12 / 24
7-6・喧嘩を売られたがどういうわけか……
しおりを挟む
予期せぬ出来事に巻き込まれた俺たちは、「星冠決闘」を挑むことになった。
学院に入学して、まだ1か月も経たないというのに、すでに2つの事件が起きている。
ひとつはジョセフの件、そして今、生徒会からの「星冠決闘」だ。
もしこれがゲームの世界なら「順当にストーリーが進んでいる」と思えただろう。
だが、展開があまりに早すぎる。
「星冠決闘」が起きるのは、たしかダミアンルートの中盤だったはずだ。
「どういうことだ?」
「本当なのか?」
「なぜ、こんなことに……」
「それは私が知りたいですよ」
俺、アレクサンダー、ダミアン、エミールの4人は同時にため息をついた。
生徒会に「星冠決闘」を挑まれたせいで、周囲の生徒たちからは冷ややかな視線を浴びている。
何しろ、生徒会長「ルシアン・エヴァハート」はイグラシオン国の王子。
つまり俺たちは、よりによって一国の王子に喧嘩を売ってしまったのだ。
頭が痛くならないはずがない。
「ルシアン様の容体はどうだ?ケイル」
「保健室に運ばれてから、まだ目を覚まされていないそうです、ローウェル様」
「……そうか」
黒豹の獣人であり、ローウェルの執事でもある「ケイル」の言葉に、ローウェルは苦々しい表情を浮かべた。
「あの……ジョセフも目を覚まさないらしいな」
その一言に、皆の表情が険しくなる。
実を言えば、俺は2人を目覚めさせる方法を知っている。
それは隣国フィリナオのエルフの王子「セリオン・アストリッド」と、アーケイン・インスティテュート魔法研究の直系、「ロイ・フォン・シュタイン」に薬を作ってもらうことだ。
セリオンの協力が必要なのは、「グロウベール」という薬草を手に入れるため。
そして、その薬草を薬に精製できるのはロイだけだからである。
ロイは恐らく問題なく協力してくれるだろう。だが、セリオンが厄介だ。
彼は攻略キャラのひとりで、知識豊富な“インテリ”だが、かなりの頭でっかち。
説得には骨が折れる。
このゲームは攻略対象たちには好感度ハートというものがあって最高で10まで上げる。
本当だったら2人の好感度がハート2.5以上あれば素直に協力してくれる。
だが現状はおそらくハートゼロ。
さて、どうしたものか。
「ルシェル、どうしたの?」
「ああ……実は――」
俺は少し迷った末に、眠る二人を目覚めさせる方法を話した。
結果――
「それが本当なら、それに賭けるべきだな」
「信じるのですか、アレクサンダー様?」
「その方が可能性はあるだろう、ダミアン」
「なら、二手に分かれた方がいいな」
「ローウェル様……まさかとは思いますが……」
ケイルは嫌な予感をにじませつつ、しかしどこか期待に満ちた目をローウェルに向けていた。
「生徒会長とジョセフを助ける組と、星冠決闘に挑む組に分かれる。――いいか、みんなよく聞け」
そうしてローウェルの作戦を聞いた俺たちは、すぐに動き出すことになった。
「眠りの王子様目覚め作戦」は、ローウェル・エミール・ケイルが担当し、セリオンとロイを説得して薬を作ってもらう。
そして、俺・アレクサンダー・ダミアンは星冠決闘に挑む。
俺はローウェルたちの成功に賭けるしかなかった。
学院に入学して、まだ1か月も経たないというのに、すでに2つの事件が起きている。
ひとつはジョセフの件、そして今、生徒会からの「星冠決闘」だ。
もしこれがゲームの世界なら「順当にストーリーが進んでいる」と思えただろう。
だが、展開があまりに早すぎる。
「星冠決闘」が起きるのは、たしかダミアンルートの中盤だったはずだ。
「どういうことだ?」
「本当なのか?」
「なぜ、こんなことに……」
「それは私が知りたいですよ」
俺、アレクサンダー、ダミアン、エミールの4人は同時にため息をついた。
生徒会に「星冠決闘」を挑まれたせいで、周囲の生徒たちからは冷ややかな視線を浴びている。
何しろ、生徒会長「ルシアン・エヴァハート」はイグラシオン国の王子。
つまり俺たちは、よりによって一国の王子に喧嘩を売ってしまったのだ。
頭が痛くならないはずがない。
「ルシアン様の容体はどうだ?ケイル」
「保健室に運ばれてから、まだ目を覚まされていないそうです、ローウェル様」
「……そうか」
黒豹の獣人であり、ローウェルの執事でもある「ケイル」の言葉に、ローウェルは苦々しい表情を浮かべた。
「あの……ジョセフも目を覚まさないらしいな」
その一言に、皆の表情が険しくなる。
実を言えば、俺は2人を目覚めさせる方法を知っている。
それは隣国フィリナオのエルフの王子「セリオン・アストリッド」と、アーケイン・インスティテュート魔法研究の直系、「ロイ・フォン・シュタイン」に薬を作ってもらうことだ。
セリオンの協力が必要なのは、「グロウベール」という薬草を手に入れるため。
そして、その薬草を薬に精製できるのはロイだけだからである。
ロイは恐らく問題なく協力してくれるだろう。だが、セリオンが厄介だ。
彼は攻略キャラのひとりで、知識豊富な“インテリ”だが、かなりの頭でっかち。
説得には骨が折れる。
このゲームは攻略対象たちには好感度ハートというものがあって最高で10まで上げる。
本当だったら2人の好感度がハート2.5以上あれば素直に協力してくれる。
だが現状はおそらくハートゼロ。
さて、どうしたものか。
「ルシェル、どうしたの?」
「ああ……実は――」
俺は少し迷った末に、眠る二人を目覚めさせる方法を話した。
結果――
「それが本当なら、それに賭けるべきだな」
「信じるのですか、アレクサンダー様?」
「その方が可能性はあるだろう、ダミアン」
「なら、二手に分かれた方がいいな」
「ローウェル様……まさかとは思いますが……」
ケイルは嫌な予感をにじませつつ、しかしどこか期待に満ちた目をローウェルに向けていた。
「生徒会長とジョセフを助ける組と、星冠決闘に挑む組に分かれる。――いいか、みんなよく聞け」
そうしてローウェルの作戦を聞いた俺たちは、すぐに動き出すことになった。
「眠りの王子様目覚め作戦」は、ローウェル・エミール・ケイルが担当し、セリオンとロイを説得して薬を作ってもらう。
そして、俺・アレクサンダー・ダミアンは星冠決闘に挑む。
俺はローウェルたちの成功に賭けるしかなかった。
22
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。
はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。
2023.04.03
閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m
お待たせしています。
お待ちくださると幸いです。
2023.04.15
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
更新頻度が遅く、申し訳ないです。
今月中には完結できたらと思っています。
2023.04.17
完結しました。
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます!
すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。
【完結】その少年は硝子の魔術士
鏑木 うりこ
BL
神の家でステンドグラスを作っていた俺は地上に落とされた。俺の出来る事は硝子細工だけなのに。
硝子じゃお腹も膨れない!硝子じゃ魔物は倒せない!どうする、俺?!
設定はふんわりしております。
少し痛々しい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる