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7-7・喧嘩を売られたがどういうわけか……
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「星冠決闘」まであと4日。
ローウェルとエミールは魔法生物学の講義に姿を見せなかった。
もちろん、攻略対象である隣国フィリナオのエルフ王子「セリオン・アストリッド」や、アーケイン・インスティテュート魔法研究の直系「ロイ・フォン・シュタイン」もいない。
どうやら、ローウェルの話術がうまくいったらしい。
そのせいで、ローウェルとエミールの代わりに、俺の両脇にはアレクサンダーとダミアンが座っている。
正直ひとりでも良い気がするが、「星冠決闘」まで何が起こるかわからない。
だからこそ、彼らは俺と一緒に行動しているのだ。
ありがたいような、落ち着かないような……。
講義を受けながらも、ローウェルとエミールのことが気になって仕方がない。
なにせ彼らが向かったのは、魔法生物や魔法植物がひしめく森だ。
エルフ族のセリオンがいるので少しは安心できるし、ローウェルの執事兼護衛である黒ヒョウ獣人のケイルも同行している。
だから大丈夫だとは思う。
しいて言えば、一番不安なのはロイだ。
ロイルートをやった時にわかったのは、彼は戦闘にまったく向いていないということ。
ただし、研究のための魔法の腕は確かだ。
魔術研究の直系ゆえ、学問や実験に関しては誰よりも優れている。
そういえばロイルートでは、ある程度好感度が上がった段階で実験体にされたことがあったっけ……。
「うっ……寒気が……」
「大丈夫であるか、ルシェル殿?」
「大丈夫だ……嫌なことを思い出しただけだ……」
「そっか……なら、いいが……」
「そこ!!喋るではない!!」
「てぇ!?」
「!?いた……」
チョークが2本、俺とダミアンに飛んできた。
身をかがめて避けると、後ろのクラスメイトに命中。
振り向けば、すごい嫌そうな顔をされた。
「すまない……」
「申し訳ない……」
とりあえず謝罪し、なんとか講義をやり過ごす。
授業が終わると、廊下にはアレクサンダーの執事セバスチャンが、いつものように待っていた。
「お疲れ様でございます、アレクサンダー様。夕食の用意が整っております」
「ありがとう、セバスチャン」
「ダミアン様とルシェル様の分もご用意しております」
にこやかに笑うセバスチャン。
だがその笑みは、どこか怒りを含んでいるように見えた。
無理もない。
学園生活が始まってすぐに騒動を起こし、しかも一国の王子同士が絡んだことで政治問題にすら発展しかねなかったのだから。
態度には出さずとも、雰囲気から怒りを感じるのは俺だけではないだろう。
いや、獣人の俺だからこそ敏感に察しているのかもしれない。
アレクサンダーは気にしていない素振りだし、ダミアンは多分気づいていない。
セバスチャンも苦労が絶えないだろう、としみじみ思った。
「ルシェル、行くぞ」
「あ、はい……」
考え事をしている間に、俺はアレクサンダーの部屋に招かれていた。
本来ならカフェテリアで食事をするのだが、マーリン校長のはからいで特別に部屋での食事が許されている。
「さて、今回の挑戦相手は――生徒会副会長のセドリック・アーシュボーン、それに役員のジュリアン・モンクレール、トリスタン・ホイットロック、オーレリアン・ブラックソーンだったな、セバスチャン」
「はい、アレクサンダー様」
「つまり、挑戦相手は4人ということですか?」
「はい、ルシェル様。非常に脅威的な布陣かと存じます」
セバスチャンの言葉に、俺たち三人は絶句した。
セバスチャンは無言で俺たちのティーカップに紅茶を注ぎ、その沈黙を埋める。
やがてアレクサンダーが口を開いた。
「二人とも、生徒会について詳しくないだろう。一番手強いのは副会長のセドリック様だ。何せ“虚空の旋風”の異名を持ち、風魔法に特化した使い手だからな。彼に勝てるかどうかが最大の問題になる……」
「勝たねば死あるのみ、ということですか」
「それは……」
「ルシェル殿の言う通りだ。ルシアン様の婚約者がセドリック様で、幼少期からの付き合い……怒るのも当然だろう」
「……そうだな」
再び沈黙が訪れる。
よりによって、ダミアンルート中盤のフラグを踏んでしまったらしい。
もう後戻りはできない。
この時点で相手はセドリック様だけだったが、今は他の役員も加わっている。
状況はより困難だ。
俺たちだけでは解決できない。ならば――。
「アレクサンダー様、ダミアン様。実は魔法と剣術の両方を鍛えてくれそうな人物が一人います」
「それは誠か?」
「はい。庭師のヴィクターに助けを求めるのです」
「庭師のヴィクター?」
「庭師??」
二人が首をかしげるのも無理はない。
だが俺は説明した。
庭師のヴィクターは、かつて“勇者”だったのだと。
これは俺たちに残された切り札。
