世界最強の幼馴染に養われている。

結生

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エルフ王女誘拐事件Ⅰ

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「うあぁーー! またバイト落ちたぁ~!」


 俺は人目も気にせず路上で地面に手を付き、うなだれる。
 俺が受けたバイトはどこにでもある飲食のチェーン店の一つ。
 面接途中、店長さんからもう帰っていいよと言われた。
 てか、あり得なくない? 普通、「あ、この子ダメだな」って思ってもその場では言わないじゃん。とりあえず最後まで面接するじゃん。それで後日、お祈りメール出すじゃん。
 なに? それすら面倒ってこと? じゃあもうあれだよ。そんな店長のいるところで働きたくないよ。落ちてよかったわ! やったね!


「うし!」


 落ち込んだ心を自分自身で慰め気持ちを持ち直す。
 とは言えだ。


「これで連続不採用記録100回目……。バイトの面接むず過ぎ」


 このままじゃ永遠に無職だな。そろそろ20歳になるし、いい加減に職を見つけたいんだけどな。
 何がダメだ? 名前か? 東雲伊織しののめいおりって名前がダメなのか? 確かに東雲って知ってる人じゃなきゃ読めないもんな。バイト仲間や客が名札見て名前読めないから落とされたのか。そうか、じゃあ仕方ないな。
 とはならねぇよ、バーカ。
 いやまぁ、なんで落とされたのかは明白なんですけどね。


「はぁ~……ホント、この世界は俺たち無能力者レムナントに容赦ないよなぁ」


 この世界の人間は何かしらの異能力を持って生まれる。
 その異能力の種類は火や風を起したりする無から有を作るものから、腕力や脚力を上げる身体能力を強化するものまで多種多様に存在する。
 進学や就職ではその人の持つ異能力までもが評価対象となる。
 けれど、そんな中、ごく稀に異能力を持たずに生まれてくる子供も存在する。それは人口の1%にも満たない。
 そんな無能力者のことを人は侮蔑の意味を込めて、レムナントと呼んでいる。
 レムナントとして生まれたものの人生はハードモードどころの話ではない。
 レムナントと言うだけで学校には通えず、職に就くことも出来ない。
 それだけで済めばいいが、俺なんかはレムナント分かった瞬間、親に捨てられた。
 そうした人生に耐え切れず、来世に期待して自ら命を絶つものもいる。


「てか、てかさぁ、飲食店のバイトに異能力とかいらんくねぇ? あっても使いどこ無いだろ。無くても接客くらい出来んだろ。ふざけんな」


 あ、ダメだ。なんかイラついてきた。
 そうだよ。そもそも異能力関係ないじゃん。なんで俺落とされたんだよ。
 レムナントは人間じゃないってか? あ?
 こんな世界は間違っている。
 そう思うのは俺だけだろうか?
 多分、そうだろうな。俺みたいなレムナントくらいだろうな。
 異能力を持っている連中からしたら何一つ不便なことはないもんな。
 数百年前までは異能力なんて存在しなかったし、こんな迫害みたいなことはなかったと聞く。
 この世界は変わってしまった。


「元凶はあれだよなぁ」


 俺は恨めし気に視線を上に向ける。
 そこには天を貫くほどの高さを誇る超巨大建造物が悠々と構えていた。
 高さ1500メートル。直径1キロ。外面を真っ白く塗りたくったその建造物の名はアウローラ。
 旧東京スカイツリーを元に建設されたそれは無数に存在する異世界を繋ぎ、自由に行き来することを可能にした施設である。
 アウローラの登場により、世界は大きく変化を遂げた。
 異世界への旅行や別世界からの移住民、未知の物質や技術の輸入。
 結果、この世界はどの異世界よりも先を行く先進世界となった。
 ありとあらゆる世界の中心となる。そういう意味を込められて付けられたこの世界の名はセントラル。

 で、このアウローラの登場と異能力がどう関わってくるかというと、異世界からの移民者の存在が大きく関係する。
 移民者なんて一纏めにして言ったが、その種族は多種多様。
 獣人、エルフ、ドワーフ、悪魔などなど、上げたらきりがない。だから、俺たち人間はそれら移民者を纏めて魔族と呼んでいる。
 それで、その魔族なんだが、どれもこれも生物としての能力が人間を超えているときた。
 そうなれば、人間の存在など不要となってしまう。
 それで困った俺たちのご先祖様たちは人間が魔族に対抗する手段を模索した。
 そうして開発されたのが、遺伝子改造によって異能力を植え付けるというものだった。
 いきなり異能力だなんて飛躍しすぎだと思うか? 俺も思う。
 けど、そこにどんな経緯があったのかなんて俺たちは知らない。だって、大昔のことなんだもん。記録も残ってない。
 それでも遺伝子情報は書き換えられているので、後から生まれてくる俺たちは不思議な異能力を持っている。……いや、違うな。俺たちは違う。俺は持ってないもん。正確にはほとんどの人類だな。
 ま、結局何が言いたいかというと、アウローラが無ければこの異能力で差別される社会は生まれなかったってことだ。

 だから、俺は恨む。アウローラを。
 ……って言うてもそこまであれだよ? 親の仇みたいに恨んでたりしないよ? 明日、隕石が降ってきて壊れないかなぁ~くらいにしか思ってないからね?
 でも、隕石くらいじゃ壊れないんだけどね。
 あの超高層タワーは地下300メートルから最上階まで貫く3本の支柱によって支えられている。
 この支柱には高度な魔法が施されており、震度7の地震すらものともしない。また、外壁にも防御魔法がなされており、例え隕石が降ってきたとしても傷一つつかないようになっている。
 科学と魔法の粋を結集させて出来たアウローラは他種族の共存を示すセントラルの象徴ともいうべき存在になっている。
 なので、人前で下手にアウローラぶっ壊れないかなぁ~。なんて、言ったもんなら集団リンチにあっても文句は言えない。


「ん……メールか?」


 視界の右上に通知のポップアップが表示される。
 いや、正しくはコンタクトレンズ越しに表示されたAR画面だ。
 昔はスマホなんて言う端末で連絡を取り合っていたらしいが、現在の主流はARコンタクトである。
 俺は空中に浮かぶ通知のポップアップをタップし、メールを開く。
 差出人は現在同居中の幼馴染みからである。


『はろはろ~。伊織今どこ? 暇だったらアウローラの東側に来てちょ。トトールってコーヒショップの近くにいるから。それじゃヨロ!』


 とそんな感じのことが書かれていた。
 原文ではもっとやかましい絵文字かなんかが使われているんだろうが、読みにくいことこの上ないので、その辺は自動で削除するように設定している。


「アウローラかぁ~」


 今しがたディスったばかりなのであまり行きたくはない。
 しかし、俺はこの幼馴染みには逆らえない。
 何故なら、家賃から生活費まで全部面倒を見てもらっているからだ。……いや、ヒモではない。え? ヒモじゃないよね。
 自分で言ってて不安になってきた。
 とりま、一人で考えてても結論は出ないので頭の隅へ追いやる。


「ここからそんな遠くないし、行くしかないかぁ」


 電車で二駅ほどなので、幼馴染みの恨みを買ってまで行きなくないって距離じゃない。
 俺は近くの駅に入り、電車に乗って目的へと向かう。
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