【R18】雨乞い乙女は龍神に身を捧げて愛を得る

麦飯 太郎

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救出

 長い長い夜が明けた。
 ウトウトとしていたおとめは、外の足音で覚醒し身構える。

「おはよう! おとめちゃん!」
「ゆきちゃん!!」

 扉を開けて駆け寄ってきたゆきは、懐から温石を取り出し、そっとおとめの腹に差し込んでくれた。

「うわっ! はぁ~……温かい……」
「ごめんね。本当は昨晩来たかったんだけど」
「ありがとう。大丈夫だよ。それより今はどんな状況?」

 その言葉に、ゆきは眉を顰めた。状況は芳しくないようだ。

「おとめちゃん。落ち着いて聞いてね? おとめちゃんの家は留吉に買われた男衆で見張られてたんだけど、今朝早くにトヨさんが隙を見て抜け出して、村長の家に行ったの。でも、村長は留吉に何か弱みを握られてるらしくて返答を濁したらしい。それで、痺れを切らしたトヨさんは村長の家を出て……」
「どう……なったの?」
「……山へ、走っていったらしいの」
「ヒッ――」

 トヨが一人で雪山に向かう。それはきっと龍神を頼ってだろう。だが、おとめはトヨにも龍神の湖の詳しい場所は教えていない。
 となると、トヨはあてもなく湖を探して雪山を彷徨うこととなる。
 ――冬の山は方向感覚が狂いやすい。
 そんな雪山に一人で装備もせず、目的地すら分からず入るなど……いくら田舎育ちのトヨでも自殺行為に等しい。
 呼吸が荒くなったおとめに、ゆきが手を差し伸べてきた。それをギュッと縋るように握る。

「さすがにまずいってなって、今は留吉に買われてない男衆が山に入ってる。それとあまり効果はないだろうけど、女衆が麓から山に向かって叫んでるから」
「……ありがとう…………」
「必ず見つけるから。おとめちゃんも負けないで」
「……うん」

 話がひと段落すると、下卑た笑いが外から聞こえてきた。その声の主に気付き、おとめとゆきは身体をかたくする。

「……留吉」
「よぉ、ゆき。太っても良い女だな。乳がよく出そうだ。どうだ? ワシの子も孕まんか?」

 その言葉に、襟を正したゆきは無言で留吉を睨む。その態度に留吉は唾を吐いた。

「なんじゃ、おとめを説得してるんじゃなかったんか?」
「……」
「おとめぇ~。トヨさんは逃げちまったぞ? 捨てられたんだ。なぁ、もう頼れるのはワシしかおらんじゃろ? ワシの嫁になる決心をしたか?」
「嫌よ。死んでも嫌。あんたなんかと結婚するなら、地獄の鬼の慰み者の方が幾分かマシね」

 そう言うと、留吉のこめかみに血管が浮き出る。
 ゆきがそれ以上はやめた方が良いと首を振るが、嫌われるくらいのことを言わなければ、いつかは手篭めにされてしまうだろう。

「帝都に行って、何か得たと思ったら頭の中身落としてきたんでしょう? はした金だけ持って帰ってきて、困ってる男衆を買って。本当は誰もあんたを信用してなんていないし、好いてもいない。表面だけの関わりで満足するなら帝都で薄っぺらい人間関係築いて満足してなさいよ。村から出ていけこのクズ野郎」
「てめぇ、言わせておけば!!」

 檻に近付いた留吉はゆきを押し退け、おとめに掴みかかる。グイと引っ張りあげられ、襟元が乱れて肌襦袢まで乱れて乳房の上の部分がまろび出た。

「両手両足縛ったまま、その口に布でも詰め込んでワシのちんぽ突っ込んで孕ませてやる!! そのまま村の男にまわされて死ね!! この異国人が!!」

 ――ズドーーン!!!!

 留吉の叫びが終わる直前、大きな地鳴りがした。納屋にある狩猟用具が床に落ち、留吉はおとめの襟を持ったまま檻にぶつかった。
 おとめも檻に頭をぶつけてしまい、痛みを感じた。

「なんじゃ!! 地震か!?」

 しかし、その揺れは一瞬で終わり、次に突風が納屋を揺らし……その屋根と壁を吹き飛ばした。
 吹き曝しになった場所に、座り込むゆきと檻の外で驚いた表情の留吉、その留吉に襟を掴まれ檻に入れられたおとめが現れた。
 そして、もう一人。
 龍神が納屋の屋根ほどの高さに浮かび、こちらを見下ろしている。
 驚くほど冷たい表情に、おとめまで肝が凍るような気がした。

「龍神……様……」

 よく見ると、いつもと少し違う。
 頭には以前触れた角が少しだけあった場所から、立派な龍の角が生えている。黒目は丸くなく細く縦長になり、口端からは牙が見えていた。そして、着物の裾から長い尾が下がり、納屋のあった場所をぐるりと囲むように這っている。

「あれが……龍神……」

 おとめの襟を離した留吉は、ずるずると情けなく逃げようとするが、龍神の尾に阻まれて、それが叶わない。
 するりと空気が降りるように龍神はおとめのいる檻に近付き、鉄の柵を両手で簡単に曲げておとめを外に出してくれた。
 縛られた縄を外し、そのままおとめを片手で抱え、ゆっくりと頬を撫でる。

「遅くなってすまない。怪我はないか?」
「はい、でも、でも、お母さんが、山に!!」

 すると優しく微笑んだ龍神は、おとめの耳元に口を寄せた。

「安心しろ。ヤエと次郎、三国がおとめの家まで連れ帰った。高熱を出していたから、そのまま世話をするように言い伝えてある」

 その言葉におとめは涙を流し、龍神の着物を掴んで何度も感謝の言葉を述べた。
 おとめの額に手をあてた龍神は眉間に皺を寄せる。そして、そっとおとめの首筋を撫でた。

「おとめも熱が出ているな……少し寝るといい」
「でも、それじゃぁ」
「大丈夫だ。全て終わらせておく」

 微笑んだ龍神におとめは安堵の息を吐いた。それを確認して、龍神はおとめの目元に手を置く。ゆっくり眠るといい その言葉を聞くと同時におとめは深い眠りへと落ちていった。
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