その恋、魔ちがってませんか?~魔女DK、後輩の恋占いに巻き込まれています!

ヤマ

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2.結局姉の思い通り

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「バイト代弾むから! ね?」
「頼まれてた雑誌は一番下に入ってるから。あとジュースは冷蔵庫に入れとくし勝手に飲んで」

 結構な額を提示され揺らぎかけたが、無視して荷物の説明を始めた。早く帰らなければ世紀のバカップルの片割れ、もとい姉の彼氏の青木が来てしまうからだ。
 身内の濃厚ラブシーンはもうこりごりである。

「せっかく軌道に乗ってきたの。ここで休んだら恋魔女の庵がまた一からやり直しになっちゃう……」

 悲痛にうつむく姉に今度は何も返せなかった。姉がふざけた名前の占いの館を始めてからどれだけの労力をつぎ込んできたかよく知っているからだ。

 しかしそれでも素直に引き受けることができずにいると、姉が神妙な顔で聞いてきた。

「力の制御はできるようになったんでしょ?」

 俺は曖昧にうなずいた。

 占いなんてちょっとの統計学と話術による詐欺みたいなものだと興味のない一般人は思っているだろう。

 だが姉に限っては本物だった。俺の家系は魔女の血を引いている。

 本当かどうか知らないが、欧州の魔女狩りを逃れた魔女が日本に亡命したのが俺の一族の始まりと言われている。

 ウィダーという姓を日本風に兎井田と変えてほそぼそ暮らしていたが、ある時、追手の手が迫り、命からがら逃げ伸びた一族は、敵を欺くため日本の苗字シェア上位に君臨する佐藤に名を変えたのだそうだ。

 この色ボケ姉ともども祖母から何度も聞かされた。
 決して他言してはならない、と普段温厚な祖母が眉根を吊り上げたのを強烈に覚えている。

 普通なら年を重ねるごとに眉唾な御伽噺となるはすだが、姉も俺もそうはならなかった。
 なぜなら二人とも欧州の血を感じさせるような色素の薄い髪と目をしており、そして何より魔法が使えたからだ。

 だが魔女というだけあって俺の家に伝わる魔力は女性体と相性がよく、男性体とは相いれない。
 かといって魔力が弱いわけではない。
 つまり何が起こるかというと、魔力を使った後、俺は体力を極度に消耗しよく倒れた。

 流石に高校生ともなれば自分の限界が訪れる前に気が付くようになったが。

「金曜と土曜だけでいいから」

 ね? と姉お得意の上目遣いがよこされる。

 青井のようにコロッと言うことを聞くと思うなよ、と反発心が目覚めるものの、幼少期、ひどい時は一日置きに倒れた俺を一番介抱してくれたのはここにいるバカップルの片割れだった。

「……金曜だけな」

 言った瞬間に後悔した。歓喜に沸く姉は、続く俺の「高校生だから八時までだぞ!」の叫びなど耳に入っていない。

「これ、うちのメニュー。全部きりの良い値段にしてあるし、基本的に金曜日は予約制だから予定も立てやすいよ。変な客が来た時のために警備員さんの番号もスマホにいれといて。常連さんの情報はここに――」

 きっちりまとめられた資料とサイズぴったりの黒いローブを渡されてめまいがした。この姉の中で最初から俺が断る選択肢などなかったのだ。

 そうこうしているうちに青井がやってきて俺は自主退避を余儀なくされ、怪しげなローブと大量の書類とともに病院を後にした。

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