世界最強の幼馴染に養われている。

結生

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探偵の初任務Ⅴ

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 念のため近くにDDD局員がいないかしっかりと確かめてから、水奈月宅の前までやってきた。


「ここに来た理由は聞きましたけど、どうやって入るんですか? 鍵かかってますけど」
「鍵って言っても電子ロックだろ。こんなものないのと一緒だ」


 俺はハッキングして、電子ロックを解除した。


「あの、これ犯罪じゃ……」
「合法的な捜査は警察の仕事だ。こうでもしなきゃ探偵は仕事なんか出来ねぇよ。それに、人の命がかかってんだ。文句言うな」


 中に誰かいる可能性がある為、ゆっくりとドアを開け、音を立てずに中に入る。


「誰もいなさそうだな」
「そうですね」


 朱莉は俺の後ろに隠れながらひょこっと顔を出す。


「それでここで何を探せばいいんですか?」
「なんか怪しいやつ」
「適当ですね」
「些細なことでいい。今は少しでも情報が欲しいからな」
「って言っても、私はこの家には何回か来てて不思議に思ったことなんてないですよ?」
「じゃあ、お前が来てた時と今のこの家とで違うとこがあったら教えてくれ」
「車がなくなっていました」
「んなことは知ってる」
「人が誰もいません」
「…………ふざけているのか?」
「だって、東雲さんが些細なことでもいいからって言ったんじゃないですか!」
「限度ってもんがあんだろ!」


 この子、頭良さそうな感じしてたけど、もしかして天然入ってる?


「とりあえず、俺は1階を見て周るから、お前は2階を先に見てくれ」
「……分かりました」


 少し拗ねていたようにも見えたが、大人しく2階へと上がっていった。
 さて、俺の方も手当たり次第に調べていくか。


「にしても、ホントバカでかい家だ。一部屋見るのも一苦労しそうだ」



--------------------------------------------------------------------------



「全くもう、あの人は何なんですか」


 水奈月家の2階に上がってきた朱莉は不貞腐れていた。


「自分で言えって言ったくせに言ったら怒るし」


 先ほどの伊織とのやり取りにまだ納得が言っていないようだった。


「調べるって言ってもどこから手を付けていいか分からないし、2階で私が入ったことあるのは拓登君の部屋だけだから、そこに行ってみようかな」


 階段を上がって一番奥の部屋。そこの扉に拓登と書かれたプレートが飾ってあった。


「ごめんね~、ちょっと入らせてもらうよ~」


 朱莉はゆっくりと扉を開き、中に入る。


「ん~、特に変わった様子は……」


 ガタッ。
 ないと言おうとした瞬間後ろから物音がした。


「なんですか? もうそっちは探し終わったんですか?」


 その音は伊織が出したものだと思った朱莉は警戒心を抱かず、後ろを振り返ろうとした。


「っ!」


 しかし、後ろから口元を押さえられ、声が出せなくなってしまった。
 そして、そのまま段々と意識が遠くなり……………………………。



--------------------------------------------------------------------------



「こっちも何もないか」


 リビング、ダイニング、寝室、客間と見てきたが、これと言った情報は見つからなかった。
 普通の金持ちの家って感じだ。


「次はっと」


 俺はまだ見ていない部屋の扉を開け中に入る。


「防音室か?」


 その部屋だけ明らかに他の部屋と内装が異なっていた。
 壁には吸音素材のパネルが貼ってあり、部屋の中央に大きなグランドピアノだけがぽつんと置かれていた。


「誰かピアノでも習ってたのか?」


 何気なくピアノに触れ、少しだけ音を鳴らす。


「?」


 すると、少しだけ違和感があった。


「音が……なんか変な気がするけど、うまく言葉に出来ないな」


 ピアノ自体の音に問題ある感じではない。
 音の反響? 多分、そこだと思う。


「壁には問題なさそう」


 コンコンと壁を1枚1枚叩きながら、おかしなところがないか確認していく。


「となると後は天井か床になるが」


 天井は届かないから後回し。まずは床。
 トントンと足で床の板を1枚づつ叩いていく。


「ん?」


 1枚だけ、明らかに音が違う板があった。


「これか」


 その板を入念に調べる。


「材質に変化はない。この音が軽い感じ、中が空洞になっているのか?」


 そうなると多分地下室への入り口っぽいが。
 問題はどうやって開けるかだな。
 板の周りをあちこち触っても何も変化はない。


「この隠し扉は指紋で識別しているのか、あるいは魔法か異能力の類ってところか?」


 そうなるとこっちには手の打ちようがない。


「いや……」


 朱莉の能力を使えば、この板を小さくすることが出来るかもしれない。
 そうと決まれば、早速朱莉を呼びに……。


「う゛……ぐぁ……」


 立ち上がろうとした瞬間、俺の左肩が何かに撃ち抜かれた。


「い、いでぇ!!!!!!」


 痛い痛い痛いイタイイタイイタイイタイ!!!!!!!
 左腕がなくなっちまったのかと錯覚してしまうほどの激痛。
 俺は撃ち抜かれた左腕を押さえ、立ち上がる。


「んだてめぇは」


 俺は防音室の入り口に向かって叫ぶ。
 そこにはいつの間にかいた男が2人。


「随分威勢がいいねぇ。もう一発入れとくか?」


 グラサンをかけた俺と同じくらいの年の少年が人差し指を立てる。
 そして、その人差し指の先から淡い光が発せられる。


「……レーザーか」
「ご明察」


 今しがた、俺の左肩を打ち抜いたのはこいつの能力。
 恐らく、指先からレーザーのようなものを放出出来るのだろう。馬鹿みたいに痛いわけだ。


「てめぇら、何もんだ?」
「それはこっちが聞きたいのよ。勝手に人んち上がり込んでおいて何者だはないでしょ?」


 相手言い分も一理ある。
 当言うか確かに勝手に中に入り込んだのは俺たちなんだから、向こうからしたら俺たちが不審者なんじゃ……ん? 俺たち?
 そこでここにはもう一人いることを思い出した。


「おい、高校生くらいの女の子を見なかったか?」
「ああ、見たともほれ」


 そうして、男が指差した方、もう一人の男が朱莉を小脇に抱えていた。


「おい、おめぇら! そいつを放しやがれ!」
「そいつは出来ない相談だ」
「がぁ!」


 レーザー男に頭を鷲掴みされ、そのまま地面に顔を叩きつけられた。
 そこで、俺はこいつらに反抗する意思がなくなった。
 というか、暴れたところで何とかなる相手じゃない。


「連れていくぞ」


 そう言って、レーザー男は床を軽く撫でる。
 すると、床がズレ、地下への扉が現れた。
 ……やはり、指紋の類か。
 伊織たちは明らかに怪しい2人組の男たちに担がれ、地下へと連れていかれるのだった。
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