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神を穿つ一撃
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ゼルとベルヴェットはタイタンの刺客相手に勝利を収めていたそのころ。
「っく……はぁはぁ……」
ヘイヴィアはリゼに一方的にやられ、大聖堂の屋根の上で全身から血を流しながら、膝をつき項垂れていた。
「いい加減に負けを認めたらどうかしら? あなたでは私に勝てない」
「それは……まだ、分かんねぇだろ……」
「何を言っているのかしら? 今のこの状況を見て、あなたに勝ち目があるとは思えないのだけれど」
「俺がただやられてたとでも思うのか?」
「ええ、そう思うわ。あなたはそんなに賢そうじゃないもの」
ヘイヴィアは傷口を抑えながら、ゆっくりと立ち上がり、リゼを睨みつけた。
「いい加減、リゼの体から出てけ、偽物!」
「偽物ねぇ……。そのことを知っているということは、やはりあなたはあの時、タイタンを追い出された失敗作ね」
「なんだ、お前、俺のこと知ってんのか?」
「ええ、当然。私にはタイタンに関するあらゆる情報が蓄積されているわ。もちろん、過去に失敗作として捨てられた子供のこともね」
「なら、話ははえぇ。リゼを返しやがれ」
「どうぞお好きに? 出来るものならだけど」
ヘイヴィアは地を蹴り、リゼとの距離を詰める。
「もう分かってんだよ! その額にある石を壊せばいいってなぁ!」
「分かっていても、それが出来るとは限らないわ」
リゼが指先をスッと動かすと、ヘイヴィアの足元に蛇の形をした水が噴き出る。
「“海水の大蛇(シィーサーペント)”」
その水の蛇はそのままヘイヴィアの足に絡みつき、ヘイヴィアを転倒させた。
「ぐぁ!」
受け身をとれなかったヘイヴィアは顔面を地面にこすりつける。
「力の差を思い知らせてあげる」
リゼは後ろへ大きく飛び、両手を広げる。
「“天使の滝(エンジェルフォール)”」
リゼが広げた両手を上に掲げると、巨大な水の塊がカルデネ遺跡の天井を覆った。
「私の水に溺れなさい」
そして、リゼが両手を振り下ろすと、空中に漂っていた大量の水がヘイヴィア目掛けて落ちてくる。
けど、それを見てヘイヴィアは小さく笑った。
「残念だったな。リゼの偽物。俺の魔法は土。あいにくと相性がいいもんで!」
「何を言っているの? 相性が悪いのはあなたの方でしょ?」
「へ、リゼの偽物のくせにそんなことも分かんねぇのかよ。なら、しょうがない。見せてやるよ!」
ヘイヴィアはドンっと両手を地面に押し付ける。
「“アースシールド”!」
そう叫びと共に巨大な土の壁が出来上がり、それがリゼの水を防いでいた。
「その程度の盾で防げるとでも? 私の水はまだ大量に残っているわ」
止めどなく降り注ぐリゼの水魔法。
しかし、数秒してリゼは気が付いた。
「どうして……? 私の水が消えてる……?」
リゼの疑問、それは降り注がれた水が地面にほとんど残っていないことだった。
これだけの水量を浴びれば地面は水浸するはずなのに、地面に水が溢れる様子がまるでない。
「これは……まさか!」
「なんだ、気づくのがだいぶ遅かったな」
カルデネ遺跡の天井を覆っていた全ての水を撃ち尽くしたリゼは今もなおそびえる土の壁に目をやった。
「私の魔法を吸収した……ですって?」
「そうだ。知らなかったのか? 土は水を吸うんだぜ」
「あり得ないわ! 理屈ではそうでも、あなたと私とでは圧倒的に魔力量が違う。私の水を全て吸収できるほどの土を作り出すなんて不可能……なはず、なのに……」
「ふっ、その様子。もう分かってんだろ? お前より俺の方が、魔力が高い」
「バカな! あなたは失敗作。対して私は適合率五十%オーバーの半吸血鬼。魔力の差は歴然のはず……」
「腑に落ちないって感じだな。なら、試してみるか?」
「いいでしょう。こちらも本気を出させてもらうわ」
