ダメな自分を変えたくて、私がした『おいしいパスタの法則』

ハチサロン

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ジェルネイル

8話

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 会社を出て駅前の大型ショッピングモールやお洒落なカフェが建ち並ぶ中に愛沢が雑誌に載っていたという目的のパンケーキを出しているお店があるらしい。
愛沢は雑誌でその住所を確認しながら店内が見渡せる程の大きい窓ガラスのあるお洒落なカフェの前で立ち止まる。

『鳴海さん、ここだよ。パンケーキのお店』

私はその大きな窓から見える店内のお洒落な雰囲気に圧倒されていた。
白をモチーフにした清潔な店内。そして可愛らしいエプロンをつけた眩しい笑顔の店員さん。
そして店の外にあるテラス席でパンケーキが届き笑顔でスマホでそれを撮影するキラキラするような女性たち。
そのどれもが私には不釣り合いに見えて
思わず私は少し後退りをして歩いて来た道を戻ろうとする。

『ん? 鳴海さんどうしたの?』
愛沢はそう言って私の服の袖を掴んだ。

『キラキラし過ぎてて……ちょっと入り辛いかなぁ……』

愛沢は『何それ』と笑いながら半ば強引に私の手を引いて店内へと入った。

店内へ入ると可愛らしい女性に二人がけの席へと案内された。
案内されたのは真ん中の席で周りには仕事帰りの私たちと同じくらいの女性たちや、まだ学生のような若い子達で賑わっていた。
その店内の騒がしさに少しキョロキョロと周りを見渡す私。

『——何にしよっか?』と愛沢はテーブルに身を乗り出してテーブルの上にある小さめのメニュー表を見た。

少しすると若い女性の店員さんがお冷を持って私たちのテーブルへと来た。
そして、私達を見て『お決まりになりましたか?』と言った。

『鳴海さんどれにする?』

『うーん、どうしよう……』
私はそう言いながらその小さいメニュー表を見た。
そして、そのメニューの丸文字のような字体がとても見づらいな。ときっと愛沢は共感してくれないであろう事を思いながら何を頼もうか選ぶ。

愛沢はメニューを見ながら『私、抹茶オレとパンケーキにしようかなー』と両頬を押さえながらそう言った。

『……じゃあ、私も同じもので』私は店員さんの方を見てそう言った。

店員さんはオーダー表に何かを書いてキッチンの方へと向かって行く。

そして、愛沢は自分のバックから雑誌を取り出してそれをパラパラめくりながら話した。

『鳴海さんがこの雑誌好きだったなんて意外だったなぁ。 何か好きなブランドとかってあるの?』

『あまり無いかなぁ……でも、爪のヤツ…可愛いなぁと思って……』私はそう言ってお冷を喉に流し込んだ。

『爪のヤツ?』と愛沢はじぶんの爪を眺めながら少し首を傾げて考えた素振りをした。

『……爪のヤツってネイルの事?』と愛沢はひょんな顔をしながら私の顔を見つめる。

『うん』と少し照れながら頷く私に愛沢は笑いを堪えきれずに吹き出す。
そして、愛沢は笑い涙を人差し指で拭きながら
『鳴海さんって面白いね』と笑い疲れながらそう言った。

何が一体そんなに面白いんだろうと私は愛沢の顔をじっと見つめた。
そんな事を話しているうちに注文していたパンケーキと抹茶オレが二人分テーブルへと並べられる。
愛沢はその目の前のパンケーキを見て『わぁあ』と目を輝かせながら両手を広げて私の顔を見て『美味しそうだね!』と笑顔でそう言った。
そして、バックから自分のスマホを取りだし、パンケーキにピントを合わせて何枚か写真を撮って『これ良いね』と呟きながら、何やらsnsか何かに画像を投稿しているようだった。

私は特に写真を撮ることもなく『いただきます』と一人呟いてフォークを手に取った。

フワフワのパンケーキの端の部分をフォークで切って、それにパンケーキの上に乗っている生クリームを少し取って口の中へと運んだ。

口の中で生クリームと一緒にパンケーキも溶けるような不思議な食感に私はパンケーキを二度見する。

『えっ、鳴海さんどうしたの?』と愛沢はそんな私を見て尋ねた。

『口の中で溶けたからびっくりして……』

『あぁ、美味しかったってこと?』と愛沢は少しホッとした顔をして私を見つめる。

『うん』と頷く私に愛沢は微笑みながら続けた。

『鳴海さんネイルに興味があるんなら、私の通ってるネイルサロン、駅前にあるから帰りに行ってみない?』

『……行きたい!』私は身を乗り出して答えた。




 パンケーキを食べ終え店を出ると私たちは愛沢が通っているというネイルサロンへと向かった。

『ここのショッピングモールの中に入ってるんだー』
愛沢は大きいショッピングモールを指差して私達はそこに入って行った。

入り口の案内を見るとここのショッピングモールは女性向けのものが多く、化粧品の専門店や一度は耳にした事のあるような有名ブランドのアクセサリーやバックなどが置いてある専門店やエステなどの店舗が入っていた。

私の住んでいる近くにはこういった所が多いとは思うが自ら入る事はあまりない。
まぁ、こういったきらびやかなキラキラしたような場所が苦手ということもあるけれど
24年間生きてきて必要性を感じた事はなかったし
その高そうなアクセサリーやバックを身につけなければいけないシーンもそんなにあるとは思わなかったからだ。

 そして、店内に入りエスカレーターで何階か上に上がりエステや美容室のあるフロアの一角にある可愛い壁紙のネイルサロンへと入った。
そこは店員さんと対面式で5席ほどの席が用意してあり
ほのかにアロマの良い香りのする落ち着いた空間だった。

愛沢とは席を二つほど離れて案内され
私は緊張しながら席へと着いた。

『ーー初めての方ですよね?』
柔らかな印象の店員さんに話しかけられ私は少し挙動不審に会釈した。

『……あの、私ネイルとかは初めてでして』

店員さんは優しく何度か頷いて色々と説明してくれた。

私は今日初めて知ったがネイルには何種類かあるようだった。
ポリッシュという、私が想像していたマニキュアを爪に直塗りしてもらえるものから
ジェルネイルと呼ばれる爪に合成樹脂を固めて長持ちするもの。
そして、スカルプチュアというパウダーと液体を混ぜたものを爪に塗り長さを出してくれるもの。
私は仕事に支障をきたさない程度の長さのピンク色のジェルネイルというものにした。
そして、薬指に白い花の装飾をつけてもらう。
大体付け替えの目安は三週間らしい。

爪の施術が終わると先に終わって店の外で待つ愛沢の元へと私は駆け寄った。

『愛沢さん、おまたせ!』

『鳴海さん、どんなのにしたの?』
愛沢はそう言って私の両手を手に取ってピンク色の綺麗に発光したネイルを眺めた。

『えぇ、すごく可愛い!』と愛沢は目線を上げて笑った。

私はこんな風にお洒落をして同性に可愛いね。って言ってもらうのは初めてかもしれない。
ただ爪が少し変わっただけ。
それだけのことなのになんというか、これだけで自分じゃない気すらしてしまう。
他の人から見たらとても小さい一歩に見えるかもしれないけれど
私にとっては世界が少し変わったようにも思える一歩だ。

『ありがとう』と私は笑顔で返した。
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