世界最強の幼馴染に養われている。

結生

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未来を見通す力

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 俺もその可能性には至っていた。けど、絶対誤解なんだよなぁ。


「正確には“原神の遺産”が目当てだろ」
「そうね。紫苑ちゃんの話を聞く限り、私もそうなのかなって思っちゃうもの。計算によって未来すら見通せると言われる“原神の遺産”の1つ。“神の頭脳”」
「でも、俺は……」
「知っているわ。今のあなたの力は努力で手に入れたものなんでしょ?」
「え?」


 なんでこの人そんなこと知ってんの?


「紫苑ちゃんから聞いたわ。無能力者でも出来ることがあるはずって、一生懸命勉強していたんでしょう?」
 あいつ、マジで余計なことしか喋んねぇな。
「ま、でも、そう言うことだ。これでも毎度毎度必死に頭回してんだ。異能力とかで楽勝みたいなことは出来ないんだ。下位互換って言ってもいい」
「その自信のなさが、正確な推理を妨げてるのね」
「いや、俺もバカじゃねぇ。アンリエッタがやろうとしていたことは分かっている。能力者狩りと政治家暗殺事件は俺の力を試すためだったんだろう」


 能力者狩りの時は朱莉の母親に俺の情報でも流したのだろう。
 政治家暗殺事件に関しては結構手が込んでいた。恐らく、紫苑から箱根に旅行へ行くと聞いた時からこの計画を練ったのだろう。
 あからさまにヴェスパーが関わっていると思わせて、ヴィーナス・ヴァレットを疑うように仕向け、この事件の偶然性からクロエさんが俺たちをわざとこの旅行へ来させたのだと錯覚させようとした。
 レオナに関してはDDD本部襲撃事件の時に得た情報を利用したんだろう。
 この事件を解決できなければ、DDDは解体され、解決できたならば俺の力が証明される。どっちに転んでもアンリエッタにとっては美味い事件だったわけだ。


「ただ、正直、あんまり自信がない。だから、確証を得るために手を借りたい」
「別にその必要はないと思うんだけど? DDDの壊滅を狙っているのは明らかだし、アンリエッタちゃんが犯人だと分かっているんだから、紫苑ちゃんに頼めば捕まえるのにも苦労しないだろうし」
「いや、それじゃあダメだ」
「ふ~ん。ま、いいわ。何か考えがあるようだし。協力してあげる。って言っても、どうせ協力しなきゃ私の正体バラされちゃうんでしょ?」
「そういうこと。話が早くて助かる」


 俺はクロエさんに今回の作戦を伝え、今後の行動を確認する。


「問題ないわ。と言いたいところだけど、1つだけ。ヴェスパーにアウローラを襲わせられるか分からないわよ?」
「え? いや、だってあいつらあんたの眷属だろ? 何でも言うこと聞くだろ」
「いいえ、違うわよ。彼らが勝手に言ってるだけよ? 私は会ったことないわ」
「じゃあ、あいつら何なんだよ。吸血鬼ですらないのか?」
「セントラルの異能力技術を他の世界が実験して、その結果出来た、不良品らしいわ」
「にしても、吸血鬼の能力者に偏ってね?」
「吸血鬼ってより、不老不死の能力が欲しかったみたい。ちなみに彼らは私に近づくために吸血鬼っぽくしたいから、それらしい魔法しか使わないって情報もあるわ」
「マジでヴィーナス・ヴァレットのファンクラブじゃねぇか! いいよもう、あんたが言えばあいつら泣いて何でもしてくれるって!」


 と、言うことで、結局クロエさん経由でヴェスパーをアウローラへ呼び出す方向で決まった。クロエさんの正体がバレないように、伝書鳩ならぬ伝書コウモリで一方的に用件だけ伝えることにした。


------------------------------------------------------------------


「っち、なんでアタシが犯人だと分かったんだよ」


 アンリエッタは開き直り本性丸出しで喋り始めた。
 大丈夫ですか? お嬢様がそんなヤンキーみたいな感じになっちゃって大丈夫ですか?


「色々とあるが、一番の決め手になったのはあんたが俺にヴェスパーの情報を話したことだ」
「やっぱそれか。あれは確かにミスだった。てめぇがアーカイブを見てるとは知らなかった。先にその情報を聞いてから、話すか判断するべきだった」


 大使館に行ったあの日、アンリエッタの偽装誘拐事件の犯人はヴェスパーだと聞かされた。しかし、アーカイブを確認した時、犯人たちがヴェスパーの一員であることが判明したのは事件から数日たった後だった。だから、本来であればあの時、アンリエッタは犯人の正体を知らないはずなのだ。
 アンリエッタは俺たちにヴェスパーへ意識を向ける為、そのことを話してしまったのだ。俺がアーカイブを閲覧できるとは知らずに。


「他にもあんたが黒幕だって、話をした方がいいか?」
「必要ない。それぐらいで来て当然だ。“神の頭脳”を持つてめぇならな」


 やっぱり、こいつは俺が異能力を使っていると思っているのか。
 アンリエッタに銃弾を撃ち込んだ時、すぐにアリアが俺を殺さなかったあの反応を見るに、アンリエッタはアリアに俺を殺さないように命令していたのだろう。
 そう考えると、こいつの目的の1つは俺で確定だ。


「で、これからどうする? 降参でもするか?」
「バカ言ってんな。力ずくでてめぇを連れてく。アリア、やれ」


 刹那、俺はアリアに両腕を抑えられながら組み敷かれた。


「いっで!」


 床に顔面思いっきりぶつけた……ちょーいてー。手加減してくれよ。


「あらあら、早すぎて見えなかったわー」
「棒読みくせーんだが。助ける気なかったでしょ」
「だって、必要ないでしょ?」
「確かにな」
「? 何を言っているお前にそんな力がないことは……」


 俺とクロエさんの言っている意味が分からず油断していたアリアは、次の瞬間、吹き飛ばされ柱に背中を打ち付けていた。


「ったく、来るのが遅いんだよ。はー痛かった」


 アリアの拘束から逃れられた俺はゆっくり立ち上がり、アリアが吹き飛んだ方向とは逆の方を見る。


「いやーごめんごめん。みんなが離してくれなくってさー。銃声が聞こえた時、怖いって怯えちゃって」


 紫色の髪を揺らし、いつものにやけ面を浮かべながら、颯爽と現れた彼女はまるで主人公のよう。
 そして、アンリエッタはそんな彼女を恨みがましく睨みつける。


「――結城紫苑っ!」
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