挑発に乗ったリゼは自分の親指の腹を噛み、そこから流れた血を舐め飲み込んだ。
「適合率五十%オーバーのものにのみ与えられた力」
自分の血を摂取したリゼの体は変化していく。
さらに血のように赤く光る瞳。
闇のように黒い二枚の羽。
獣のように尖った牙。
「モードナイトメア。これが吸血鬼になった私の姿よ。これでさっきとは比べ物にならないほど、魔力が上がったわ。これであなたを……え?」
吸血鬼に変身し、勝利を確信したリゼの目の前にいたのは、彼女と同じ吸血鬼だった。
「モードナイトメア、だったか? こいつだけは使いたくなかったんだけどな」
「う、そ……。なんであなたが……?」
いつの間にか吸血鬼化していたヘイヴィアを見てリゼは動揺が隠せなかった。
「あ、あり得ない! だって、あなたは失敗作で。吸血鬼になんてなれるわけ……」
「ないって? いいや、お前は知っているはずだ。吸血鬼になる方法を」
「まさか! あなた!」
そう、適合率三%だったヘイヴィアがヴァンパイアになれるはずはない。
だが、一つだけ方法がある。
それはヘイヴィアもリゼも、いや、この世界に住むほとんどの人はその方法を知っている。
「本物の吸血鬼と契約したとでもいうの!?」
「ああ、そうだ。俺は吸血鬼と契約して、本物の吸血鬼になった」
「ば、バカな。そんなことあるわけない!」
「じゃあ、お前は世間を知らないガキ一人、瀕死の状態で世俗に放り投げられて生きていけるとでも思うのか?」
「っ! いえ、でもそんな偶然……」
「それがあるんだよ。幸か不幸か、お前らに捨てられた俺を拾ったのは俺が嫌いな吸血鬼だった。横暴で我儘で憎たらしい奴だったが、力をくれたことには感謝している。そのおかげで今日、俺は、リゼを救うことが出来る」
「吸血鬼化出来たからって調子に乗らないで! まだあなたが勝てるって決まったわけじゃないんだから!」
リゼは勢いよく右手を上げる。
すると、地面から水で出来た巨大な鮫が現れた。
「“海鮫の噛砕(シャーク・デプスヴァイト)”!」
鮫は大きな口を開け、ヘイヴィアに襲い掛かる。
「“アースピラー”」
ヘイヴィアが両手を合わせると、頭上から無数の石柱が降ってくる。
その石柱が鮫の体を貫き、動きを封じる。
「これならどう! “海皇の鉄拳”」
リゼは水の拳を作り、ヘイヴィアに向かって振るう。
「“アースインパクト”」
ヘイヴィアはそれに合わせて、岩で出来た拳を作り相殺させる。
「小技じゃ埒が明かないわね。一気に決めるわ。“海皇の叛乱《アクア・リベリオン》”」
じれったくなったリゼは先ほど見せた大量の水を再び生成し、今度は津波のようにしてヘイヴィアに攻撃する。
「だったら、こっちも同等のものをぶつけるだけだ。“アース・リベリオン”」
ヘイヴィアはリゼに対抗して巨大な砂塵を生み出した。
両者の魔法は凄まじい音を立ててぶつかり合う。
「吹き飛ばしなさい!」
「吸収しろ!」
巨大な津波と砂塵は一歩も譲らず拮抗していた。
しかし、数秒すると……。
「っく」
先に苦悶の表情をあらわにしたのはリゼだった。
「水が吸われてく……」
ヘイヴィアの放った砂塵にリゼの津波は吸収され、徐々に小さくなっていく。
「っ!」
このままではまずいとリゼは横に高く飛んだ。
そのすぐあと、津波は全て消え去り、先ほどまでリゼがいた場所を砂塵が通り過ぎて行った。
「どうしてここまで、魔力の差があるの……?」
「どうだ? 参ったか? 参ったらさっさとリゼを解放しろ」
「いいえ、まだよ。まだ、私の最大魔法が残ってる」
「いいぜ、じゃあ、そいつを返り討ちにしてリゼを返してもらう!」
リゼは上空に飛び、両手を合わせ、魔力を込める。
「これが私の最大魔法……」
先ほどと同じように地面から膨大な水が溢れ出てきており、それがリゼの飛んでいる高さまで来ると、その形を変容させていく。
「“海神の激昂”!」
リゼが作り出したのは超巨大な神の化身。見た目は髭を蓄えたお爺さんだが、その迫力は神の名を関するにふさわしいものだった。
