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8-8・実家に帰省する馬車の中の子供の頃の思い出
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あれから1週間が経ち、母「ルージュ」は自分の好きな時間を過ごしていた。
俺と「ルファン」が一緒に武術の稽古をしていると、母も一緒にやろうとするのだが、そこは父「ヴァルティエ」が勘よく見つけては、軽く叱っていた。
それでもやりたいと訴える母に、父も仕方なく少しの時間だけ付き合っている。
そういえば、母はこんなにもお転婆だっただろうか。
父と並んでストレッチをしている姿は、仲睦まじい夫婦そのものだった。
家族で武術の稽古をしていると、執事長のメイプルに、俺とルファンの執事であるラグナルとラルクも加わっていた。
いつも穏やかな表情のメイプルが、珍しく顔を少し青くしている。
「ヴァルティエ様、獣王陛下がお越しです。応接間でお待ちになっております」
「……そうか。待たせるのは悪いな。すぐ用意して向かう。ルシェルも準備ができ次第、応接間に来るように……ルファン、ルージュと一緒にいてくれ」
「わかりました、父上」
「わかりました、父上。母上、私が稽古にお付き合いします」
「……ありがとう、ルファン……」
少し寂しそうに言う母だったが、あとで父から俺の話を聞いたと言っていた。
おそらく、かなり驚いたに違いない。
俺は急いでラグナルに着替えを手伝ってもらい、そのまま応接間の扉の前まで向かった。
緊張で、心臓の音がやけに大きく聞こえる。
まさか、獣王陛下「オルドリック・レイヴンクレスト」が自ら来るとは思っていなかった。
俺は2度、深呼吸をする。
後ろに控えるラグナルを見ると、彼もいつもより表情が硬い。
「行くぞ、ラグナル……」
「はい、ルシェル様……」
軽く二回ノックすると、「入りなさい」という父の声が返ってきた。
俺はドアノブを回し、応接間へ入る。
そこにいたのは、まるで玉座に座る黒い猛獣。
ソファに座っているだけなのに、空気が違う。
威圧感があるのに、無駄な誇張はない。
俺でも一目で分かるほど、放つオーラが別格だった。
思わず、その場で足がすくみかける。
「お前さんがルシェルだな」
ハスキーでありながら、落ち着いた低い声。
耳に心地よく、妙に色気がある。
危うく、変な意味で耳が痺れそうになる。
「は、はい……」
「そこに突っ立ってないで、こっちに来い」
向けられた笑みに促され、俺はとりあえず父の隣に座った。
向かいに座る獣王陛下、オルドリック様。
若すぎず、老けすぎず。
戦場を知り尽くした男の落ち着きと、今も前線に立てる肉体の強さを併せ持っている。
彫りの深い精悍な顔立ち。
はっきりした眉骨に、鋭いが冷酷ではない目つき。
ふっと口角を上げると、野性味のある色気が滲む。
瞳は金に近い琥珀色。
闇の中でも獲物を逃さない、まさに獣の目で、見られるだけで背筋が伸びる。
髪は黒に近い濃いダークブラウン。
獅子のたてがみの名残を感じさせる量で、肩にかかるほどの長さ。
体格は180後半から190前後はありそうで、肩幅が広く胸板も厚い。
筋肉は見せるためのものではなく、完全に実戦向きだ。
今日はお忍びなのか、服装は驚くほどシンプルだった。
白いシャツにベージュのチノパン、足元は茶色の革製アーミーブーツ。
それだけなのに、正直、やたらと色気がある。
別の意味で食われそうな迫力すら感じた。
「ヴァルティエ殿。どうやら文の通り、ルシェルには精霊が宿っているようだな」
獣王陛下オルドリック様の言葉に、俺は思わず息を呑んだ。
会ったばかりで分かるとは思っていなかったからだ。
それは、父にとっても同じだったようで、父もまた、驚きを隠せずにいた。
俺と「ルファン」が一緒に武術の稽古をしていると、母も一緒にやろうとするのだが、そこは父「ヴァルティエ」が勘よく見つけては、軽く叱っていた。
それでもやりたいと訴える母に、父も仕方なく少しの時間だけ付き合っている。
そういえば、母はこんなにもお転婆だっただろうか。
父と並んでストレッチをしている姿は、仲睦まじい夫婦そのものだった。
家族で武術の稽古をしていると、執事長のメイプルに、俺とルファンの執事であるラグナルとラルクも加わっていた。
いつも穏やかな表情のメイプルが、珍しく顔を少し青くしている。
「ヴァルティエ様、獣王陛下がお越しです。応接間でお待ちになっております」
「……そうか。待たせるのは悪いな。すぐ用意して向かう。ルシェルも準備ができ次第、応接間に来るように……ルファン、ルージュと一緒にいてくれ」
「わかりました、父上」
「わかりました、父上。母上、私が稽古にお付き合いします」
「……ありがとう、ルファン……」
少し寂しそうに言う母だったが、あとで父から俺の話を聞いたと言っていた。
おそらく、かなり驚いたに違いない。
俺は急いでラグナルに着替えを手伝ってもらい、そのまま応接間の扉の前まで向かった。
緊張で、心臓の音がやけに大きく聞こえる。
まさか、獣王陛下「オルドリック・レイヴンクレスト」が自ら来るとは思っていなかった。
俺は2度、深呼吸をする。
後ろに控えるラグナルを見ると、彼もいつもより表情が硬い。
「行くぞ、ラグナル……」
「はい、ルシェル様……」
軽く二回ノックすると、「入りなさい」という父の声が返ってきた。
俺はドアノブを回し、応接間へ入る。
そこにいたのは、まるで玉座に座る黒い猛獣。
ソファに座っているだけなのに、空気が違う。
威圧感があるのに、無駄な誇張はない。
俺でも一目で分かるほど、放つオーラが別格だった。
思わず、その場で足がすくみかける。
「お前さんがルシェルだな」
ハスキーでありながら、落ち着いた低い声。
耳に心地よく、妙に色気がある。
危うく、変な意味で耳が痺れそうになる。
「は、はい……」
「そこに突っ立ってないで、こっちに来い」
向けられた笑みに促され、俺はとりあえず父の隣に座った。
向かいに座る獣王陛下、オルドリック様。
若すぎず、老けすぎず。
戦場を知り尽くした男の落ち着きと、今も前線に立てる肉体の強さを併せ持っている。
彫りの深い精悍な顔立ち。
はっきりした眉骨に、鋭いが冷酷ではない目つき。
ふっと口角を上げると、野性味のある色気が滲む。
瞳は金に近い琥珀色。
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体格は180後半から190前後はありそうで、肩幅が広く胸板も厚い。
筋肉は見せるためのものではなく、完全に実戦向きだ。
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それだけなのに、正直、やたらと色気がある。
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「ヴァルティエ殿。どうやら文の通り、ルシェルには精霊が宿っているようだな」
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