闇堕ちモブは主人公クラスに上がるとはどういうこと?!

海うみ海

文字の大きさ
26 / 30

8-8・実家に帰省する馬車の中の子供の頃の思い出

しおりを挟む
あれから1週間が経ち、母「ルージュ」は自分の好きな時間を過ごしていた。
俺と「ルファン」が一緒に武術の稽古をしていると、母も一緒にやろうとするのだが、そこは父「ヴァルティエ」が勘よく見つけては、軽く叱っていた。
それでもやりたいと訴える母に、父も仕方なく少しの時間だけ付き合っている。
そういえば、母はこんなにもお転婆だっただろうか。
父と並んでストレッチをしている姿は、仲睦まじい夫婦そのものだった。
家族で武術の稽古をしていると、執事長のメイプルに、俺とルファンの執事であるラグナルとラルクも加わっていた。
いつも穏やかな表情のメイプルが、珍しく顔を少し青くしている。

「ヴァルティエ様、獣王陛下がお越しです。応接間でお待ちになっております」

「……そうか。待たせるのは悪いな。すぐ用意して向かう。ルシェルも準備ができ次第、応接間に来るように……ルファン、ルージュと一緒にいてくれ」
「わかりました、父上」
「わかりました、父上。母上、私が稽古にお付き合いします」
「……ありがとう、ルファン……」

少し寂しそうに言う母だったが、あとで父から俺の話を聞いたと言っていた。
おそらく、かなり驚いたに違いない。
俺は急いでラグナルに着替えを手伝ってもらい、そのまま応接間の扉の前まで向かった。
緊張で、心臓の音がやけに大きく聞こえる。

まさか、獣王陛下「オルドリック・レイヴンクレスト」が自ら来るとは思っていなかった。
俺は2度、深呼吸をする。
後ろに控えるラグナルを見ると、彼もいつもより表情が硬い。

「行くぞ、ラグナル……」
「はい、ルシェル様……」

軽く二回ノックすると、「入りなさい」という父の声が返ってきた。
俺はドアノブを回し、応接間へ入る。
そこにいたのは、まるで玉座に座る黒い猛獣。
ソファに座っているだけなのに、空気が違う。
威圧感があるのに、無駄な誇張はない。
俺でも一目で分かるほど、放つオーラが別格だった。
思わず、その場で足がすくみかける。

「お前さんがルシェルだな」

ハスキーでありながら、落ち着いた低い声。
耳に心地よく、妙に色気がある。
危うく、変な意味で耳が痺れそうになる。

「は、はい……」
「そこに突っ立ってないで、こっちに来い」

向けられた笑みに促され、俺はとりあえず父の隣に座った。
向かいに座る獣王陛下、オルドリック様。
若すぎず、老けすぎず。
戦場を知り尽くした男の落ち着きと、今も前線に立てる肉体の強さを併せ持っている。
彫りの深い精悍な顔立ち。
はっきりした眉骨に、鋭いが冷酷ではない目つき。
ふっと口角を上げると、野性味のある色気が滲む。
瞳は金に近い琥珀色。
闇の中でも獲物を逃さない、まさに獣の目で、見られるだけで背筋が伸びる。
髪は黒に近い濃いダークブラウン。
獅子のたてがみの名残を感じさせる量で、肩にかかるほどの長さ。
体格は180後半から190前後はありそうで、肩幅が広く胸板も厚い。
筋肉は見せるためのものではなく、完全に実戦向きだ。
今日はお忍びなのか、服装は驚くほどシンプルだった。
白いシャツにベージュのチノパン、足元は茶色の革製アーミーブーツ。
それだけなのに、正直、やたらと色気がある。
別の意味で食われそうな迫力すら感じた。

「ヴァルティエ殿。どうやら文の通り、ルシェルには精霊が宿っているようだな」

獣王陛下オルドリック様の言葉に、俺は思わず息を呑んだ。
会ったばかりで分かるとは思っていなかったからだ。
それは、父にとっても同じだったようで、父もまた、驚きを隠せずにいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺の異世界先は激重魔導騎士の懐の中