そして、その神の化身の右手には三叉の槍。
「神……神か……。いいぜ、仲間を守る為なら、神だって倒して見せる!」
ヘイヴィアが右手を地面につけると、巨大な魔方陣が浮かび上がった。
「な! それは眷属召喚!? どうしてあなたがそれを出来るの!? 生物の隷属は吸血鬼の中でもごく一部しかできないはずなのに!」
「ああそうだ。そう簡単には出来ない。だから、俺はこいつ一体しか持ってない。だが、お前を倒すにはこれで十分!」
そうして、ヘイヴィアは左手で傷口から流れる血を拭い取り、魔方陣に垂らす。
「それは大地の支配者。悠久の時を駆ける大いなる翼を広げ顕現せよ」
ヘイヴィアが詠唱を開始すると、魔方陣がそれに呼応するようにまばゆく光りだす。
「眷属召喚! 岩窟竜アルビオン!」
その名を口にするとともに、魔方陣から巨大な岩の塊が出現する。
「頼むぜ、相棒」
そう言って、ヘイヴィアが岩の塊をポンっと叩くと、岩がはじけ飛び、中から一頭のドラゴンが姿を現した。
「ぐがああああああああああああああ!!!」
褐色のドラゴンが雄叫びを上げると大気が震えた。
「なん、なの……一体……」
リゼは褐色のドラゴン、アルビオンの姿を見て冷や汗をかいた。
「ドラゴン……ですって……? 生物界の頂点に立つ種族が隷属されるなんて聞いたことないわ。そもそも、その姿を見ることすら稀の伝説級の存在。それがなんであんな奴に……?」
動揺するリゼをしり目に、ヘイヴィアはアルビオンの頭の上に乗る。
「俺の全魔力をくれてやる。あれを一撃で倒すぞ」
「いいわ。たとえ、ドラゴンが相手でもあなたを倒すことには変わりない」
リゼが手を振り下ろすのに合わせ水の巨人も槍を振り下ろした。
「行くぞ、アルビオン。最大火力だ! “岩窟竜の咆哮”!」
リゼの攻撃に合わせ、アルビオンが口から砂塵のブレスを吐いた。
「はあああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
「いっけええええええええええええええええ!!!!!!!!」
二人の攻撃がぶつかり合い、数秒拮抗する。
しかし……。
ピキっ。
「なっ!」
水で出来た槍にひびが入り、その直後、砂塵により粉々に砕かれた。
「ま、まずいっ!」
リゼの魔法を破壊した砂塵はそのまま術者のリゼへと向かってくる。
「間に合わ……」
避けきれない。そう悟った、リゼは一瞬目をつむった。
「え?」
しかし、砂塵はリゼの目の前で大きく逸れ、上空へと飛んで行った。
「外した……?」
リゼは何が起きたのか分からず、砂塵が飛んで行った方へと意識を持っていかれた。
「いい加減、目を覚ましやがれ」
「っ!」
その一瞬の隙をついて、ヘイヴィアはリゼの目の前まで飛んできていた。
「リゼぇ!!!!!!」
そして、その勢いのまま、リゼの額目掛けて頭突きをかました。
「ぁ……」
パリン! と音を立て、リゼの額に埋め込まれた石が砕け散った。
「へへ、俺の勝ちだ……ぜ」
頭突きを食らったリゼ、それと魔力を使い果たしたヘイヴィアは二人とも意識を失い上空から落下する。
「…………」
このまま頭から落下すれば二人はただでは済まない。
だが、ヘイヴィアの頭が地面に落ちるその寸前だった。
地面から水が噴き出て二人を包み込んだ。
そして、水がパンっとはじけ飛び雨のように降り注ぐ。
その雨の中、気を失ったヘイヴィアの頭を膝の上に乗せ、撫でる少女の姿があった。
「ちゃんと聞こえてたよ。ヘイヴィアの声」
少女は嬉しそうに笑いながら、涙を流す。
「ありがとう。私の勇者様」
「っく……はぁはぁ……」
ヘイヴィアはリゼに一方的にやられ、大聖堂の屋根の上で全身から血を流しながら、膝をつき項垂れていた。
「いい加減に負けを認めたらどうかしら? あなたでは私に勝てない」
「それは……まだ、分かんねぇだろ……」
