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黒幕
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「それは誤解だ」
俺は手にした銃を捨て、ヴィーナスの隣に立つ。
「俺は最初からこっち側だ」
「あら? もう演技はいいの?」
「ああ、ありがとう。ヴィーナスさん、女優顔負けの演技で完璧だった」
「それはよかったわ。でも、悪役のフリは少し心が傷んだわ」
それにしてはノリノリだったけどな。
「後、その名はもう捨てたの。今の私はクロエ・テールよ」
「そうだな、正体バレると厄介だしな」
そんな俺たちの軽いノリを聞いて、アリアは訝しげにこちらを睨む。
「どういうことだ?」
アンリエッタを抱くアリアの手は震えていた。今にも俺を殺したいと思っているが、それを我慢しているように見えた。
「あんたの妹、メアリーが俺たちを見張っていたからな。ちょっとお芝居をさせてもらった」
俺がメアリーの隠れている柱の方に視線をやると、彼女は申し訳なさそうに姿を現した。
「それからあんたの今の反応を見たかった。おかげで確信が持てたよ」
「何の話だ?」
「何の話? とぼけるなよ。もう分かってんだよ」
「…………」
アリアは何も答えなかった。
「流石ですね。気が付いていましたか」
その代わり、倒れたままのアンリエッタが口を開いた。
「アンリエッタ様!」
「大丈夫よ。体が痺れて動けないだけですから」
「毒か」
「そう、俺がさっき撃ち込んだのは体の感覚を麻痺させるだけの毒だ。ちなみに魔法も今の状態じゃ使えない。でも、安心しろ、死にはしない」
大体こっちはただの人間なんだ。そんな気軽に人殺しなんかできっかよ。
「伊織さん。私を殺さなかったということは、あなたの目的は私を捕まえることですね」
「分かってんじゃねぇか」
そう、だってこいつは……。
「これまでの事件、裏で操っていたのはあんただろ?」
「はぁ~~~~~~~~~サイアクなんだけど」
開き直ったのか、アンリエッタはクソでかため息をついた後、いつもとは違うドスの効いた声で呟く。
なんか目つきも悪くなってるし。え? 何これ? これ本性なの? 流石にここまでは見抜けなかったわ。つーかこえぇ。
けど、この反応を見る限り、やっぱり俺の推理は当たっていたようだ。
------------------------------------------------------------------
2日前。
俺はクロエさんの病室に訪れていた。
「あら? 一人? 紫苑ちゃんは?」
「俺一人だけだ。あいつがいると話がややこしくなるからな」
「もしかして、お姉さんに惚れちゃった?」
「悪いが冗談を言っている時間はない。あんたの力を借りに来た」
「私の? 残念だけど、見ての通り私はケガ人で何も出来ないと思うわよ?」
「よく言うぜ。吸血鬼の真祖のくせに」
「っ! ……なんで分かったのかしら?」
「普通に会ってたら気が付かなかった。けど、あんたが、ヴィーナス・ヴァレットだと匂わせてくる奴がいてな」
「彼女たちね。エルフヘイムの王女様でしょ」
「やっぱ知ってたか」
「当然よ。相手が誰かも分からないままやられないわよ。これでも真祖ですから」
「アリアだろ? DDD本部襲撃事件の犯人は」
「彼女、有名だからね。見た瞬間、エルフヘイム関係だと分かったわ」
DDD本部襲撃事件はアンリエッタ来日の1週間前。アリアが警備の事前調査のために来ていた時期と被る。
「なんでそのことを言わなかったんだ?」
「ヴィーナス・ヴァレットであることを知られたくなかったのよ。普通の人として生きたかったから」
「それで100年前に1回姿を消したわけか」
「そういう事。ミントヴルムがちょうど禁止されたからね。その匂いを知っている人がいなくなるまで待ってたの」
確かにミントヴルムが流通していた時代だと、すぐに匂いを消していることがバレてしまうからな。俺もアンリエッタにミントヴルムの紅茶を出されるまではその存在すら忘れていたからな。あれがなければクロエさんの香水に疑問を持たなかったかもしれない。
ま、アンリエッタはそれを見越して俺にミントヴルムの紅茶を出したんだろうけど。
「事情は何となく分かった。それでアンリエッタに探りを入れる為に、紫苑に彼女がこっちに来ることを教えたのか」
「正解。流石ね。でも、それも向こうにとっては計算通りだったみたいなのよね」
「だろうな。DDD序列1位がいたのにも関わらず、王女を救えなかった。って状況を作りたかったんだろう」
「けど、1つだけ誤算があった」
「俺、だろうな」
もしあの時、紫苑が1人だけだったら、偽装誘拐を見抜くことは出来ず、アンリエッタの思い通りになっていただろう。
「ただ、それは彼女にとっては嬉しい誤算だったみたいだけどね」
「どうだろうな。その可能性は考えていたがあんま納得出来ないんだよなぁ」
「それは自己評価が低いからでしょう? それなら私が代わりに言ってあげましょうか?」
