【R18,BL】雪月花時最憶君

麦飯 太郎

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5、入浴

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 蓮の家で世話になり始めて四日が経った。

 食事に衣類、それだけでも充分ありがたいのに、人間の世界の事が珍しいのか三つ子は時間を見つけては恭吾の所に遊びに来て話をする。
 三人同時に来ることもあれば、一人で来てお話をしてくれとねだられる事もある。
 おかげで暇な時間を作るのが難しいほどだったが、暇な時間と言うものは、考え事をしてしまうのでない方が有り難かった。

 だがそろそろ気になる事がある。
 身体の臭いだ。
 毎日、湯を用意してくれて拭う事は出来るが、髪を洗ったり出来ないので清潔感が欠けてきた。特に蓮が毎回手伝ってくれるため、下半身は足ばかり拭いてしまい肝心な所はおざなりになっている。

(風呂に入りたい……もう、片足で立てそうだし大丈夫だよな)

 思い切って、三つ子の中で最もスムーズに話が通じそうな天花に相談をしてみた。

「入浴ですか……そうですね、では蓮さまに相談してみます」
「あぁ~、出来ればその一回目は内緒で出来ないか?」

 何故と首を捻る天花は、どこかの屋敷に飾ってある上品な日本人形より可愛らしい。それを騙すようで心苦しいが、それでも一人で入りたいので苦笑いをしてあらかじめ考えていた言い訳をする。

「ほら、蓮って俺の体拭くのも手伝うだろう? きっと風呂に入りたいって言ったら手伝うって言うに違いないよな。だからさ」

 また何故と首を捻る子供に、素直に蓮を意識してしまうなんて言えるはずもなく、とにかくお願いだと通して貰えるようにした。

 約束の時間は夕方の日が沈む直前に決まり、それは蓮が外の見回りに行き小一時間は戻って来ないからだという。
 ほっとして久々の風呂に心を弾ませた。

 その時間はすぐにやってきて、天花は上手く歩けない恭吾の手を引き脱衣所へ案内してくれた。

「これが着替えです。終わった頃にまたお迎えに来ます。僕は夕食当番なので……」

 最後まで世話を出来ないことを詫びる天花の頭を撫でてやる。

「ここまでしてくれたら充分だ。俺こそ、無理を言って悪かった」
「い、いいえ! そんな、恭吾がお風呂に入りたい気持ちも分かるから……その代わり、今度遊んで下さい!」

 任せろと言うと天花はありがとうと微笑んで脱衣所を出て行った。
 ありがとうはこちらの台詞なのに、健気な天花が三つ子のリーダー役をしている理由がよくわかった。

(天花に頼んで本当に良かった)

 六花も風花もとても良い子なのはこの四日でよく分かったのだが、それぞれの性格を考えると頼みごとは天花になってしまう。
 きっとそれは蓮も同じ事なのだろうと恭吾はふと思った。

 ゆっくりと、まだ痛みが走る足を庇いながら着物を脱ぐ。
 ズボンと違い、帯を解けばすぐに脱げるのがありがたい。

 浴室は現代のようなシャワーはもちろん無く、木造の三つ子と蓮が入っても余裕のありそうな大きめの浴槽と同じ木造の椅子と桶があった。花の香りのする石鹸のような塊があり、それで身体を洗うのだとなんとなく理解した。

 その香りは優しくて、どこかで嗅いだことがあると思った瞬間、身体を拭いてくれていた蓮から香っていたのだと気づいてしまった。
 意識してしまうとそれしか考えられなくなってしまう。

 この浴室には今は恭吾しかいないが、普段は三つ子もそして蓮も使っているのだ。
 この座っている椅子ですら、蓮が全裸で座り身体を流している。

(だ、だめだ! 今はとにかく身体を洗って、頭も洗ってそれでちょっと浴槽に浸かって上がるんだ!)

 自身の理性との勝負に負けないように、賢明に全身を洗い上げる。
 時たま痛みが走るが、それすら勝負に必要なのだとして洗う速度を早めた。

 全てが終わり、すっきりして浴槽に浸かる頃には身体は疲れ切っていた。せっかくの入浴は身体より心が疲れてしまい本末転倒だなとクスリと笑う。

 その時、ガララと音がして浴室の扉が開いた。

 天花と別れてからそれ程時間は経っていないはずだが、足を庇いながら洗うのに余計に時間が掛かっていたのだと思い焦ってその扉に振り返った。

「悪い天花、今あが……る……」
「え……恭吾さんですか? あぁ、入浴中でしたか。どうぞお気になさらずに」

 そこには普段は着物で隠れている、スラリと長い生足を晒している蓮が立っている。更に、何事も無かったかのように桶を使い浴槽の湯を浴び始めた。

「え、ちょ! 俺上がるから! 蓮、待てって!」

 蓮は恭吾に背を向けて湯を浴びている。普段は一つに結っている髪を解いているせいか、余計に性的に見えてしまう。

 首だけを恭吾に向けて、何故ですかと蓮はたずねてきた。

「いや、だってそんな……俺だって男なんだ、わかるだろ。そんな……綺麗な姿見せられた堪らないんだよ! 察しろよ!」
「え?」

 振り向いたまま、蓮は固まって顔を赤らめている。そんなこと思っても見なかったというような反応だ。

「綺麗って……私がですか? どなたかと勘違いされてませんか?」
「この状況でどう勘違いしろって言うんだよ……」

 湯気にかき消されそうな声で反論した恭吾に、正面を向いて蓮はうつむいてしまった。

 先に風呂に入っていたのが恭吾だったとしても、この状況で世話になっている人間が居座るのもおかしな話だ。やはり風呂を出るべきだと思う。
 だが、既に勃ってしまった肉棒を隠し通すことが出来るはずもなく浴槽にぶくぶくと沈んだ。

「えっと……私で……すか?  妖怪ですよ?」
「妖怪でも綺麗なものは綺麗だって。しかも蓮は心も綺麗だと思う」

 自分の言葉に驚く。一体何を言っているのだろう。
 まるで恋をした相手を口説くような文句だ。

「えっとそうじゃなくて、その……な、わかるだろ?」
「恭吾さん……」

 名前を呼ばれると、口から心臓が出そうなほど緊張した。
 そして次に吐かれた蓮の言葉で、本当に心臓を吐いてしまうかと思った。

「恭吾さん……私、妖怪で……男ですよ?」

 その場の空気が止まる。

 それはきっと一秒とか二秒とかなのだろう。
 だが恭吾の頭の中で様々な事が巡っていった。
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