「何を言っているのかしら? 今のこの状況を見て、あなたに勝ち目があるとは思えないのだけれど」
「俺がただやられてたとでも思うのか?」
「ええ、そう思うわ。あなたはそんなに賢そうじゃないもの」
ヘイヴィアは傷口を抑えながら、ゆっくりと立ち上がり、リゼを睨みつけた。
「いい加減、リゼの体から出てけ、偽物!」
「偽物ねぇ……。そのことを知っているということは、やはりあなたはあの時、タイタンを追い出された失敗作ね」
「なんだ、お前、俺のこと知ってんのか?」
「ええ、当然。私にはタイタンに関するあらゆる情報が蓄積されているわ。もちろん、過去に失敗作として捨てられた子供のこともね」
「なら、話ははえぇ。リゼを返しやがれ」
「どうぞお好きに? 出来るものならだけど」
ヘイヴィアは地を蹴り、リゼとの距離を詰める。
「もう分かってんだよ! その額にある石を壊せばいいってなぁ!」
「分かっていても、それが出来るとは限らないわ」
リゼが指先をスッと動かすと、ヘイヴィアの足元に蛇の形をした水が噴き出る。
「“海水の大蛇(シィーサーペント)”」
その水の蛇はそのままヘイヴィアの足に絡みつき、ヘイヴィアを転倒させた。
「ぐぁ!」
受け身をとれなかったヘイヴィアは顔面を地面にこすりつける。
「力の差を思い知らせてあげる」
リゼは後ろへ大きく飛び、両手を広げる。
「“天使の滝(エンジェルフォール)”」
リゼが広げた両手を上に掲げると、巨大な水の塊がカルデネ遺跡の天井を覆った。
「私の水に溺れなさい」
そして、リゼが両手を振り下ろすと、空中に漂っていた大量の水がヘイヴィア目掛けて落ちてくる。
けど、それを見てヘイヴィアは小さく笑った。
「残念だったな。リゼの偽物。俺の魔法は土。あいにくと相性がいいもんで!」
「何を言っているの? 相性が悪いのはあなたの方でしょ?」
「へ、リゼの偽物のくせにそんなことも分かんねぇのかよ。なら、しょうがない。見せてやるよ!」
ヘイヴィアはドンっと両手を地面に押し付ける。
「“アースシールド”!」
そう叫びと共に巨大な土の壁が出来上がり、それがリゼの水を防いでいた。
「その程度の盾で防げるとでも? 私の水はまだ大量に残っているわ」
止めどなく降り注ぐリゼの水魔法。
しかし、数秒してリゼは気が付いた。
「どうして……? 私の水が消えてる……?」
リゼの疑問、それは降り注がれた水が地面にほとんど残っていないことだった。
これだけの水量を浴びれば地面は水浸するはずなのに、地面に水が溢れる様子がまるでない。
「これは……まさか!」
「なんだ、気づくのがだいぶ遅かったな」
カルデネ遺跡の天井を覆っていた全ての水を撃ち尽くしたリゼは今もなおそびえる土の壁に目をやった。
「私の魔法を吸収した……ですって?」
「そうだ。知らなかったのか? 土は水を吸うんだぜ」
「あり得ないわ! 理屈ではそうでも、あなたと私とでは圧倒的に魔力量が違う。私の水を全て吸収できるほどの土を作り出すなんて不可能……なはず、なのに……」
「ふっ、その様子。もう分かってんだろ? お前より俺の方が、魔力が高い」
「バカな! あなたは失敗作。対して私は適合率五十%オーバーの半吸血鬼。魔力の差は歴然のはず……」
「腑に落ちないって感じだな。なら、試してみるか?」
「いいでしょう。こちらも本気を出させてもらうわ」
挑発に乗ったリゼは自分の親指の腹を噛み、そこから流れた血を舐め飲み込んだ。
「適合率五十%オーバーのものにのみ与えられた力」
自分の血を摂取したリゼの体は変化していく。
さらに血のように赤く光る瞳。
闇のように黒い二枚の羽。
獣のように尖った牙。
「モードナイトメア。これが吸血鬼になった私の姿よ。これでさっきとは比べ物にならないほど、魔力が上がったわ。これであなたを……え?」
吸血鬼に変身し、勝利を確信したリゼの目の前にいたのは、彼女と同じ吸血鬼だった。
「モードナイトメア、だったか? こいつだけは使いたくなかったんだけどな」
「う、そ……。なんであなたが……?」
