その恋、魔ちがってませんか?~魔女DK、後輩の恋占いに巻き込まれています!

ヤマ

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5.気になるお相手は?

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 流石の武士も苗字だけで魔女認定は短絡的だと理解しているらしい。

 安倍はどこかに俺を突き出すわけでもなく、オカルト研究部で魔女裁判を決行するわけでもなかった。

 ただそれ以降、俺に付きまとっ……ストー…………先輩として懐いてくれている。

 昼食のたびに現れ、たまに帰りも一緒になる。
 それ自体は別に良いのだが、仏頂面なのでだいたいに置いて息が詰まる。

 避けた方が良いのかと思ったが、後ろ暗いところがあるから避けるのだと思われそうで、なんとなく隣にいるのを容認してしまった。

 魔法を使う必要に迫られるような波乱万丈な学校生活も送っていないから、特にしっぽは出さなかった。

 そもそも魔力疲労を防ぐため、魔法は数えるほどしか習得していない。
 出すしっぽがないのだ。

 『男前武士と一緒にランチ』という珍現象は、合服から夏服になり、学ランに変わり各々の学年が上がった今も続いている。

 俺が英検や漢検の勉強で忙しくなると収まり、終わると復活する寸法だ。
 気が使えるストー……ストーカーである。




 その彼がなぜか恋魔女の庵に、俺の目の前にいる。

 客とこちらの間にはオーガンジーとか言う半透明のカーテンが引かれているのみだ。
 単なる雰囲気づくりのための布は、よく見れば相手の顔立ちや表情が分かってしまう。

 しかも占い時にはカーテンは開けなければならない。

「……? やってますよね?」
「あ、はい! どうぞお座り下さい」

 俺は慌ててソファー席に座るよう促した。

 目の前のイケメンが小さな椅子に無理やり体を押し込むのを見ながら思考をフル回転させる。

 占いなんてくだらねぇ。
 それが一般的な高校男子の反応だろう。

 となると考えられるのは冷やかしか、もしくは……。

 思い当たった仮説にさーっと血の気が引いた。

 ――俺が本物の魔女だという証拠をつかんだのか。

 殴り込みかと身構えたが、安倍は動かず、じっと落ち着かない様子でサイズの合わない椅子に座っている。

 これからの占いに緊張と期待をにじませているほかの客と何ら変わりはない。

 彼の思惑がなんであれ、受けて立つしかない。

 念のため持ってきていたマスクと、紫色の太陽光は勿論ブルーライトまでカットできる優れものサングラスを慌てて装着し、テーブルを挟んだ対面に座ると端のボタンを押した。

 するするとカーテンが開かれていく。

「ホンジツ、けほ、本日はドウいったご用件でしょウカ」

 無理して甲高い声を出したせいでせた。

 だが最後の砦を取り払われてなお、噛まなかった自分をほめたい。
 ローブの下では心臓がバクバク鳴っている。

 安倍は現れたグラサンマスクの怪しげな男に少し面食らったらしく目を瞬いている。

 だがその後口を引き締め黙り込んでしまった。

 切り捨て御免ではないらしいと安堵したが、待てど暮らせど何も言ってこないのも対処に困る。

「あの、ご用件は」
「う……」
「う?」

 鵜? 

 ようやく口を開いたと思ったら一音で止まってしまった。

 俺の前で少年の耳が少しずつ赤くなっていく。
 いつも硬派で通っている彼の珍しい一面にくぎ付けになってしまう。

 それにしても、もしかして彼は本当に――。

「運命の相手に振り向いてもらうにはどうしたら良いんでしょうか」

 彼は本当に恋占いに来たのだ。

 俺はまじまじと相手の顔を見てしまった。

 しかも運命の相手ときたもんだ。

 安倍はまだ目じりが染まっているものの、腹をくくったらしい。
 意志の強い黒い瞳がまっすぐに俺を見返した。

 間近で見る男前武士の威力に一瞬気圧されてしまう。

「俺、好きな人がいるんですが、導入でいろいろ間違えてしまって、前に進めないんです」
「ほう、導入で……」

 詳しく聞いてみると、接点のない相手に近づこうと彼なりに考えられる限りの行動は起こしているが、感触がよくなく、むしろ相手は気づいてさえいないようだと言う。

 このハイスペック男前のアプローチになびかない女子、もしくは女性。

 そんな人間、この現世に存在するのだろうか。
 学校の七不思議に加えるべきでは? などと考えていたその時、俺に神の啓示が下った。
 
 ……人妻か!!

 人のものである女性を恋慕い、遠くから見ている。

 この、順風満帆に我が道を行く青少年がそんな切ない恋に身をやつしていたなんて。

 俺は今度学校で会ったら優しくしてあげようとそっと決心した。

「あの、なんか変な想像してませんか?」

 俺の憐憫の視線に安倍は訝し気に眉根を寄せた。

「失礼。えー、まず、その方があなたの幸運の相手であるかを見ましょう」

 俺は誤魔化しの咳払いをして、いつも通りの台詞を口にした。
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