【R18】雨乞い乙女は龍神に身を捧げて愛を得る

麦飯 太郎

文字の大きさ
19 / 41

龍神の喜び

 おとめが帰宅したのは、風呂のあとに布団で二回、その後くたくたになって力の入らないおとめを風呂に入れて……そのまま一回。
 計四回交わり、休息をさせてからだ。
 まだ昼には程遠い時間におとめが来て、昼ご飯もとらせずに……現在は夕方だ。冬の山は夜が早い。
 日が落ちる前に帰らせたが、今度は食事の準備くらいさせておこうと思う。

「…………」

 ――また、今度はいつ来てくれるだろうか。
 これからは本格的な雪が降るだろう。そうなると山にはなかなか入れなくなる。
 帰り際に湖の畔で、用事は無くとも来てくれて良い、話し相手になってくれと伝えた時、おとめは至極嬉しそうに満面の笑みで返してくれた。
 なので、きっと、近いうちに……。
 そんなことを考えていると、目の前でいつものように次郎と三国が頬杖をついてこちらを見ている。

「なんだ?」
「……龍神さま、頬が緩みっぱなしですよ」
「そ、うか??」

 自らの頬を引き締めるように押さえると、次郎はニコニコと嬉しそうにした。

「で、乳は吸えたんか?」
「………………ああ」

 獣とはいえ、おとめとの密事を話すのは如何なものか思ったが、そもそも最初にそんな話をしたのは自身なので、後悔しながら正直に答える。
 触れただけで愛らしく喘ぎ声を漏らすおとめを思い出し、不覚にも兆しそうになったので目の前の狸の顔をじっと見つめて押さえ込む。
 だが、そんな欲望を抑えるための道具にされていた次郎は、じっと見てもらえたことが嬉しかったらしく、手を叩いて喜んだ。

「そんなら良かった! 龍神さま、後悔は先に立たないんやで? あ!! なら口吸いもしたんか。よかったなぁー」
「いや、それはまだだ」

 楽しげに横に揺れ出した次郎が暴走しないように被せ気味に答えると、三国が瞳が落ちてしまいそうなほど目を開いた。

「!? はぁ? なんでですか!? おとめちゃんと心を通じ合わせたんですよね!? それでなかったら何度も抱かないですよね!? 獣なら他の雌も抱きますけど、人間なら基本的に好きあった夫婦でしか何度も交尾しませんよね!?」

 交尾……。なんだかそう言われると、抱くのがただの生殖行為に思えるが、本来はその通りなので龍神はそのことには触れないことにした。

「おとめは……おとめが俺を好きかは分からないだろう? 人間にとって口吸いは特別だ。俺に抱かれてはくれるが、おとめの気持ちを確かめていないからそれはできない」

 実際、しようと思えばいつでもできた。
 顔を少し寄せれば唇が触れ合う距離におとめがいたのだから。しかし、その度に、おとめの心はどこにあるのだろうと思ってしまったのだ。
 中に自分の欲望を埋めて、四度も大量に精を放ったくせに……。それにその間に数えきれないほどおとめは達してしまっていた。
 今更だけれど、どうしても唇を触れ合わせて無理におとめの心を引き止めるようなことはしたくなかった。
 だが、抱くことは止められなかった……。
 矛盾だらけだ。
 あんぐりと口を開いたままの三国は、その口から盛大なため息を吐いた。

「はぁぁぁぁぁ~?? 確かめてないんですか!? っていうか、分かるでしょ!! おとめちゃんの気持ち!!」
「分からないだろう」

 分かれば苦労しないのだ。

「雰囲気とか、分かるでしょ!?」

 おとめはいつも優しい。そうだ、出会った時から神の化身と思えるほどに身も心も美しかった。
 目を閉じれば、今でも落ちてきた時の……あの金に輝く髪が流れて白い肌が輝き、そして深い空のような青さの瞳が驚いて開いている様を思い出せる。

「しかし、言葉でないと本心は伝わらぬだろ?」

 きっとおとめの心は龍神自身に向いていると思う。だけれど、それを実際に聞いてはいない。
 ただ、人間の村を助けたことにより感謝の念で抱かれているからと言われれば、その可能性は大いにあり得るのだ。