いつの間にか吸血鬼化していたヘイヴィアを見てリゼは動揺が隠せなかった。
「あ、あり得ない! だって、あなたは失敗作で。吸血鬼になんてなれるわけ……」
「ないって? いいや、お前は知っているはずだ。吸血鬼になる方法を」
「まさか! あなた!」
そう、適合率三%だったヘイヴィアがヴァンパイアになれるはずはない。
だが、一つだけ方法がある。
それはヘイヴィアもリゼも、いや、この世界に住むほとんどの人はその方法を知っている。
「本物の吸血鬼と契約したとでもいうの!?」
「ああ、そうだ。俺は吸血鬼と契約して、本物の吸血鬼になった」
「ば、バカな。そんなことあるわけない!」
「じゃあ、お前は世間を知らないガキ一人、瀕死の状態で世俗に放り投げられて生きていけるとでも思うのか?」
「っ! いえ、でもそんな偶然……」
「それがあるんだよ。幸か不幸か、お前らに捨てられた俺を拾ったのは俺が嫌いな吸血鬼だった。横暴で我儘で憎たらしい奴だったが、力をくれたことには感謝している。そのおかげで今日、俺は、リゼを救うことが出来る」
「吸血鬼化出来たからって調子に乗らないで! まだあなたが勝てるって決まったわけじゃないんだから!」
リゼは勢いよく右手を上げる。
すると、地面から水で出来た巨大な鮫が現れた。
「“海鮫の噛砕(シャーク・デプスヴァイト)”!」
鮫は大きな口を開け、ヘイヴィアに襲い掛かる。
「“アースピラー”」
ヘイヴィアが両手を合わせると、頭上から無数の石柱が降ってくる。
その石柱が鮫の体を貫き、動きを封じる。
「これならどう! “海皇の鉄拳”」
リゼは水の拳を作り、ヘイヴィアに向かって振るう。
「“アースインパクト”」
ヘイヴィアはそれに合わせて、岩で出来た拳を作り相殺させる。
「小技じゃ埒が明かないわね。一気に決めるわ。“海皇の叛乱《アクア・リベリオン》”」
じれったくなったリゼは先ほど見せた大量の水を再び生成し、今度は津波のようにしてヘイヴィアに攻撃する。
「だったら、こっちも同等のものをぶつけるだけだ。“アース・リベリオン”」
ヘイヴィアはリゼに対抗して巨大な砂塵を生み出した。
両者の魔法は凄まじい音を立ててぶつかり合う。
「吹き飛ばしなさい!」
「吸収しろ!」
巨大な津波と砂塵は一歩も譲らず拮抗していた。
しかし、数秒すると……。
「っく」
先に苦悶の表情をあらわにしたのはリゼだった。
「水が吸われてく……」
ヘイヴィアの放った砂塵にリゼの津波は吸収され、徐々に小さくなっていく。
「っ!」
このままではまずいとリゼは横に高く飛んだ。
そのすぐあと、津波は全て消え去り、先ほどまでリゼがいた場所を砂塵が通り過ぎて行った。
「どうしてここまで、魔力の差があるの……?」
「どうだ? 参ったか? 参ったらさっさとリゼを解放しろ」
「いいえ、まだよ。まだ、私の最大魔法が残ってる」
「いいぜ、じゃあ、そいつを返り討ちにしてリゼを返してもらう!」
リゼは上空に飛び、両手を合わせ、魔力を込める。
「これが私の最大魔法……」
先ほどと同じように地面から膨大な水が溢れ出てきており、それがリゼの飛んでいる高さまで来ると、その形を変容させていく。
「“海神の激昂”!」
リゼが作り出したのは超巨大な神の化身。見た目は髭を蓄えたお爺さんだが、その迫力は神の名を関するにふさわしいものだった。
そして、その神の化身の右手には三叉の槍。
「神……神か……。いいぜ、仲間を守る為なら、神だって倒して見せる!」
ヘイヴィアが右手を地面につけると、巨大な魔方陣が浮かび上がった。
「な! それは眷属召喚!? どうしてあなたがそれを出来るの!? 生物の隷属は吸血鬼の中でもごく一部しかできないはずなのに!」
「ああそうだ。そう簡単には出来ない。だから、俺はこいつ一体しか持ってない。だが、お前を倒すにはこれで十分!」
そうして、ヘイヴィアは左手で傷口から流れる血を拭い取り、魔方陣に垂らす。