あとで説明を求められたら、その時に詳しく話せばいい。
その夜、俺は庭師のヴィクターについて語った。
ローウェルとエミールは魔法生物学の講義に姿を見せなかった。
もちろん、攻略対象である隣国フィリナオのエルフ王子「セリオン・アストリッド」や、アーケイン・インスティテュート魔法研究の直系「ロイ・フォン・シュタイン」もいない。
どうやら、ローウェルの話術がうまくいったらしい。
そのせいで、ローウェルとエミールの代わりに、俺の両脇にはアレクサンダーとダミアンが座っている。
正直ひとりでも良い気がするが、「星冠決闘」まで何が起こるかわからない。
だからこそ、彼らは俺と一緒に行動しているのだ。
ありがたいような、落ち着かないような……。
講義を受けながらも、ローウェルとエミールのことが気になって仕方がない。
なにせ彼らが向かったのは、魔法生物や魔法植物がひしめく森だ。
エルフ族のセリオンがいるので少しは安心できるし、ローウェルの執事兼護衛である黒ヒョウ獣人のケイルも同行している。
だから大丈夫だとは思う。
しいて言えば、一番不安なのはロイだ。
ロイルートをやった時にわかったのは、彼は戦闘にまったく向いていないということ。
ただし、研究のための魔法の腕は確かだ。
魔術研究の直系ゆえ、学問や実験に関しては誰よりも優れている。
そういえばロイルートでは、ある程度好感度が上がった段階で実験体にされたことがあったっけ……。
「うっ……寒気が……」
「大丈夫であるか、ルシェル殿?」
「大丈夫だ……嫌なことを思い出しただけだ……」
「そっか……なら、いいが……」
「そこ!!喋るではない!!」
「てぇ!?」
「!?いた……」
チョークが2本、俺とダミアンに飛んできた。
身をかがめて避けると、後ろのクラスメイトに命中。
振り向けば、すごい嫌そうな顔をされた。
「すまない……」
「申し訳ない……」
とりあえず謝罪し、なんとか講義をやり過ごす。
授業が終わると、廊下にはアレクサンダーの執事セバスチャンが、いつものように待っていた。
「お疲れ様でございます、アレクサンダー様。夕食の用意が整っております」
「ありがとう、セバスチャン」
「ダミアン様とルシェル様の分もご用意しております」
にこやかに笑うセバスチャン。
だがその笑みは、どこか怒りを含んでいるように見えた。
無理もない。
学園生活が始まってすぐに騒動を起こし、しかも一国の王子同士が絡んだことで政治問題にすら発展しかねなかったのだから。
態度には出さずとも、雰囲気から怒りを感じるのは俺だけではないだろう。
いや、獣人の俺だからこそ敏感に察しているのかもしれない。
アレクサンダーは気にしていない素振りだし、ダミアンは多分気づいていない。
セバスチャンも苦労が絶えないだろう、としみじみ思った。
「ルシェル、行くぞ」
「あ、はい……」
考え事をしている間に、俺はアレクサンダーの部屋に招かれていた。
本来ならカフェテリアで食事をするのだが、マーリン校長のはからいで特別に部屋での食事が許されている。
「さて、今回の挑戦相手は――生徒会副会長のセドリック・アーシュボーン、それに役員のジュリアン・モンクレール、トリスタン・ホイットロック、オーレリアン・ブラックソーンだったな、セバスチャン」
「はい、アレクサンダー様」
「つまり、挑戦相手は4人ということですか?」
「はい、ルシェル様。非常に脅威的な布陣かと存じます」
セバスチャンの言葉に、俺たち三人は絶句した。
セバスチャンは無言で俺たちのティーカップに紅茶を注ぎ、その沈黙を埋める。
やがてアレクサンダーが口を開いた。
「二人とも、生徒会について詳しくないだろう。一番手強いのは副会長のセドリック様だ。何せ“虚空の旋風”の異名を持ち、風魔法に特化した使い手だからな。彼に勝てるかどうかが最大の問題になる……」
「勝たねば死あるのみ、ということですか」
「それは……」
「ルシェル殿の言う通りだ。ルシアン様の婚約者がセドリック様で、幼少期からの付き合い……怒るのも当然だろう」
「……そうだな」
再び沈黙が訪れる。
よりによって、ダミアンルート中盤のフラグを踏んでしまったらしい。
もう後戻りはできない。
この時点で相手はセドリック様だけだったが、今は他の役員も加わっている。
状況はより困難だ。
俺たちだけでは解決できない。ならば――。
「アレクサンダー様、ダミアン様。実は魔法と剣術の両方を鍛えてくれそうな人物が一人います」
「それは誠か?」
「はい。庭師のヴィクターに助けを求めるのです」
「庭師のヴィクター?」
「庭師??」
二人が首をかしげるのも無理はない。
だが俺は説明した。
庭師のヴィクターは、かつて“勇者”だったのだと。
これは俺たちに残された切り札。
あとで説明を求められたら、その時に詳しく話せばいい。
その夜、俺は庭師のヴィクターについて語った。
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