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21.俺の恋路だって
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落ち着かない。
置き勉は許されていないので、鞄に全部の教科書を詰め込みながら俺はずっとそわそわしていた。
今日の昼休み、安倍はひどく緊張していた。
最近は絶え間なく弾むようになっていた会話が、弾んでは止まり弾んでは止まり、という下手くそな卓球のごとくだった。
しかも止まった際にこちらを国宝級かと突っ込みたくなるような男前な顔で見つめてくるので、慌てて別の話題を振る羽目になった。
おそらく安倍は今日、告白をするのだ。
ものすごく気になるが、また俺がしゃしゃり出て行ってイベントが台無しになるのは避けたい。
となればそそくさと武士の合戦地――校舎――から去るのみだ。
珍しく一人で帰るという柊とともに下駄箱へ向かう。
「お前、俺との最初の会話覚えてる?」
和美がくれた九州名物ぴよこと目を合わせないよう口に運んでいる柊に問いかける。
食べ歩き良くない。
「ああ、美術の時間に下手くそな俺の似顔絵書いてる時だったよな。絵の下手さと相まってすげぇ衝撃だった」
苦悶の中に幸せを見出した絶妙な表情で柊は答えた。
その顔にドン引きするほど俺は未熟者ではない。
だが一応彼を視界に入れないようにしながら、恥ずかしいような懐かしいような思いで苦笑した。
あと俺の絵は下手なんじゃない。
時代が俺に追い付いてきてないだけだ。
「お前といると俺が目立たないから仲良くなろうぜ! だもんな。取り巻きになりたいんだろうなってやつは嫌ってほどいたけど、俺を利用するって宣言してきたやつは初めてだった」
ようやくぴよこを嚥下し終えた柊も笑う。
廊下を行く女子生徒が胸を押さえてへたり込んだ。
「その節はどうも。いやでも本当助かったぜ。お前といると俺が霞むのなんのって」
「普通悔しがるところだぞ」
俺の満面の笑みを見て、柊が「最近司が俺の胸を高鳴らせてくれない」と悔しそうに項垂れる。
そうそうドSの餌食になってたまるか。俺は鼻で笑った。
あの不良達の目には柊が俺を利用していると映っていたようだが、真実は逆だ。
何代前かは不明にしろ明らかに欧州の血が混じり目立ちまくっていた俺は、柊を隠れ蓑に平穏を得た。
ドSの餌食になっていた期間も長いので、winwinである。
「ん?」
下駄箱のふたを開けた途端、かわいいキャラクターが描かれた封筒が目に付いた。
俺が固まっているのに気が付いた柊がひょい、と横かから顔を出す。
「これ……」
「まぁそういうやつだろうな」
いや待て、落ち着け。
余裕しゃくしゃくと言った柊の横で、俺は頭をフル回転させた。
隣の奴と間違えた可能性もある。
期待した分だけ落とされるのはだいぶつらい。
少し震える指で封筒をひっくり返す。
しっかりと『佐藤司様』と宛名が綺麗な筆跡で記されていた。
おそらくだが女子の字だ。死ぬほどそわそわしながら中から便箋を取り出した。
今日の放課後、裏庭で待っていますと書かれている。
まじか。
「こういうのは行っといた方が良いぜ。あとあと面倒くさい」
勝手知ったるなんとやらで柊は俺にアドバイスをくれた。
俺が慣れない状況に頭がパンクしそうになっているのを見下ろしながら、とてつもなく良い笑顔をしている。
「じゃ、じゃあ行ってくるな」
「おう、待ってる」
はた、と裏庭へ向きかけた足を止める。
「いや別に待ってなくて良いけど」
「あー待ってないかもな。ただここで帰ると同じ趣味の人に顔向けできないというか。まぁちょっとやることやってから帰るわ」
意味が分からん。
そう言ったし態度にも出したが、相変わらず柊は真意を教えてくれない。
いつものことかと俺は無視して裏庭に向かった。
置き勉は許されていないので、鞄に全部の教科書を詰め込みながら俺はずっとそわそわしていた。
今日の昼休み、安倍はひどく緊張していた。
最近は絶え間なく弾むようになっていた会話が、弾んでは止まり弾んでは止まり、という下手くそな卓球のごとくだった。
しかも止まった際にこちらを国宝級かと突っ込みたくなるような男前な顔で見つめてくるので、慌てて別の話題を振る羽目になった。
おそらく安倍は今日、告白をするのだ。
ものすごく気になるが、また俺がしゃしゃり出て行ってイベントが台無しになるのは避けたい。
となればそそくさと武士の合戦地――校舎――から去るのみだ。
珍しく一人で帰るという柊とともに下駄箱へ向かう。
「お前、俺との最初の会話覚えてる?」
和美がくれた九州名物ぴよこと目を合わせないよう口に運んでいる柊に問いかける。
食べ歩き良くない。
「ああ、美術の時間に下手くそな俺の似顔絵書いてる時だったよな。絵の下手さと相まってすげぇ衝撃だった」
苦悶の中に幸せを見出した絶妙な表情で柊は答えた。
その顔にドン引きするほど俺は未熟者ではない。
だが一応彼を視界に入れないようにしながら、恥ずかしいような懐かしいような思いで苦笑した。
あと俺の絵は下手なんじゃない。
時代が俺に追い付いてきてないだけだ。
「お前といると俺が目立たないから仲良くなろうぜ! だもんな。取り巻きになりたいんだろうなってやつは嫌ってほどいたけど、俺を利用するって宣言してきたやつは初めてだった」
ようやくぴよこを嚥下し終えた柊も笑う。
廊下を行く女子生徒が胸を押さえてへたり込んだ。
「その節はどうも。いやでも本当助かったぜ。お前といると俺が霞むのなんのって」
「普通悔しがるところだぞ」
俺の満面の笑みを見て、柊が「最近司が俺の胸を高鳴らせてくれない」と悔しそうに項垂れる。
そうそうドSの餌食になってたまるか。俺は鼻で笑った。
あの不良達の目には柊が俺を利用していると映っていたようだが、真実は逆だ。
何代前かは不明にしろ明らかに欧州の血が混じり目立ちまくっていた俺は、柊を隠れ蓑に平穏を得た。
ドSの餌食になっていた期間も長いので、winwinである。
「ん?」
下駄箱のふたを開けた途端、かわいいキャラクターが描かれた封筒が目に付いた。
俺が固まっているのに気が付いた柊がひょい、と横かから顔を出す。
「これ……」
「まぁそういうやつだろうな」
いや待て、落ち着け。
余裕しゃくしゃくと言った柊の横で、俺は頭をフル回転させた。
隣の奴と間違えた可能性もある。
期待した分だけ落とされるのはだいぶつらい。
少し震える指で封筒をひっくり返す。
しっかりと『佐藤司様』と宛名が綺麗な筆跡で記されていた。
おそらくだが女子の字だ。死ぬほどそわそわしながら中から便箋を取り出した。
今日の放課後、裏庭で待っていますと書かれている。
まじか。
「こういうのは行っといた方が良いぜ。あとあと面倒くさい」
勝手知ったるなんとやらで柊は俺にアドバイスをくれた。
俺が慣れない状況に頭がパンクしそうになっているのを見下ろしながら、とてつもなく良い笑顔をしている。
「じゃ、じゃあ行ってくるな」
「おう、待ってる」
はた、と裏庭へ向きかけた足を止める。
「いや別に待ってなくて良いけど」
「あー待ってないかもな。ただここで帰ると同じ趣味の人に顔向けできないというか。まぁちょっとやることやってから帰るわ」
意味が分からん。
そう言ったし態度にも出したが、相変わらず柊は真意を教えてくれない。
いつものことかと俺は無視して裏庭に向かった。
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