その恋、魔ちがってませんか?~魔女DK、後輩の恋占いに巻き込まれています!

ヤマ

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20.疲労回復するのに疲労する

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 考えられる「覚悟」の可能性がそれしか思い浮かばない。

 一応俺なりに一生懸命手伝いをしてきたつもりである。

 返せなどと言われたらたら、十倍返しが待っていると知っているのに柊に八つ当たりするレベルで落ち込む。

「……ま、今考えてもしゃーないか」

 安倍の真意は気になるが、次回また報告してもらえるだろう。

 大きな頭をもぎながら、姉の朗報に無理やり頭を切り替えた。

 わしゃわしゃと密閉空間から解き放たれた茶色の髪をかき混ぜると、少しだけ爽快な気分になる。

 今夜は人が多く、安倍が最後の客だった。

 安倍の直前まで俺は死ぬほど疲れていた。
 百年くらい眠りたかった。
 だが今は疲労は残るものの、きびきびと片付けができるほどに回復している。

 安倍の手に触れたからだ。

「陽の気は偉大だな」

 姉の朗報は確かに確かな情報だった。

 本来魔女は女性であるので魔力は陰陽でいえば陰。

 俺は男なので陽。

 魔力を使うと俺がもつ陽の気を乱してしまうのが、疲労の原因らしい。

 そこで他の陽、つまり他の男の気を分けてもらうと歪みが修正されて楽になるのだとか。

「確かに柊やほかの奴と話してるとちょっと楽になるもんな」

 会話が弾んで魔力疲れが単に誤魔化されているだけかと思っていたが、きちんと根拠があったようだ。
 姉が朗報といったのは、俺が長年対処方法を探しているのを知っていたからだ。

 魔法を使うのが好きだったし、ずっと使いたかった。

 お姉ちゃんを守りなさいと言われて育った。
 それなのに姉にかなわないどころか、たった三つしか修得できない自分が不甲斐なかった。

 幼少期、俺と姉は色素の薄い髪と目のせいで散々いじめられた。
 その時も相手を傷つけない程度の魔法を駆使して助けてくれたのは姉だった。

 戦隊もののヒーローのように格好良くやっつけられる魔力が欲しくて仕方がなかった。

 ただでさえ目立つ容姿を持つが故、地味に暮らしたいという願望に嘘はない。
 だが嫌々始めた占いの手伝いも、幸せな顔をして帰っていく客を見ているともっと力を役立てたくなってしまう。

 青井がいるので姉のボディガードはもうお役御免だ。

 対処ができるなら、力を使って人のためになることがしたい。

 三年になって初めての進路希望調査には、国立の法学部と書いた。
 特にプランはなく、つぶしがききそうだからだ。

 そんな俺が将来何かしたいと思えたのは初めてだった。

「でもなー。幼稚園児じゃあるまいし手を握らせろとか無理だろ」

 俺は水晶玉の横でうなだれた。

 傍にいるだけでも多少の効果はあるが、直接触れるのが一番なのだそうだ。
 だがいかに友達とはいえ、手をつないでくれといったところではいはいどうぞ、となる気がしない。

 とち狂ったのか? と引かれて終わりそうだ。
 俺も嫌だし。

 姉は柊はどうかと言ったが、奴は俺を弄る要素が増えたと察知して、根掘り葉掘り原因を聞いてくるだろうし論外だ。
 姉は柊の王子様の仮面に騙されている、というより青井以外何も見えていないので興味がない。

 父親は最近禿げてきているので嫌だ。
 身体的特徴のみで親を敬遠するのは我ながらどうかと思うが、思春期のなせる業である。

 親の仲睦まじさから鑑みて、弟の一人や二人望めそうだが、それも思春期なので考えないことにする。

 ――安倍なら、正体をバラせば触れさせてくれるだろうか。

 ふと優しい後輩相手にそんな考えがよぎった。

 だが、すぐに頭を振って否定する。
 彼は人妻で手いっぱいだ。

 このタロットがいつかYESを示す。

 その時、俺はもろ手――正確には前足――を挙げて喜ばなければならない。

 それがなんだかひどく難しいことのように思えた。
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