【R18】雨乞い乙女は龍神に身を捧げて愛を得る

麦飯 太郎

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龍神の怒り

 おとめが腕の中で眠りに落ちたことを確認し、龍神は顔面蒼白で逃げようにも逃げられない留吉を見下ろした。
 視線が交わると、留吉は情けない声でヒィと叫ぶ。その声すら耳障りだ。

「わわわ、ワシはただ!! おとめを嫁にしようと!!」
「ほぉ、嫁に」
「そ、そうじゃ!! おとめは人間だが、外の血を多く引いているからな!! 誰も嫁に貰わん!! ワシが貰ってやろうとして」
「おとめはなんと?」
「おおおお、おとめは」
「嫌がっていたのだろう?」
「じゃが、そうでもしないとおとめなんかは嫁の貰い手がないんじゃ!!」

 沸々と湧き上がる怒りを龍神は必死に抑え込む。

「おとめなんか? もし仮にそうだとしても、お前のようなクズには嫁ぎたくなかろう」
「龍神よりマシだ!! ワシは人間だ!!」
「…………」

 人間と神、一番気にしているそれを言われると龍神は強く出れない。ただ無言で留吉を睨む。
 その時、今まで座り込んでいた女が立ち上がった。

「ふざけないでよ!! あんたみたいなクソ野郎とだったら、神でも鬼でも妖でもそっちの方がよっぽど良いわよ!!」

 おとめの友人と思しき女がズカズカと留吉の前に向かう。

「いい!? おとめちゃんはね!! 確かにこの村に来た頃は辛いことも多かったわ!! 差別されて、村のじぃちゃんやばぁちゃんが鬼の子だって石投げたりしたのよ!! それでもおとめちゃんもトヨさんも逃げたりしないで村の仕事を真面目にして、それで自分達の力で村に欠かせない子になっていったの!! 確かにまだ見た目でうんぬん言う馬鹿共はいるけど、そんなのはごく一部なのよ!! 村は家族なの!! そんな子が龍神様を慕ってるんだから、みんな応援してるの!! お前みたいなクズはクズらしくとっとと消えな!! ついでにその粗末なちんぽも腐って落ちてしまえ!!」

 一気に捲し立てた女に、留吉だけでなく龍神も呆気にとられたように見つめてしまった。
 言い終えて息を荒くする女は、自分の言葉の汚さに気付いたのか、やってしまったという顔をしている。
 だが、龍神は女の言葉によって少し落ち着きをとり戻した気がした。
 おとめを抱えたまま、そっと女の傍に身体を降ろして近付ける。

「おとめの友人よ」
「!?」
「ありがとう。おとめは良い友を持ったな」
「あ、え、いえ」

 微笑んだ龍神に、女は頬を赤く染める。

「そなたの名は?」
「ゆきと申します」

 そっとゆきだけに聞こえるように龍神は声を落とす。

「ゆき、おとめの母を俺の友人に家に送り届けさせた。酷い熱で世話をさせているが、手伝いに向かってくれないか?」
「は、はい!! あの、おとめちゃんは……?」
「おとめも熱が高い。おとめは……俺に任せてくれ。必ず家に帰すと、おとめの母……トヨに伝えてくれ」

 龍神の言葉にゆきは力強く頷いた。そして、留吉を見下ろして 二度と顔を見せるな、腐れ野郎 と捨て台詞を吐いて走り去っていった。

「女というものは強いな」

 思わずクスクスと笑うと、その仕草に留吉が身体を震わせる。

「さて、どうしたものかな」
「ごごごごご慈悲を」
「慈悲? お前に慈悲が必要か? あれだけ威勢良く貶してただろう?」

 どうやら笑った龍神を見て、留吉は格の違いを感じたようだ。本来は肝の小さな男なのだろう。虚勢を張っている姿の見苦しさは酷いものだ。

「めめめ滅相もない!!」

 本来、神という存在は人に干渉してはならない。願われれば力を貸す、だが、願わないことに力でも何でもなく神自身が関わるなど……。
 ふとそんなことを思ったが、龍神は今更かと自嘲するように口元を弛めた。

「あの、ワシ、何でもする、します!! だから、命だけは……!!」
「そうだな」

 命を取れば、こんな屑のような男でもおとめが悲しむかもしれない。
 ならば。

「まず、その魔羅は不要だな」

 龍神が指を縦に動かす。その瞬間、留吉の股間からじんわりと赤い染みが広がった。

「!? ――うぎゃぁぁぁぁああああ!!!!」
「その汚い言葉しか吐けない声も不要だな」
 今度は指を横に動かした。
「――!? !? ――!! !!」
「喉は切っておらぬ。帝都の医術でなら治せるかもしれんな。せいぜい心根を入れ替えて過ごせ」

 そう言うと指をパチンと鳴らし、留吉の足元からブクブクと水が湧き、その身は叫び声も無くドボンと沈んでいった。

「…………。さて、そこにいるのだろう?」

 龍神の言葉に影から年老いた男が一人、そっと顔を出した。

「……。村長だな」
「はい」
「今見た事は、誰にも話すな」
「もちろんです。私の不届き故に……申し訳ありません」
「その言葉は俺に向けられても困る」
「はい……」
「それと、留吉は村長が村八分にしたことにしておいて欲しい」
「龍神様の御力ではなく?」
「あぁ、人間のことは本来人間同士で解決すべきだからな」

 村長は納得したように頷き、そのようにと頭を垂れる。そしてそっと覗き見するように視線を上げてきた。

「あの、おとめを嫁にされるのでしょうか?」
「………………」
「龍神様?」
「いや、とりあえず熱が下がるまでは預かる。今後とも村を頼む」
「は、はい!! もちろんです!!」
「俺に今回のことを知らせてくれたのはトヨだ。トヨは家で熱を出している。まずは村人にトヨの無事を知らせて介抱してやってくれ」

 その言葉に村長は返事をするや否や飛び出すように駆け出した。
 腕の中で眠るおとめの頬を撫でると、少しだけ身体を居心地を直すように身体が動いた。

「さて、俺達も帰ろうか」

 龍神は微笑んで湖に向けてゆっくりと歩き出した。
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