【R18】雨乞い乙女は龍神に身を捧げて愛を得る

麦飯 太郎

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龍神の決意

 おとめを無事に三匹送り届けさせ、トヨとおとめは抱き締めあって涙を流したらしい。
 誰も欠けることがなく……いや、正確には一人は飛ばしたので欠けているが、誰も死を迎えることがなくて良かったと思う。
 そう思いつつ、龍神は庭園の橋に立ち、何もいない池の水を眺めていた。
 本来ならば人間の住む場所に《龍神》として降り立つのは宜しくない。人間に化けるなら多少は良いけれど、村に知らぬ人が現れればすぐに噂になる。
 だから、村には降りなかったのだ。

「人間と……関わりすぎてしまったな」

 数百年、いや、千年はそんなことはしなかったのに。おとめを想う気持ちが、そんな神としての善し悪しすら凌駕してしまった。
 もう、関わるべきではないのかもしれない。
 しかし、おとめは傍にいてくれると言ってくれた。閨の睦言でどこまで本気か分からない。……だが、あの時のおとめは……。
 龍神は頭を振り、自身だって愛の言葉だけは囁けなかったではないかと臍を噛む。

「龍神さま……」

 あまりにも苦しげな表情をしていたらしく、隣に寄り添ってくれている次郎が心配そうに足に触れた。

「あぁ、すまない。大丈夫だ」
「ほんまか? 今にも……そのなんや、うーん」

 言葉に迷っているらしい次郎に、しゃがんで頭を撫でてやる。

「おとめちゃん、きっと龍神さまのこと大好きやよ? 龍神さまもやろ? 嫁にしたいんやろ? 何があかんの?」
「嫁に来てくれれば、幸せだな」
「せやろ?! なら!」
「だがな。あの子は人間で、俺は神だからな」

 次郎はそれの何がダメなのかというように首を傾げる。

「まず寿命が違うだろ? おとめは長くてもあと五十年そこらで尽きてしまう。俺はその後も生き続ける」
「ばぁさんのおとめちゃんは愛せないんか?」
「ん? そんなことはないさ。おとめは歳をとる度に美しくなるだろう。壮年になれば、今とは違う美が彼女から溢れるだろうな」

 そう、おとめはきっとどんなに老いたとしても、心根の美しさにより、より一層磨きがかかり輝くのだろう。
 だが、神の嫁になるということは、おとめには人の世を捨てさせるというとだ。それは、母も捨て、友人も捨てさせる……。

「龍神さま。もっと気楽に考えや? ほら、色々落ち着くまでは村と湖を行き来してもらえばええし、落ち着いてからおとめちゃんと暮らすんもありやよ?」
「……そうだな」
「とりあえず、おとめちゃんと話や? 愛を伝えて、二人のことは二人で考えんと。一人で考えても埒が明かんよ」

 ご最もな意見に龍神は苦笑いをして、次郎の頭を撫でくりまわす。

「ありがとう、次郎。おとめが来たら、きちんと伝えよう。まずはそれからだな」

 ひょっとしたら、おとめは龍神と共に歩む未来はこれのぽっちも考えていない――なんてこともあるかもしれない。
 それはそれで悲しいけれど、もしそれならば、今の悩みはただの独りよがりの片想いだ。
 次に会えたら想いを伝え、おとめの気持ちを確かめよう。そう心に決め、龍神は立ち上がり前を向いた。
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