フリー声劇台本〜1万文字以内短編〜

摩訶子

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1万文字以内短編

らぶりぃしゅがぁぱらだいす♡(約5分 不問1女1)

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ジャンル【コメディ】

配役 2名
小説家:男女不問
妖精:女性(男性も可)



○廃病院

小説家:「ここが噂の廃病院か。入る前から凄い雰囲気だな。これは良い取材ができそうだ」

  入る

小説家:「わっ! な、何か上から小さいものが落ちてきた! 何だこれ、虫?」
妖精:「あいたたたた…ぴえんなの。ここはどこー? あぅ~、また迷子さんになっちゃったの~」
小説家:「………………は?」
妖精:「……ん~? あなたはだぁれ?」
小説家:「ぎゃあああああああああ!!! 虫が喋ったああ!!」
妖精:「ぴえっ!? 虫さんじゃないの~! ひどいの~」
小説家:「さすが廃病院……こんな怪現象も起きるのか。これはわざわざ取材に来て正解だったな。あぁ、創作意欲が高まってきた! もっと恐ろしい、禍々(まがまが)しいことが起きてもいいんだよ!?」
妖精:「ん~? あなたは人間ちゃんなの? む~、さっきから言ってることが全然可愛くないのぉ」
小説家:「は? 可愛くない?」
妖精:「わたしはお菓子の妖精・しゅがぁちゃんなの☆ 可愛いものがだぁいすきなの♡」
小説家:「え……いやいやいや、だめだ、それはだめだろ!! 私は恐ろしい廃病院の取材に来たんだ!! 可愛いものがだぁいすきなお菓子の妖精しゅがぁちゃんなんて…言語道断だああ!!」
妖精:「わぁ、全部覚えてくれたー! 嬉しいの☆」
小説家:「雰囲気をぶち壊さないでよぉ!」
妖精:「あのね、しゅがぁちゃんはドジっ子さんだから、しょっちゅう迷子になっちゃうの。1回遠くに来ちゃったらね、当分はおうちに帰れないものだと思わなきゃいけないの」
小説家:「はぁ??」
妖精:「だから、これからしばらくは、ここをしゅがぁちゃんのおうち探しの拠点にするの」
小説家:「へぇ??」
妖精:「このお城のお名前は……『らぶりぃしゅがぁぱらだいす』! なの♡」
小説家:「だあああああああああ」
妖精:「それで、人間ちゃんはこのらぶりぃしゅがぁぱらだいすに何の用なの?」
小説家:「とんでもない名前を付けるな!! …私は小説家で、普段は女性向けのラブロマンス専門なんだけれど、今回初めてホラー小説を書くことになり、舞台が病院なこともあって廃病院を取材に来たんだよ」
妖精:「へぇ~、なんだかあんまり可愛くないねぇ」
小説家:「………。そういうことだから、とにかく取材の邪魔をしないで、大人しくしていてよ」
妖精:「はぁい♡ るんるんたったー♪」
小説家:「踊らないでもらえるかなぁ!?」

  × × ×

小説家:「あ~…まったく。せっかくの雰囲気がぶち壊しだ。…アレは視界に入れないようにして、取材に集中しよう」
小説家:「ふむ。見れば見るほど素晴らしい景観だな。まず最初に目に入るのは、あの巨大なクモの巣。あれは例えるなら、そうだな……」
妖精:「キラキラのあめ細工なの♡」
小説家:「あああああああ!!」
妖精:「おっきな声ださないでなの~」
小説家:「あっちで大人しくしてなさい!!」
妖精:「はぁい」
小説家:「まったく油断も隙もない! …気を取り直して! ……うん。主役はやっぱりあのおどろおどろしいベッドだな。頭の方から見ていくと……まずはこのボロボロの枕。これも最初は頭を乗せたら心地よく沈むくらいには弾力があったんだろうな。どれだけの時が経ったのか、今ではもうこんなに薄くて硬い板のようになって、これではまるで……」
妖精:「みんなだいすき! あまぁい板チョコさんなの♡」
小説家:「ああああああああああ」

  × × ×

小説家:「……気を取り直して! えぇと、枕の次は、この変色しきったズタズタのシーツ。これもきっと、かつては綺麗にアイロンがかけられていて、この大きなベッドをスッポリと覆っていたのだろうね。今ではあっちもこっちもボロボロで、下のじっとりと湿った本体が見えてしまっている。この様は例えるなら……」
妖精:「おっきなケーキにほどよくかけられた生クリームの間から、しっとりスポンジが見え隠れ♡」
小説家:「お前のそのスイーツ例え能力は何なんだよぉ!!!」
妖精:「この世界はね、可愛いもので満ち溢れているの。どんなものだって、可愛い目で見れば可愛くなるの!」
小説家:「………」
妖精:「ここはらぶりぃしゅがぁぱらだいす。天井にはキラキラのあめ細工。おっきなケーキを囲む、可愛い妖精さんと、こちらも可愛い人間ちゃん♡」
小説家:「……いけない……封印していたラブロマンス作家の血が、可愛い比喩表現をロマンチックなものだと捉えようとしている………このままでは、この妖精の言葉を、素直に可愛いと受け取ってしまう……」
妖精:「あ! スイーツパーティの会場にお客さんがやって来たの♡」
小説家:「え? ……!!! あれは、この廃病院に出ると噂される、ドクターとナースの霊!! 私にも見えた!! ホラー小説の取材を…!!」
妖精:「二人は噂の恋人たちなの」
小説家:「………え?」
妖精:「『可愛い』でいっぱいの世界が、ラブロマンスを呼んだの♡ ここからは、人間ちゃんの専門分野だね?」
小説家:「………………」


〇後日・編集部

小説家:「はい。自分でも何がどうなってこうなったのか、よくわかりません。私は確かに、『出る』と噂の廃病院に取材に行って、ホラー感たっぷりの景色を拝み、遂には霊を見ることさえも出来たんです。……はい。その結果書き上がったのがこれです。『お菓子の城の甘い恋人たち』。………ふざけてないんです……本当なんです……」


END
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