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8-12・実家に帰省の馬車の中の子どもの頃の思い出
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16歳までの懐かしい思い出。
馬車の窓から見える外の景色、アルトさんのリンゴ畑が懐かしい。
「すごい……りんご畑だ……」
「ルシェルの領地はりんごの果樹園で有名ですからね。特にここのアップルパイは絶品ですよ」
「そうなんですか!?」
実は今、馬車の中には楽しそうにしているエミールと、のんびりしているローウェルも一緒にいる。
そう、馬車はちょっとした大所帯になっていた。
外には馬に乗ったラグナルと、ローウェルの執事兼護衛のケイルもいる。
本当は俺とラグナルだけで、ゆっくり帰るつもりだった。
だが、いざ馬車に乗ろうとしたら、ローウェルとエミールが先に乗っていたのだ。
珍しく講義が終わって「先に戻る」と言った二人に、なぜこの時気づかなかったんだろうと今になって思う。
「ルシェルの屋敷がどんなのか楽しみ」
「久しぶりだなー、ルシェル家に遊びに行くの」
「そういえば、ローウェル様のお家とルシェルのお家って、かなり深い繋がりがあると聞いています」
「うん、そうだよ……。実は言うと、ルシェルとちゃんと会うのは学園で初めてなんだ」
「そ、そうなんですか!?」
エミールが驚くのも無理はない。
実のところ俺は、できるだけ攻略対象たちと関わりたくなくて、理由をつけては避けていた。
……とは言えないが。
ギルドの依頼を受けたりして、できるだけ屋敷を離れるようにしていた。
それが――
「なんでだろうな……」
「なんのこと?」
「いや、なんでもない。俺の屋敷に来ても面白くないぞ?」
「そんなことはない」
「そんなことはないぞ」
2人が同時に言う。
特にエミールは、見るからに楽しそうだ。
これではため息もつけない。
やがて、少しずつ懐かしい屋敷が見えてきた。
そして到着して早々――
「おかえりなさいませ、ルシェル様」
「よく帰って来たな、ルシェル」
執事長のメイプルと父、健康的な母、そしてまた身長が伸びたルファンが出迎えてくれた。
メイプルと執事たちだけが迎えてくれると思っていたから、少し戸惑う。
だが、それを態度に出さないようにした。
「ただいま帰りました。父上、母上、ルファン。学園から友人をお連れしました」
「ローウェルから手紙で聞いている」
「そ、そうですか……」
ローウェルの方を見ると、勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。
――この野郎。
心の中でそう思った。
こうして俺は、エミールとローウェルと2週間を過ごすことになった。
馬車の窓から見える外の景色、アルトさんのリンゴ畑が懐かしい。
「すごい……りんご畑だ……」
「ルシェルの領地はりんごの果樹園で有名ですからね。特にここのアップルパイは絶品ですよ」
「そうなんですか!?」
実は今、馬車の中には楽しそうにしているエミールと、のんびりしているローウェルも一緒にいる。
そう、馬車はちょっとした大所帯になっていた。
外には馬に乗ったラグナルと、ローウェルの執事兼護衛のケイルもいる。
本当は俺とラグナルだけで、ゆっくり帰るつもりだった。
だが、いざ馬車に乗ろうとしたら、ローウェルとエミールが先に乗っていたのだ。
珍しく講義が終わって「先に戻る」と言った二人に、なぜこの時気づかなかったんだろうと今になって思う。
「ルシェルの屋敷がどんなのか楽しみ」
「久しぶりだなー、ルシェル家に遊びに行くの」
「そういえば、ローウェル様のお家とルシェルのお家って、かなり深い繋がりがあると聞いています」
「うん、そうだよ……。実は言うと、ルシェルとちゃんと会うのは学園で初めてなんだ」
「そ、そうなんですか!?」
エミールが驚くのも無理はない。
実のところ俺は、できるだけ攻略対象たちと関わりたくなくて、理由をつけては避けていた。
……とは言えないが。
ギルドの依頼を受けたりして、できるだけ屋敷を離れるようにしていた。
それが――
「なんでだろうな……」
「なんのこと?」
「いや、なんでもない。俺の屋敷に来ても面白くないぞ?」
「そんなことはない」
「そんなことはないぞ」
2人が同時に言う。
特にエミールは、見るからに楽しそうだ。
これではため息もつけない。
やがて、少しずつ懐かしい屋敷が見えてきた。
そして到着して早々――
「おかえりなさいませ、ルシェル様」
「よく帰って来たな、ルシェル」
執事長のメイプルと父、健康的な母、そしてまた身長が伸びたルファンが出迎えてくれた。
メイプルと執事たちだけが迎えてくれると思っていたから、少し戸惑う。
だが、それを態度に出さないようにした。
「ただいま帰りました。父上、母上、ルファン。学園から友人をお連れしました」
「ローウェルから手紙で聞いている」
「そ、そうですか……」
ローウェルの方を見ると、勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。
――この野郎。
心の中でそう思った。
こうして俺は、エミールとローウェルと2週間を過ごすことになった。
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