闇堕ちモブは主人公クラスに上がるとはどういうこと?!

海うみ海

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8-5・実家に帰省する馬車の中の子供の頃の思い出

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夜の中庭のガゼボの中で、俺とルファンはぼーっと夜空を眺めながら、静かに淹れたての紅茶を飲んでいた。
俺たちは母の死が間近に迫っていることを感じていた。
母はまだ28歳。
まだ死ぬには早すぎる。
それを受け止めるというのは、こんなにも空しいものなのか。
隣にいるルファンでさえ、どこか心ここにあらずだった。
俺たちの後ろに控えているラグナルとラルクも複雑そうな表情を浮かべている。
ラグナルとラルクは元々孤児で、母が助けたことで今に至る。
母と父は路地裏でホームレスを見つけると、自分の屋敷で執事、メイド、民間騎士として雇ったり、仕事を探してあげたりしていた。
今もそうしている。
厳しい人ではあるが、実は民にはものすごく優しい。
だから母は、そういうところに父を惹かれたのだろう。

――母の死が、間近に迫っている。
これをどうにかしたいと、俺は強く願った。
夜空を眺めながら、俺は心の中で祈る。

『どうか、母を助けるすべをください。俺は自分の命を引き換えにしてでも母を助けたい。俺が死んでも誰も困りません。どうか、お助けください』

そう――
願ったばかりに、突然“それ”がやって来てしまった。
光る星の中から、俺たちに向かって白い光が降ってきた。
一瞬、火球かと思った。
ただ、この時は火球の方がよかったと、後で思うことになる。
まばゆい白と金色の光に包まれた“人”が、俺たちの前に立っていた。
男なのか女なのかわからないほどの、美しい容姿をした存在だった。
その瞬間、俺もルファンも、ラグナルとラルクも臨戦態勢に入る。

「何者だ?」

ルファンがいつもより低い声で問いただす。
なのに、その者はニコッと笑い、まっすぐ俺の方へ歩み寄ってきた。

『こちらに』

頭の中に直接、声が響いた。
驚いた俺の手を、その者はいつの間にか取っていた。

その瞬間――

気づけば、母の寝室にいた。
母のそばに残っていた父も、突然の出来事に驚いていた。

『わたしは天の光の精霊、セラフィム。あなたの願いを叶えに来ました』

喋っていないのに、頭の中に響く声。
俺も父も驚きのあまり言葉を失う。

「ルシェル、これはいったい……?」

『ルシェル、こちらに』

セラフィムは俺の体を勝手に誘導し、母の手へと触れさせた。
何をするのか、まったくわからない。ただただ息を呑む。

『星々を照らす光よ、古の契約に従い応えたまえ。穢れを祓い、痛みを癒し、この者に安寧を返す』

すると、俺の手を通じて温かい金色の光が母を包んだ。
先ほどまで植物状態のようだと言われていた母は、やせ細っていた姿がみるみるうちに元の健康な身体へと戻っていく。
これには俺も父も、ただただ驚くしかなかった。

「治癒の光か……?」

まさか、というように呟く父。
セラフィムはニコッと笑い、静かに頷いた。
まさか光の精霊の気まぐれが、このような奇跡を起こすとは。
あまりの出来事に、俺は気づけば涙をこぼしていた。

「……ありがとう……気まぐれとはいえ、母を助けてくれて、本当に感謝を――」

俺が言い切るより早く、天の光の精霊セラフィムは星々のもとへ帰るのかと思いきや――
黙ったまま、すっと俺の中へ入ってきた。

そして、最後に。

『光の者よ……ルシェルよ……わたしはあなたと共に生きよう……千年の命と共に……』

そう言い残し、俺の中に完全に消えた。
俺も父も、あまりの出来事に言葉を失って顔を見合わせる。
信じられない、という感情がそのまま表情に出ていた。
その時、勢いよく扉が開き、ルファンとラルク、そして血相を変えたラグナルが飛び込んでくる。

「兄上!父上!大丈夫ですか!?」
「ああ……大丈夫だ」
「父上?……兄上……?」
「ルファン、後で話す。夜分だが、もう一度フィル医師を呼んできてくれ」

父の指示に従い、ルファンはフィル医師を呼びに寝室を飛び出した。
俺と父は、痩せ細っていたはずの母が、健康的で落ち着いて眠っている寝顔を見つめながら、その夜を静かに、更けるまで過ごした。
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