ダメな自分を変えたくて、私がした『おいしいパスタの法則』

ハチサロン

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ジェルネイル

6話

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 朝、会社へ行く準備を済ませて家を出ると自宅の近くのバス停ではバスに乗らずに家の近くのコンビニへと歩いて向かった。

コンビニに入ると窓側にあるファッション雑誌を眺める。

ーーモテる髪型特集! 彼女にして欲しいファッション三選! 私は雑誌のそのキャッチフレーズに目を丸くしながらキョロキョロと辺りに人がいない事を確認しながら雑誌を手に取りパラパラと中を確認した。

ファッション雑誌などを買うのなんていつぶりだろうか……
多分最後に買ったのは十代の頃くらいだ。
私は雑誌の中の着回し特集というページで手を止めた。
『——私の出勤前』という吹き出しのセリフと共に写るその女性はスカーフで少し明るめの髪を後ろで束ね、ふんわりとしたキャメルのニットを着て下には薄いベージュの広がったスカートを履いていた。
そしてワインレッドのような濃いめの赤のネイルがとても輝いて見えた。

『……可愛い』私はそう呟いて
窓に反射して映る自分のスーツ姿が目に入った。
同じ出勤前なのにこうも違うのだろうか……
そして私は本を片手に持ち替えて自分の何の色もない爪を眺める。
……このままじゃダメだ。
私は何の努力してもいないのに結果だけを求めているんだ。
自分に手間をかけなさ過ぎている。

私は『よしっ』頷いてその少し厚めの雑誌を持ってレジの方へと向かった。

ーー私は変わりたい。

出来る事から少しずつでいいから始めてみよう。

ヘコむのはそれからだ。 何もしていない今じゃない。

今の自分に出来る事をしてから悩もう。




 コンビニを出て私は最寄りのバス停へと向かう。
バス停に着き、次のバスを待っている人たちが並んだ横に伸びた少し長い列の後ろの方へと私も並んだ。
そして前に並んでいるスマホを操作しながら耳にイヤホンをつけた大学生のような女の子とチラッと目が合いその子に笑顔で会釈される。
私は誰だろう。と思いながらその子の顔をあまり見ずに会釈をし返した。

『——ゼリーのお姉さんですよね?』とその子は耳のイヤホンを外しながら笑って言った。

『あー、そこのコンビニで深夜にいつも働いてる人?』

彼女はそうそうと頷き歯を出して笑った。

『お姉さんもここのバス停使ってるんですね』

『うぅん、いつもはもう一つ前のバス停使っているんだ。 今日は仕事行く前に買い物してて』と私は本の入ったレジ袋を少し上に上げて見せた。

『へぇー』と彼女は頷いた。 そして彼女は私のスーツを見て
『スーツっていいですよね。 なんか出来る女って感じがしてカッコいいです』と言った。

私は彼女の言葉にアハハと声を出して笑うと彼女は不思議そうな顔をして私は見つめた。

『ごめん、さっきね雑誌見ながら私服で出勤っていいなぁって思ってたから』

『無い物ねだりですよね』そう言って彼女は腕を組みながら頷いた。

そんな事を話しているうちにバス停にバスが到着した。

『へぇー、美咲さんって中央大出身だったんですね。 めっちゃ頭いい所じゃないですか!』と私の隣の座席に座る彼女は少し大きい声で驚いた。

『うーん、どうだろう。 けど今自分がしたい仕事をしてるか?って言われたらちょっと悩んじゃうかも……
千佳《ちか》ちゃんって学生?』

『はい、美容の専門学校に通っています』

『へぇー』と大きく頷く私に彼女は続けた。

『高校の頃、いとこのお姉ちゃんの結婚式に出席した時に式が始まる前に準備しているお姉ちゃんに会いに行ったんです。 その時ちょうどウェディングドレスを着たお姉ちゃんがスタイリストさんにヘアセットをしてもらっている最中でその光景を見て私声もかけるのも忘れて見入ってしまったんです、とても綺麗で。 その時に私のやりたいのはコレだ!って思っちゃったんです』

彼女は真っ直ぐ前を見つめてそう言った。
その幼さが少し残る彼女の顔には一切の迷いがないように私には見えて素直に凄いなと感じた。
そして彼女のあまりの気迫に私は言葉を失った。

彼女はそんな私に気が付いて少し首を傾げた。

『千佳ちゃん、なんかすごくカッコ良いなぁって思って。 まだ若いのにしっかり将来を見据えてて』

『美咲さんが花嫁になったら私がメイクしてあげますね。 ってかスタイルいいからウェディングドレス似合いそうですね!』と彼女はくしゃっと目を細めて笑った。

『うーん、それはいつになるだろう……』と私は笑いながらわざと少し下を向いて答える。

彼女は私の第一印象とは全く違う人だった。
その容姿から私は今時の将来の事など考えていないような子だろうなと思い込んでいたが、彼女は太く揺るぐことのない芯のある強い子だ。

しばらくするとバスは駅前に着き私は彼女に手を振ってバスを降りた。
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