12 / 22
9.決意
しおりを挟む
蓮の屋敷を後にし集落に戻り、六次として普通に街の若衆としての役割を果たす日々が続いた。
ハルトが残していった外国の本は全く読めなかったが、それを手にして香りを嗅げばハルトの残り香を感じられた気がして、何度も己を慰めた。
そんなことをしても虚しさが増し、さらに愛しさも増すだけで、余計に辛さと自己嫌悪も増した。
今、何をしているのだろう。まだアフリカにいるのだろうか。それとも場所を変えて、活動しているのか……。無事で生きているのだろうか。
毎日、ハルトの無事を祈ることしか出来ない自分が惨めにも思えた。
「六次さん、ありがとうね」
「いいえ。それにしても良いテレビ買ったね」
「でしょう? でもね、これホームシアターっていうのよ?」
「ホームシアター?」
「そう、家の中が映画館みたいになるの!」
集落一の富豪の奥さんは、ご主人を亡くされてからすっかり映画にハマったらしい。それを長期休みにやってくる孫や曾孫と楽しむことが、生きがいとなっていた。
腑抜けになるよりもマシだ。
ご主人に先立たれるのは、きっとハルトが離れていった自分よりも悲しいはずなのに、奥さんはいつも笑顔を絶やさない。本当に凄いと思う。
「ほら、つけてみて!」
「じゃぁ、電源いれますよ」
ホームシアターのボタンを押し、地上波と繋げる。ほんの一瞬の間のあと、大画面に美しい自然が映し出された。
「うわ、すっご」
「やっぱり画面が大きいと迫力あるわー!!」
大興奮の奥さんと共に画面を見ていると、画面の片隅に人間が映った。
「……??」
その人間にカメラが徐々に近付き、奥さんが声を出した。
「あら、ハルちゃんじゃない??」
「え、あ、え!?」
画面に映ったばかりで、何の番組か分からない。しかしその映し方からして自然との共存系の番組だろう。
そこに映るハルトは、優しい笑みを浮かべて手を振っている。
「ハルト……本物……」
レポーターからインタビューを受けるハルトは、自然の偉大さと同時に、現地の実情や医療不足を訴えた。
きちんとした教育を受けていないから、自然を破壊して収入を得る。それは、先進国がそれを望んでいるから、それが一番手っ取り早い収入源となるのだと。
現地の活動で出来ること、離れた日本で出来るとこ、それぞれ違うけれど遠くても繋がっていると訴えていた。
「……」
一通りのインタビューが終わると、レポーターはハルト自身について質問をした。
「御家族は、この活動についてどう思われてますか?」
「両親は理解しています。もともと似た活動をしていたので……でも」
「でも?」
「日本に住む友人はアフリカ行きが急遽決まって寂しそうでした。あ、そうだ! おーい、六花。見てるか? 元気? オレは元気だよ! あと半年はいるから、アフリカ来たくなったらおいでーなんてね!」
「あはは、ご友人に届くといいですね。さて、次の場所へ行ってみましょう、次はジャングルに……」
レポーターの言葉でハルトは画面から姿を消した。
「…………………………」
「ハルちゃん、元気そうだったわね」
無言で食い入るように観ていたからか、奥さんは優しく声をかけてくれた。
久しぶりのハルトの笑顔、ハルトの声。全てが心に染み渡り、涙が溢れ出した。
「……言ったよね?」
「え?」
「ハルト、僕にアフリカおいでって、言いましたよね!?」
奥さんは涙を流す僕の頭を優しく撫でて、そして、言っていたよと頷いてくれた。
「……――!!」
行こう。ハルトに会いに。おいでと言ったのはハルトなんだから、行っても良いんだ。会っても、良いんだ。
会いたい気持ちを抑えなくて良いんだ。
立ち上がり奥さんにお礼を告げ、真っ先にある場所に向かうことにした。
ハルトが残していった外国の本は全く読めなかったが、それを手にして香りを嗅げばハルトの残り香を感じられた気がして、何度も己を慰めた。
そんなことをしても虚しさが増し、さらに愛しさも増すだけで、余計に辛さと自己嫌悪も増した。
今、何をしているのだろう。まだアフリカにいるのだろうか。それとも場所を変えて、活動しているのか……。無事で生きているのだろうか。
毎日、ハルトの無事を祈ることしか出来ない自分が惨めにも思えた。
「六次さん、ありがとうね」
「いいえ。それにしても良いテレビ買ったね」
「でしょう? でもね、これホームシアターっていうのよ?」
「ホームシアター?」
「そう、家の中が映画館みたいになるの!」
集落一の富豪の奥さんは、ご主人を亡くされてからすっかり映画にハマったらしい。それを長期休みにやってくる孫や曾孫と楽しむことが、生きがいとなっていた。
腑抜けになるよりもマシだ。
ご主人に先立たれるのは、きっとハルトが離れていった自分よりも悲しいはずなのに、奥さんはいつも笑顔を絶やさない。本当に凄いと思う。
「ほら、つけてみて!」
「じゃぁ、電源いれますよ」
ホームシアターのボタンを押し、地上波と繋げる。ほんの一瞬の間のあと、大画面に美しい自然が映し出された。
「うわ、すっご」
「やっぱり画面が大きいと迫力あるわー!!」
大興奮の奥さんと共に画面を見ていると、画面の片隅に人間が映った。
「……??」
その人間にカメラが徐々に近付き、奥さんが声を出した。
「あら、ハルちゃんじゃない??」
「え、あ、え!?」
画面に映ったばかりで、何の番組か分からない。しかしその映し方からして自然との共存系の番組だろう。
そこに映るハルトは、優しい笑みを浮かべて手を振っている。
「ハルト……本物……」
レポーターからインタビューを受けるハルトは、自然の偉大さと同時に、現地の実情や医療不足を訴えた。
きちんとした教育を受けていないから、自然を破壊して収入を得る。それは、先進国がそれを望んでいるから、それが一番手っ取り早い収入源となるのだと。
現地の活動で出来ること、離れた日本で出来るとこ、それぞれ違うけれど遠くても繋がっていると訴えていた。
「……」
一通りのインタビューが終わると、レポーターはハルト自身について質問をした。
「御家族は、この活動についてどう思われてますか?」
「両親は理解しています。もともと似た活動をしていたので……でも」
「でも?」
「日本に住む友人はアフリカ行きが急遽決まって寂しそうでした。あ、そうだ! おーい、六花。見てるか? 元気? オレは元気だよ! あと半年はいるから、アフリカ来たくなったらおいでーなんてね!」
「あはは、ご友人に届くといいですね。さて、次の場所へ行ってみましょう、次はジャングルに……」
レポーターの言葉でハルトは画面から姿を消した。
「…………………………」
「ハルちゃん、元気そうだったわね」
無言で食い入るように観ていたからか、奥さんは優しく声をかけてくれた。
久しぶりのハルトの笑顔、ハルトの声。全てが心に染み渡り、涙が溢れ出した。
「……言ったよね?」
「え?」
「ハルト、僕にアフリカおいでって、言いましたよね!?」
奥さんは涙を流す僕の頭を優しく撫でて、そして、言っていたよと頷いてくれた。
「……――!!」
行こう。ハルトに会いに。おいでと言ったのはハルトなんだから、行っても良いんだ。会っても、良いんだ。
会いたい気持ちを抑えなくて良いんだ。
立ち上がり奥さんにお礼を告げ、真っ先にある場所に向かうことにした。
0
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる