【R18.BL】千里結言

麦飯 太郎

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13.神様

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 ハルトに再会出来た翌日、朝からニヤニヤとしている集落の男衆に首を傾げながら挨拶をすると、結婚式はもう一度するか? と聞かれた。
 何故かと問えば、衣装が逆だろうと言われて目玉が飛び出すくらい驚いた。どうやら、あの夜にハルトと交わった……僕の声の方が大きかったらしく、抱かれたのはハルトではなく僕の方だと思われたのだ。
 懸命に違うと伝えると「どっちでもいいよ」と笑われ、それをきっかけに男衆とは仲良くなった。そして、ハルトが取材中は手持ち無沙汰なので団体の手伝いをしようとしたが、怪我や何かあった時に保険が使えないから手を出さないで欲しいと言われてしまいそれも出来なかった。
 仕方ないので、女性達が団体から勉強を教わっている間に幼い子の面倒を見ていたら、それがいつの間にか日常になっていった。

『リッカ! 今日は何を話するの!?』

 元気な男の子達は毎日色々な遊びを考えて、それらを楽しんでいる。しかし、女の子達は遠い日本の話を聞く方が面白いらしい。
 なので平等に、朝の比較的涼しい時間に運動をし、その後は木陰で話を聞かせてやっている。

『うーん、何がいい?』

 と言っても、日本の知っている場所は限られている。なので自然と神や天狗、そして小さな集落や書物で読んだ妖怪の話になってしまっていた。

『あの話! また聞きたい!』
『あの話?』
『うん! 冬の神様の話!』
『いいよ、僕の一番知っている話だからね。この前は、冬の神様がどんな人で鬼の子達と暮らしてて、あとは死にかけの人間に出会った話をしたんだよね? じゃぁ、続きを話そうか』

 騒いでいた子供達が静かになり、期待の視線が集まる。その様子にニコリと笑って口を開いた。



 冬の神と人間は、すれ違いもあったけれど互いに惹かれあっていった。しかし冬の神は、人間はやはり人間の世界で住むべきだと考えた。冬の神と暮らしていた三人の小さな鬼達は、その人間のことが大好きになっていたし、冬の神が人間を愛していることに気付いていたのでとても悲しかった。
 人間は自らの世界に戻ったけれど、何故か人々はその人間を認識しなくなっていった。

 子供達は目を丸くし、何故だろうとヒソヒソと話す。

 人間も何故かと思ったが、心当たりは冬の神しか浮かばなかった。だから、冬の神が住む山へ戻ってきた。雪山で目が見えなくなっても歩き続け、冬の神を探し続けた。
 そして、冬の神と人間は再び巡り会った。

『良かったね!』
『でも、なんで人から見えなくなったのかな?』

 最初に出逢った時、人間は死にかけていた。このままではすぐに死んでしまうだろう。それは小さな鬼でも分かるほど明らかだった。その人間に、冬の神は自らの命の半分を吹き込んでいたのだ。
 人間は絶命を免れる代わりに、冬の神のいつまで生きるか分からない永遠とも思える命を共有していたのだ。
 人間であり、人間でなくなった。それ故に、すでに他の人間からは認識がされなくなってしまったのだ。
 冬の神は詫びた。
 人間のまま死なせることも出来たけれど、己の寂しさと消えて欲しくないという我儘で、許可も取らずに命を分け与えた。死ねない辛さを知っているのに、それを押し付けてしまったと。
 しかし、人間はそれを 命の半分ということは、命尽きる時は一緒なのだ と喜んだのだ。
 神と人間は仲睦まじく、今は家族も増えて……鬼達は二人抜けてしまったけれど、仲良く暮らしている。

 子供達はふぁーっと感嘆の声を出した。

『よかったね。神様も寂しいの嫌だもんね』
『人間が優しくて良かったね!』

 素直な感想に、嬉しくなり子供達の頭を撫でながらそうだろうそうだろうと頷く。すると、泣きそうな小さな女の子が服の裾を引っ張った。 

『鬼さんはどこに行ったの?』
『え』
『仲良しの鬼さん。なんで二人いなくなっちゃったの? 喧嘩したの?』
『?! あぁ、違う違う! 一人の鬼さんは別の妖怪……少し遠くの所にお嫁に行ったんだよ。でも、しょっちゅう帰ってくるからとっても仲良し。そしてもう一人は……自分の道に進むと決めたけど、元気にしてるよ』
『仲良し?』

 潤んだ瞳に、もちろんと元気に返すと女の子は良かったと安心し立ち上がった。それを合図に子供達はそれぞれの好きな遊びに散っていった。

「……元気にしてる」
「六花の冬の神様の話は、まるで家族の話みたいに自然に話すよな」

 驚いて振り返ると、腰掛けていた木の影からハルトが顔を覗かせた。

「いつから聞いてたの?」
「最初から」

 なら子供達と並んで聞けば良いのに、と言おう思ったが横に並んで座ったハルトがこちらの手をそっと握ってきたので、その言葉を飲み込んで手を握り返す。

「……ねぇ、六花はさ……神様を知ってるの?」
「なんで、そう思うの?」
「神様の話をする時、六花はとても優しい目をするから」

 交わるハルトの視線がとても暖かく穏やかで、この人にはきちんと……家族を紹介したいと思えた。きっと風花はカンカンに怒るだろうけれど、蓮は喜ぶ……そんな気がする。

「そっか、うん。知ってる。日本に帰ったらさ、またあの空き家にいかない? 大切な人を紹介したい」
「!? うん! 楽しみにしてる」
「どんな人でも驚かない?」

 その言葉にハルトは握っていた手をするりと離し、腕を組む。そして少し考えていたが、すぐにこちらを見て満面の笑みを浮かべた。

「うん、大丈夫。最近さー、夢で小さな六花が子供を抱いてる夢を見たんだ。小さな六花はその子供のことを、神様の子だよってオレに話すの。その夢を見た時に、あーそっかって思ったんだ。納得したっていうのかな。まぁ、夢だけどさ」
「……そっか」

 思い出した、ということではないようだ。しかし、きっと何かを感じてくれているのだろう。
 人間としての時間を大事にしながら、ゆっくりとじっくりと六花という人と、六次という人の話をしていこう。きっとハルトならば、受け入れてくれると思う。
 隣に座るハルトを抱き締める。ゆっくりとキスをすると、恥ずかしそうに なんだよ と頬を染めた。

「ハルトに出逢えて、僕は幸せだよ」
「何それ! 当たり前だろ?」
「ぷっ、はははは!!」

 二人で大笑いしていると、何事かと思った子供達が集まってきた。もう昼前だ。そろそろ彼らの母親達が戻ってくるだろう。

『さて、そろそろ移動しよう! 今日は昼ごはん何かなー?』

 子供達は好きな食べ物を口々に叫んだ。
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