なことに気がついた。
「私も遅刻だ!」
美月も走り出した。


        7:57
「間に合ったーーっ」
美月は壮大な校舎に目を向けた。
「ここが展再学園高校・・・。」
まさに、広い屋敷のようだった。
もはや、学校ではないと感じてしまった。

「貴方が、宵宮美月さんですね。」
声を掛けられた。振り向くとそこには、
きっちりとしたスーツを着た、背の高い男性がいた。
男性は丁寧な言葉遣いで挨拶をした。
「私がこの学園の理事長、神童才能(しんどうさいのう)です。」
「パンフレットで見たとおりの顔だ。」
「手紙・・読んで頂けたようで・・・」
「ええ、理事長・・3年8組って・・・」
「ここから先の話は私の部屋でしましょう。ご案内します。」

キーン  コーン  カーン  コーン
少し胸騒ぎがした。
そのとき、ちょうど登校完了のチャイムが鳴った。

    8:10
学校の中はとても複雑だった。
理事長室まで数分かかった。
「どうぞ・・・今、お茶を用意します。」
ソファーに座らされたが全くをもって落ち着かない。
理事長が紅茶をもってきた。

「朝は紅茶を飲むのが習慣でして。」
「それで理事長、3年8組ってどんなクラスですか?」
理事長は美月に背を向け、窓のほうを向いた。

「宵宮先生・・・貴方は私の教育理論はまだご存じないようですね。」
「教育・・・理論?」
「私の教育理論は・・・優秀な生徒をさらに優秀にしていくことです。」
「優秀な生徒を?」
「まあ、簡単にいいますと・・・8組は
ただの燃え尽きたカスのようなものですよ。」
「・・・・・ひどい。」
美月は生徒に対しカスといった理事長に
対して動揺を隠しきれなかった。

「そこで、貴方には担任として8組をクズのままにしてほしい」
「・・・・・なぜですか。」
「少しのクズを作ることで残った生徒たちはああなりたくないと思い、努力する。
その結果エリートな生まれるのです。」
返せる言葉が一つもなかった。

「さて、そろそろ始業式ですね。さあ、
行きましょうか。」
「・・・・・」
美月は何も言わずに立ち上がった。


     8:55
集会場はとても広かった。
2,3年生14クラスはしっかり列を作って待っていたが、突然視線は後ろに向けられた。

「見ろ!8組やっと来たぞ!」
「今年もクズばっかだね。」
「早く退学しろー!」
全学級からヤジが飛ぶ。

「クソ!早く殴りてぇ!」
「落ち着け!殴ったら即退学だぞ!」

8組もようやく列を整える。しかし、ほとんどの生徒が下を向いている。

(どれほど最悪な一年になるのだろう)

「皆さん、決して8組のようにはならないように・・・」
校長の悪意ある挨拶、それに笑う生徒。
美月は腹が立っていた。

「続いて、新任教師紹介」

「どーせ、今年も変なヤツなんだろ!」
「よせ、杉本!いうな!」
どうやら8組の生徒には希望がないようだ。

そんななか美月に番がまわってきた。

「続きまして、3年8組新担任の宵・・!?」

美月は紹介の生徒のマイクを奪うと
「私が新担任の宵宮美月です!!」
勝手にスピーチを読み始めた。
「皆は8組をクズとかいっているでしょう?」
「当たり前だろう。」
「人間のクズのくせに。」
いろいろと声があがってくる。

「この学園の仕組みはよく学んできたつもりです。そしたら、8組も8組なりに頑張っていることが分かりました。」
「な、何が言いたいのよ!」

「あなたたちに8組の力を思い知らせる!」

「おい!アイツを引きずり下ろせ!
止めさせるんだ!」
教師たちが止めさせようとする。
そのとき、
「続けてください。」
 理事長が言った。

「そして、8組を8組ではなくする。」
「どういうことだよ!」

「8組は卒業するときにはあなたたちにすべてを認めてもらっている状態にするという意味です!」
会場じゅうがどよめいた。こんなこという人は初めてだった。

「8組は落ちこぼれなんかじゃない。みんながみんな、同じ希望を抱いている。それを一年で証明することを
今、ここに宣言します!!」


スピーチを終えて、美月は自分の席についた。
集会場はしーんと静まりかえっていた。


こうして、8組の革命は始まった。

第2話に続く

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