油淋丼
BL
少女漫画のような人生を送っていたクラスメイトがある日突然命を落とした。 背景の一部のようなモブは、卒業式の前日に事故に遭った。 魔王候補の一人として無能力のまま召喚され、魔物達に混じりこっそりと元の世界に戻る方法を探す。 魔物の脅威である魔導騎士は、不思議と初対面のようには感じなかった。 少女漫画のようなヒーローが本当に好きだったのは、モブ君だった。 異世界に転生したヒーローは、前世も含めて長年片思いをして愛が激重に変化した。 今度こそ必ず捕らえて囲って愛す事を誓います。 激重愛魔導最強転生騎士×魔王候補無能力転移モブ

贖罪公爵長男とのんきな俺

侑希
BL
異世界転生したら子爵家に生まれたけれど自分以外一家全滅という惨事に見舞われたレオン。 貴族生活に恐れ慄いたレオンは自分を死んだことにして平民のリオとして生きることにした。 一方公爵家の長男であるフレドリックは当時流行っていた児童小説の影響で、公爵家に身を寄せていたレオンにひどい言葉をぶつけてしまう。その後すぐにレオンが死んだと知らされたフレドリックは、以降十年、ひたすらそのことを悔いて生活していた。 そして十年後、二人はフレドリックとリオとして再会することになる。   ・フレドリック視点は重め、レオン及びリオ視点は軽め ・異世界転生がちょいちょい発生する世界。色々な世界の色々な時代からの転生者の影響で文明が若干ちぐはぐ。 ・世界観ふんわり 細かいことは気にしないで読んでください。 ・CP固定・ご都合主義・ハピエン ・他サイト掲載予定あり

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

ドジで惨殺されそうな悪役の僕、平穏と領地を守ろうとしたら暴虐だったはずの領主様に迫られている気がする……僕がいらないなら詰め寄らないでくれ!

迷路を跳ぶ狐
BL
いつもドジで、今日もお仕えする領主様に怒鳴られていた僕。自分が、ゲームの世界に悪役として転生していることに気づいた。このままだと、この領地は惨事が起こる。けれど、選択肢を間違えば、領地は助かっても王国が潰れる。そんな未来が怖くて動き出した僕だけど、すでに領地も王城も策略だらけ。その上、冷酷だったはずの領主様は、やけに僕との距離が近くて……僕は平穏が欲しいだけなのに! 僕のこと、いらないんじゃなかったの!? 惨劇が怖いので先に城を守りましょう!

僕に双子の義兄が出来まして

サク
BL
この度、この僕に双子の義兄が出来ました。もう、嬉し過ぎて自慢しちゃうよ。でも、自慢しちゃうと、僕の日常が壊れてしまう気がするほど、その二人は人気者なんだよ。だから黙って置くのが、吉と見た。 そんなある日、僕は二人の秘密を知ってしまった。ん?知っているのを知られてしまった?が正しいかも。 ごめんよ。あの時、僕は焦っていたんだ。でもね。僕の秘密もね、共有して、だんだん仲良くなったんだよ。 …仲良くなったと、そう信じている。それから、僕の日常は楽しく、幸せな日々へと変わったんだ。そんな僕の話だよ。 え?内容紹介が内容紹介になってないって?気にしない、気にしない。

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ※第33話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

魔力ゼロの転生モブだけど、死に戻りは許さない

犬白グミ
BL
僕は主人公リカルドに出会った瞬間、気づいた。 BL小説『死に戻った疎まれ令息は逃げられない』にモブ転生したのだと。 「俺のことを好きだったんじゃないのか?」 「え? 違うけど」 原作では不憫受けとして死に戻るはずのリカルド。 なのに、美形で自信満々の攻めに成長して、なぜかモブの僕を追いかけてくる。 自惚れリカルド × 鈍感なモブ転生者アーロン 果たして死に戻りは回避できるのか? 本来の攻めも登場して、ふたりのじれったくも切ない恋は加速する。 お気に入り、ハート、感想ありがとうございます!

生まれ変わったら知ってるモブだった

マロン
BL
僕はとある田舎に小さな領地を持つ貧乏男爵の3男として生まれた。 貧乏だけど一応貴族で本来なら王都の学園へ進学するんだけど、とある理由で進学していない。 毎日領民のお仕事のお手伝いをして平民の困り事を聞いて回るのが僕のしごとだ。 この日も牧場のお手伝いに向かっていたんだ。 その時そばに立っていた大きな樹に雷が落ちた。ビックリして転んで頭を打った。 その瞬間に思い出したんだ。 僕の前世のことを・・・この世界は僕の奥さんが描いてたBL漫画の世界でモーブル・テスカはその中に出てきたモブだったということを。

処理中です...