「それは大地の支配者。悠久の時を駆ける大いなる翼を広げ顕現せよ」
ヘイヴィアが詠唱を開始すると、魔方陣がそれに呼応するようにまばゆく光りだす。
「眷属召喚! 岩窟竜アルビオン!」
その名を口にするとともに、魔方陣から巨大な岩の塊が出現する。
「頼むぜ、相棒」
そう言って、ヘイヴィアが岩の塊をポンっと叩くと、岩がはじけ飛び、中から一頭のドラゴンが姿を現した。
「ぐがああああああああああああああ!!!」
褐色のドラゴンが雄叫びを上げると大気が震えた。
「なん、なの……一体……」
リゼは褐色のドラゴン、アルビオンの姿を見て冷や汗をかいた。
「ドラゴン……ですって……? 生物界の頂点に立つ種族が隷属されるなんて聞いたことないわ。そもそも、その姿を見ることすら稀の伝説級の存在。それがなんであんな奴に……?」
動揺するリゼをしり目に、ヘイヴィアはアルビオンの頭の上に乗る。
「俺の全魔力をくれてやる。あれを一撃で倒すぞ」
「いいわ。たとえ、ドラゴンが相手でもあなたを倒すことには変わりない」
リゼが手を振り下ろすのに合わせ水の巨人も槍を振り下ろした。
「行くぞ、アルビオン。最大火力だ! “岩窟竜の咆哮”!」
リゼの攻撃に合わせ、アルビオンが口から砂塵のブレスを吐いた。
「はあああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
「いっけええええええええええええええええ!!!!!!!!」
二人の攻撃がぶつかり合い、数秒拮抗する。
しかし……。
ピキっ。
「なっ!」
水で出来た槍にひびが入り、その直後、砂塵により粉々に砕かれた。
「ま、まずいっ!」
リゼの魔法を破壊した砂塵はそのまま術者のリゼへと向かってくる。
「間に合わ……」
避けきれない。そう悟った、リゼは一瞬目をつむった。
「え?」
しかし、砂塵はリゼの目の前で大きく逸れ、上空へと飛んで行った。
「外した……?」
リゼは何が起きたのか分からず、砂塵が飛んで行った方へと意識を持っていかれた。
「いい加減、目を覚ましやがれ」
「っ!」
その一瞬の隙をついて、ヘイヴィアはリゼの目の前まで飛んできていた。
「リゼぇ!!!!!!」
そして、その勢いのまま、リゼの額目掛けて頭突きをかました。
「ぁ……」
パリン! と音を立て、リゼの額に埋め込まれた石が砕け散った。
「へへ、俺の勝ちだ……ぜ」
頭突きを食らったリゼ、それと魔力を使い果たしたヘイヴィアは二人とも意識を失い上空から落下する。
「…………」
このまま頭から落下すれば二人はただでは済まない。
だが、ヘイヴィアの頭が地面に落ちるその寸前だった。
地面から水が噴き出て二人を包み込んだ。
そして、水がパンっとはじけ飛び雨のように降り注ぐ。
その雨の中、気を失ったヘイヴィアの頭を膝の上に乗せ、撫でる少女の姿があった。
「ちゃんと聞こえてたよ。ヘイヴィアの声」
少女は嬉しそうに笑いながら、涙を流す。
「ありがとう。私の勇者様」
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一文無しで異世界へ放り出された日本人・ナギ。
彼が持つ唯一の武器は、万物を解析し組み替える【鑑定】と【等価交換】のスキルだった。
ナギは行き倒れ寸前で出会った、最強の女騎士エリスと出会う。現代知識とチート能力を駆使して愛する家族と仲間たちのために「至福の居場所」を築き上げる、異世界拠点ファンタジーストーリー!
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
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魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
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