「なら龍神さまは言うたんか?」
「「!?」」

 今まで黙っていた次郎が、何も考えていませんというようなぽやぽやとした表情で首を傾げた。

「?? ん? なんじゃ?」
「言って、ない」

 そう、言ってないのだ。龍神自身が言ってないのに、人間のおとめが神に想いを寄せていますなどと言えるはずもない。分かっている。

「何でですか……」

 呆れたような三国の視線から逃れるように、机に額を付ける。

「その、怖くてな」
「――そうですか」

 それ以上の追求はなかったが、それが余計に心苦しくなった。
 怖い。おとめに想いを伝えたとき、拒否をされ、あの美しい笑顔が曇る可能性を考えるだけで身が引き裂かれるような気持ちになる。
 今はまだ、無理だ。
 するとそこへヤエが帰ってきた。
 何も知らないヤエは、軽やかに屋敷に飛び上がり次郎の隣に並んだ。

「おとめちゃん見送ってきたわよ。筋肉が痛いとかは言ってたけど、ちゃんと帰ってたわ」
「あぁ。ご苦労だった。山の様子はどうだ?」

 先の山火事では、隣の山は壊滅。こちらも相当な被害を受けた。何より、冬眠目前や冬眠したてで逃げることが間に合わなかった動物達も多くいた。

「さすがに、焼けたはげ山では冬眠できないので、こちらと南の山二つで生き残りを分散させてます」
「そうか。不足は」

 ヤエの言葉に頷きながら返すと、三国が手を上げた。

「食べ物はかなりキツいですね。冬眠したての奴らはそのまま巣穴を見つけさせれば寝ましたけど、熊や大型の獣達はまだ充分に太ってないので冬ごもりするのがキツいと。夏の日照りで特に今年は食べ物が無かったので……」
「……はぁ、他の神に頼むしかないか」
「お願いします」

 本来ならば山のことは山で済ませるべきだ。だが、近隣の神だって腹を空かせた獣が人里を襲うようになるのは望んでいないだろう。
 付き合いが嫌で田舎に来たが、完全には断てないということだろう。
 そんな嫌なことを頭の隅に追いやり、当時のおとめを思い出す。
 山火事という大人の男でも山に入るのが危険だというのに、おとめは無茶をしてでもここに訪れてくれた。
 その理由は確かに村を助けたいと思ったのだろうが、その前に 龍神が無事か確かめたかったから だという。
 そんなことを言われては、勘違いしてしまう。愛されているのではないかと思ってしまう。
 ……。
 神は死ぬことはない。
 ただ、そこに居ることを忘れられれば、自然と消えることがほとんどだ。
 ……消えても良いと思っていた。
 次郎、ヤエ、三国がいるからこうしてまだ龍神を続けていたけれど、未練は特にない。
 しかし、おとめと出会ってからは違う。
 彼女の傍にいられないなら、せめて一生を見守りたいと……思ったこともあったような気もしないでもないが、すぐに共に過ごせればなんて夢を見たのだ。
 神が夢をみるなど、なんと滑稽だろうか。

(だが、おとめは、俺だけを心配し……理由はどうあれ、俺を求めてくれている)

 それが今は幸せなのだ。

「嬉しそうね」

 どうやらまた頬が緩んでいたらしく、ヤエが少々冷たく言葉を吐いた。それに三国が 気持ち悪いな と同意し、次郎だけが 楽しそうでよかね と微笑んでいる。

「三国、気持ち悪いはないだろう」
「いやいや、龍神さま。充分気持ち悪いです」

 言い合いになりそうな場面に、ヤエが盛大に咳払いをした。

「ごっほん!! ねぇ、おとめちゃんは、ここにちょくちょく来るようになるかしら?」
「用事が無くとも来て良いとは伝えたが……どうだろうな」
「それなら来るかもしれんな! おとめちゃんの様子はこっちで見守るかの」
「頼む。……おとめが山に入ったらすぐに知らせてくれ。落ちる場所へ迎えに行く」
「……いつもと同じやな?」

 次郎が首を傾げると、ヤエが次郎の口を手で押さえた。

「しっぃ!! ――いつもと同じよ」
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜

紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。 連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

【魔法少女の性事情・1】恥ずかしがり屋の魔法少女16歳が肉欲に溺れる話

TEKKON
恋愛
きっとルンルンに怒られちゃうけど、頑張って大幹部を倒したんだもん。今日は変身したままHしても、良いよね?