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8-2・実家に帰省する馬車の中の子供の頃の思い出
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夜遅く、父に呼ばれた。
嫌な予感しかしなかった。
父の執務室へ向かうと、すでに弟のルファンが待っていた。
「遅いですよ、兄上」
鼻で笑うような、あざける声。
その笑いを無視して、とりあえずルファンの隣に立つ。
「お待たせいたしました、父上。この夜更けに、どうなさいましたか?」
「うむ」
父上は立派なデスクに腰を下ろし、目を閉じた。
わずかな沈黙。
それだけで、空気が氷のように張り詰める。
やがて、父が口を開いた。
「早いとは思っているが……シルバーバイト家の次期当主を、ルシェルに任せる」
その言葉に、思わず息をのんだ。
屋敷ではずっと、次期当主は弟のルファンだと噂されていた。
だからこそ、この突然の発表に心底驚いた。
もちろん、隣のルファンも納得がいかない様子で声を荒げた。
「どういうことですか、父上!?なぜ兄上なのですか!?」
「どうして、か……それはお前が一番わかっているはずだ」
父上は氷のように冷たい目をルファンに向ける。
その視線だけで、俺の体は固まった。
それなのに、ルファンは怯むことなく言い返す。
「納得できません!私は兄上よりも頭も武術の腕も上です。なぜ兄上なのですか!?」
「ルファン、確かにお前の言う通りだ。頭も腕も兄より勝っている。だがな……お前はその能力に慢心して、自ら動こうとしない。――私が言いたいこと、わかるな?」
その言葉で、ようやく父上の態度の理由がわかった気がした。
これまで俺に興味がなさそうにしていたのは、見捨てていたわけじゃなかった。
父上は元は民の出であり、そこから貴族の地位を掴み取った獣人だ。
考えるより先に行動する人――いや、獣だ。
だからこそ、この15年間、俺の行動を見ていたのだろう。
興味がないふりをして、ただ静かに見守っていたのだ。
隣を見ると、ルファンは顔を青ざめさせ、うつむいていた。
「父上……でしたら、今からでも遅くはありません。ルファンにも機会を与えてあげてください。私は、ルファンのほうがこの領地を守るのにふさわしいと思っています。どうか……お考えを」
「兄上……?」
俺の言葉が意外だったのか、ルファンが目を見開いた。
父上は俺の顔をじっと見つめ、一息ついてから口を開く。
「いいだろう。ルファン、ルシェルの言葉を絶対に守りなさい。それができなければ、この当主は長男であるルシェルだ……いいな?」
「……わかりました、父上」
さっきまでの尊大な態度は消え、ルファンはしおらしく答えた。
そして、この日を境に、弟ルファンの態度がまるで別人のように変わっていったのだった。
嫌な予感しかしなかった。
父の執務室へ向かうと、すでに弟のルファンが待っていた。
「遅いですよ、兄上」
鼻で笑うような、あざける声。
その笑いを無視して、とりあえずルファンの隣に立つ。
「お待たせいたしました、父上。この夜更けに、どうなさいましたか?」
「うむ」
父上は立派なデスクに腰を下ろし、目を閉じた。
わずかな沈黙。
それだけで、空気が氷のように張り詰める。
やがて、父が口を開いた。
「早いとは思っているが……シルバーバイト家の次期当主を、ルシェルに任せる」
その言葉に、思わず息をのんだ。
屋敷ではずっと、次期当主は弟のルファンだと噂されていた。
だからこそ、この突然の発表に心底驚いた。
もちろん、隣のルファンも納得がいかない様子で声を荒げた。
「どういうことですか、父上!?なぜ兄上なのですか!?」
「どうして、か……それはお前が一番わかっているはずだ」
父上は氷のように冷たい目をルファンに向ける。
その視線だけで、俺の体は固まった。
それなのに、ルファンは怯むことなく言い返す。
「納得できません!私は兄上よりも頭も武術の腕も上です。なぜ兄上なのですか!?」
「ルファン、確かにお前の言う通りだ。頭も腕も兄より勝っている。だがな……お前はその能力に慢心して、自ら動こうとしない。――私が言いたいこと、わかるな?」
その言葉で、ようやく父上の態度の理由がわかった気がした。
これまで俺に興味がなさそうにしていたのは、見捨てていたわけじゃなかった。
父上は元は民の出であり、そこから貴族の地位を掴み取った獣人だ。
考えるより先に行動する人――いや、獣だ。
だからこそ、この15年間、俺の行動を見ていたのだろう。
興味がないふりをして、ただ静かに見守っていたのだ。
隣を見ると、ルファンは顔を青ざめさせ、うつむいていた。
「父上……でしたら、今からでも遅くはありません。ルファンにも機会を与えてあげてください。私は、ルファンのほうがこの領地を守るのにふさわしいと思っています。どうか……お考えを」
「兄上……?」
俺の言葉が意外だったのか、ルファンが目を見開いた。
父上は俺の顔をじっと見つめ、一息ついてから口を開く。
「いいだろう。ルファン、ルシェルの言葉を絶対に守りなさい。それができなければ、この当主は長男であるルシェルだ……いいな?」
「……わかりました、父上」
さっきまでの尊大な態度は消え、ルファンはしおらしく答えた。
そして、この日を境に、弟ルファンの態度がまるで別人のように変わっていったのだった。
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