その恋、魔ちがってませんか?~魔女DK、後輩の恋占いに巻き込まれています!

ヤマ

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6.恋の応援、始動

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 実っても本人が不幸になるような恋愛は応援できない。
 それが魔女であり恋に生きる姉の信念である。

 そのためにもこの占いは必須なのだ。

 俺は手早くタロットを広げた。

 きらきら星が飛ぶ大きな瞳、やたらと細い指先と光る唇。

 昭和の少女漫画風レトロな絵柄は、姉渾身の傑作――姉弟そろって絵心が無いのでもちろん外注オーダーメイド――である。

 途端に安倍が胡散臭そうにこちらを見た。
 きちんと一般男子高校生の感性は残っているらしい。

 意味深な形にタロットを並べ終え、一呼吸吐く。

 姉はきちんとタロットを学びそれと魔法をブレンドさせた特殊な方法を使っている。
 だが付け焼刃でできるものではない。

 おまじないのような簡単なものとは別に、俺が習得した魔法は三つだけ。

 その中で自在に操れる能力としては二つ。
 物を浮かす、探し物を見つけ出す、だ。

 俺は優雅に見えるよう指先をそらし、ゆっくりとタロットの上に手を滑らせた。

 ――彼の探し物を。

 そう心の中で唱えると、一枚のカードが指に吸い付くように浮かんだ。

 それを表に返し安倍の前に置いた。


 Ⅶ 戦車 正位置


 勝利や物事が有利に進む、勝負時であることを表わすカードであり、「進め」という暗示だ。

「……カードはあなたの選択を支持しています」

 ば、っと不可解にカードを睨んでいた安倍がうれしそうに顔を上げた。

 略奪愛なんてものたった十七の子供に推奨するなど、間違っている気がする。

 だがチラリと興味深げにタロットを触っている少年の外見を盗み見て、余計な心配かと頭を切り替えた。

 敬遠されるオカルトマニアだといってもこれだけのハイスペックなのだ。

 その辺の女子を食いまくって、飽きたから次は人妻に手を出そうとしている可能性もある。
 恋愛経験ゼロの俺に心配されるようなタマではない。

「では、次はどうされますか」

 自身の経験値の低さにため息をこらえつつ、そそくさとカードを片付けた。

 YESかNOで答えられる質問以外にタロットを使うのは今の俺には難しすぎる。

 占いっぽくなるよう最初にちょろっとタロットを使い、あとは魔法で乗り切るスタンスだ。

 恋魔女の恋応援プランとしては本格的な十回コースとお試しの五回コースがある。
 安倍が選んだのは五回コースで、ちなみに初回である今日は含まない。

 俺は弟子ということで、ちゃんと姉の値段よりは安くしてある。

「次って?」
「その方とお近づきになりたいのでしょう? お客様の選んだコースだとあと五回だけです。積極的に攻めましょう」

 恋に特化した魔女らしく、次は応援の段階に移ったことを説明しながら姉が作ったドピンクと黒のバラが飛ぶフリップを立てた。

 コース内料金で実践でき、かつ俺が得意なおまじないをおすすめメニューと称して指で差していく。

「人気があるおまじないとしては、一緒にいられる時間が増えるなどですね」

 一応俺も魔女のはしくれなので、消しゴムに名前を書いてそれが無くなるまで使うなど、本人の努力と情熱を使う「おまじない」の威力を高めることはできる。

 姉は一日に十回会話ができるだとか詳細に決められる魔術も使えるのだが、具体的過ぎて気持ち悪がられるので魔女の庵では封印しているそうだ。

「いや……だいたい毎日会えて話してるからそれは良いです」
「え!?」
「え?」

 俺は慌てて口を押えた。毎日のように俺と一緒にいるくせにいつの間に。

「相手に少しは意識してもらいたいんです」

 切実な表情にぐ、とのどが詰まる。

 こんな男前にこんな表情をさせるとは人妻おそるべしである。

 俺はごまかしの咳を一つつき、背筋を正した。

「そうですか……では、吉となる場所や小物を占ってみましょう」

 横の棚からビロード生地が張られた台座に乗る水晶玉を取り出し、安倍との間に置いた。
 イケメンの顔が再度訝し気にしかめられる。

 分かるぞ、いかにも怪しいもんな。
   まぁ、ダウジングを大真面目にやっている奴の顔ではない気もするが。

 内心納得しつつも、俺の第三の力を使うにはこれが不可欠だ。

 触れた相手の少し先の未来が見える力。

 俺の力だけではいつ発動するかわからない不安定な魔法だが、水晶がその欠点を補完してくれる。
 魔力疲れはするが、致し方ない。

「ここに手を置いていただけますか?」

 しぶしぶといった体だが安倍は丸い水晶の上に手を乗せた。

 俺の一回りほど大きな手は、男性的に節くれだっているが形はとてもきれいだった。
 そう言えば、あれだけ一緒にいながら彼の手をしっかり見たのは初めてだ。

 失礼、と断ってから俺は自身の手をそこに重ねた。
 女性の場合は水晶玉をわきに抱えて手相を見るという口実で手に触れるのだが、同性だからそんな配慮はいらないだろう。だ
 というのに安倍の手は少し緊張気味に震えた。

「どうかされました?」
「いや、近くで見ると知り合いに似てて……」

 藪蛇だった。
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