「アンリエッタ姫は東雲伊織を欲している」
俺は手にした銃を捨て、ヴィーナスの隣に立つ。
「俺は最初からこっち側だ」
「あら? もう演技はいいの?」
「ああ、ありがとう。ヴィーナスさん、女優顔負けの演技で完璧だった」
「それはよかったわ。でも、悪役のフリは少し心が傷んだわ」
それにしてはノリノリだったけどな。
「後、その名はもう捨てたの。今の私はクロエ・テールよ」
「そうだな、正体バレると厄介だしな」
そんな俺たちの軽いノリを聞いて、アリアは訝しげにこちらを睨む。
「どういうことだ?」
アンリエッタを抱くアリアの手は震えていた。今にも俺を殺したいと思っているが、それを我慢しているように見えた。
「あんたの妹、メアリーが俺たちを見張っていたからな。ちょっとお芝居をさせてもらった」
俺がメアリーの隠れている柱の方に視線をやると、彼女は申し訳なさそうに姿を現した。
「それからあんたの今の反応を見たかった。おかげで確信が持てたよ」
「何の話だ?」
「何の話? とぼけるなよ。もう分かってんだよ」
「…………」
アリアは何も答えなかった。
「流石ですね。気が付いていましたか」
その代わり、倒れたままのアンリエッタが口を開いた。
「アンリエッタ様!」
「大丈夫よ。体が痺れて動けないだけですから」
「毒か」
「そう、俺がさっき撃ち込んだのは体の感覚を麻痺させるだけの毒だ。ちなみに魔法も今の状態じゃ使えない。でも、安心しろ、死にはしない」
大体こっちはただの人間なんだ。そんな気軽に人殺しなんかできっかよ。
「伊織さん。私を殺さなかったということは、あなたの目的は私を捕まえることですね」
「分かってんじゃねぇか」
そう、だってこいつは……。
「これまでの事件、裏で操っていたのはあんただろ?」
「はぁ~~~~~~~~~サイアクなんだけど」
開き直ったのか、アンリエッタはクソでかため息をついた後、いつもとは違うドスの効いた声で呟く。
なんか目つきも悪くなってるし。え? 何これ? これ本性なの? 流石にここまでは見抜けなかったわ。つーかこえぇ。
けど、この反応を見る限り、やっぱり俺の推理は当たっていたようだ。
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2日前。
俺はクロエさんの病室に訪れていた。
「あら? 一人? 紫苑ちゃんは?」
「俺一人だけだ。あいつがいると話がややこしくなるからな」
「もしかして、お姉さんに惚れちゃった?」
「悪いが冗談を言っている時間はない。あんたの力を借りに来た」
「私の? 残念だけど、見ての通り私はケガ人で何も出来ないと思うわよ?」
「よく言うぜ。吸血鬼の真祖のくせに」
「っ! ……なんで分かったのかしら?」
「普通に会ってたら気が付かなかった。けど、あんたが、ヴィーナス・ヴァレットだと匂わせてくる奴がいてな」
「彼女たちね。エルフヘイムの王女様でしょ」
「やっぱ知ってたか」
「当然よ。相手が誰かも分からないままやられないわよ。これでも真祖ですから」
「アリアだろ? DDD本部襲撃事件の犯人は」
「彼女、有名だからね。見た瞬間、エルフヘイム関係だと分かったわ」
DDD本部襲撃事件はアンリエッタ来日の1週間前。アリアが警備の事前調査のために来ていた時期と被る。
「なんでそのことを言わなかったんだ?」
「ヴィーナス・ヴァレットであることを知られたくなかったのよ。普通の人として生きたかったから」
「それで100年前に1回姿を消したわけか」
「そういう事。ミントヴルムがちょうど禁止されたからね。その匂いを知っている人がいなくなるまで待ってたの」
確かにミントヴルムが流通していた時代だと、すぐに匂いを消していることがバレてしまうからな。俺もアンリエッタにミントヴルムの紅茶を出されるまではその存在すら忘れていたからな。あれがなければクロエさんの香水に疑問を持たなかったかもしれない。
ま、アンリエッタはそれを見越して俺にミントヴルムの紅茶を出したんだろうけど。
「事情は何となく分かった。それでアンリエッタに探りを入れる為に、紫苑に彼女がこっちに来ることを教えたのか」
「正解。流石ね。でも、それも向こうにとっては計算通りだったみたいなのよね」
「だろうな。DDD序列1位がいたのにも関わらず、王女を救えなかった。って状況を作りたかったんだろう」
「けど、1つだけ誤算があった」
「俺、だろうな」
もしあの時、紫苑が1人だけだったら、偽装誘拐を見抜くことは出来ず、アンリエッタの思い通りになっていただろう。
「ただ、それは彼女にとっては嬉しい誤算だったみたいだけどね」
「どうだろうな。その可能性は考えていたがあんま納得出来ないんだよなぁ」
「それは自己評価が低いからでしょう? それなら私が代わりに言ってあげましょうか?」
「アンリエッタ姫は東雲伊織を欲している」
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