へなちょこ勇者の珍道記〜異世界召喚されたけど極体魔法が使えるのに無能と誤判定で死地へ追放されたんですが!!

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第2章

訓練

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 太一は段々力が漲ってきた。食べ物を口にしたからとは思うが、シャロンのおかげと感謝していた。

 シャロンにとって太一は自らの誇り、何よりも女性としての尊厳を、そう、純潔を守り命を助けてくれた恩人、英雄なのだ。

 太一的には空腹で死にかけていた自分を助けてくれた恩人で女神にすら見えた。お互いに恩人と思い、大きな借りを、一生掛かっても返す事が出来ない借りを作っていると思っていたのだ。

 特にシャロンの太一に対する感謝からの行為は尋常ではない。太一は戸惑っていたが、勿論嫌な気はしない。

 フローラは魔法使いであり、予言者だと言っていた。

 自身に対する予言では勇者召喚が行われた約一ヶ月後に寿命が尽きると。齢500を数えると嘘か真か良くわからない事等を話していた。

 寿命が間もなく尽きる事はシャロンも聞いていたそうで、既に受け入れていると。太一が希望すれば明日から午前中に魔法を教えてくれるという。午後からはシャロンや他の師範から剣を教わる。

 太一は魔法使い枠で召喚されたが、フローラが太一の許可を得て読み取ったステータスや魔法から、太一の状態は極端過ぎているのと、なまじ頭が良いから新たな魔法取得が厳しいと話してきた。

 初級魔法なら何とか寿命が尽きる前に教えられるそうだ。

 太一が珍しく他人に頭を下げる

「どうかお願いします。今は力が足りません。城にいる一緒に召喚された者を救い、あの王女に目に物を言わせたいんです。僕はこれから何をし、何を求められるのでしょうか?それと奴らは魔法陣の起動に1年掛かるが希望すれば元の世界に謝礼を渡した上で返すと言っていましたが、可能なものなのでしょうか?」

 シャロンが悲しそうに俯き拳を握りしめながら涙を流していたが、太一は気が付かなかった。

「そうですね。私が知る限り太一殿を始め、勇者様方は異常事態に備えて召喚された訳ではありません。勇者様以外で対処できます。理由は隣国との戦争に利用する為です。帰れるか?との事ですが、申し訳ありませんが成功した記録はありません。返還の儀式は少なく共わたくしが生きていた間に成功例はありません。50年前までは宮廷魔道士をしており、2度勇者召喚を見ております。2回共返還の儀式を行ったのですが、残念ながら失敗して全員死亡しております。彼らは本気で可能と思い送り返すと言っているようですが、過去のお話しかできませんが、太一様達に行っても結果は同じでありましょう。出来れば帰らずにシャロンの面倒を引き受けてくれませんか?一緒に旅をしてあげてください。この子は私に縛られ過ぎております」

「そんな事だろうなとは思ったんだ。ちくしょう。ざけんなよ。くそがー!」

 太一が唸るのをフローラは優しく見届けていたが、一通り毒づくといつの間にかフローラに抱き寄せられ頭を撫でられていた。太一は普段感情を表に出さない。特に浪人生になってからはそうなっていたのだが、今は珍しく感情を顕にしていたのだ。

 太一ははっとなり

「レディーの前で醜態を晒しました。もう落ち着いたから大丈夫です。汚い言葉を使い申し訳ありませんでした。そうか、帰れそうに無いのか。どこかで畑でも耕しながら好きな人と暮らすのも悪くはないのかな」

 堪らずシャロンが

「太一様にはシャロンがおります。わたくしでは太一様には釣り合わないでしょうが、太一様のいる所がシャロンの居場所です。どこへなりともお供します」

「あらあら太一殿はシャロンにすっかり好かれたのですわね。この子は殿方なんかいらない、一生結婚もしなくても良いと言い張っておりましたのに、時に太一殿はどのようなマジックを使ったので?」

「ちょ、ちょっとお師匠様やめてくださいよ!恥ずかしいじゃないですか!」 

 太一はそんなやり取りを羨ましそうに見ていた。

「暫くご厄介になります。まずは髪を短く切り召喚時と見た目を大幅に変えたいと思います。万が一面通しでもされた場合召喚者とバレてフローラさん達に迷惑を掛けてしまいます。それと冒険者として登録しておいた方が便利だと認識していますがどうでしょうか?魔石も大量に持っているので、売れば自分の食い扶持位はあると思います」
 
 太一は徐にいくつか魔石を出した。

 フローラはじっと魔石を見てから太一を見据え

「そうですね、太一殿の部屋の準備などもありますから、登録だけでもしておけば旅をする時に便利だと思いますわ。シャロン貴女もまだでしたね。良い機会ですから登録とパーティ申請をなさい。それと太一殿は今の名前を捨て、別の名前にする必要が有りますわ」

「ええ、ロイと名乗ろうと思います。太一とは城で名乗ってしまったので、変えないといけないと思っていたんです。本名を名乗るとは迂闊でした。」

「分かりました。ロイですね。頭をこちらに」

 太一は黙ってフローラの指示に従いフローラが頭を触れられる位置に移動した。フローラは手を太一の額と胸に当て

「賢者たるフローラが命ずる。かの者の名を替え、新たな道標を示しなさい。森羅万象に感謝します。チェンジングステータス」

 太一が一瞬光り、名前を変更する作業が終わった。
 画面を見るとロイとなっており、職業も冒険者と分かる部分がグレーになっていて、魔法戦士に変わっていた。

「太一殿改めてロイ殿の勇者と分かる部分を他者からは分からないようにしました。第2職業を得られていましたので第一職業と見えるように偽装をしています」

 太一改めてロイは頷いた。
 そしてフローラは紹介状を2人分用意してくれた。2人共幼少の頃孤児として路頭に迷っている所をフローラが旅先で見付け、才能を見い出し引き取り育てていたが、自分の死期が迫っている。最後の弟子達が修行を終えるので冒険者として登録して欲しい旨だ。何故か事前に用意をしていて、ロイと記載すらしてあった。

 太一はやけに早く紹介状を渡されたとは思うが、いつの間にやら手を握りしめてくるシャロンの手の温もりが気になり深く考えなかった。

 どう動いたものか、何をすべきか訪ねたが、フローラは道を示してはくれなかった。

「貴方は貴方の思うように生きなさい。私には貴方が何をすべきで、何をしてはならないのか分かりますが、敢えて伝えません。これを私の死後一年したら読みなさい。今は文字が読めないでしょうがシャロンに教わり、必ず2人で読むのです。そこに私が見た予知が記されています。勿論その前に見るのも貴方の自由ですが、予知によれば貴方は見ません。」

「分かりました。僕は読まないのですね」

「簡単に私の言う事を信じてはなりません。私が予知に有りますよといえば見ませんか?シャロンを明日娶ると予言で得たと言えば娶りますか?私が貴方を誘導するとは思いませんか?今後の事はある程度分かっていますが、勿論明日シャロンを娶るなどと言う事は有りませんが、私の発言は貴方の行動を縛ります。ただ、明日からここで学ぶ事はこの世界にとって・・・いや、止めましょう。ごめんなさい。やはり私には直接貴方に伝えるのは無理です。本当にごめんなさい。ただ、まだ未熟なシャロンを頼みます。私が愛情を込めて育てた自慢の弟子です。きっと貴方の力になるでしょう。予知とは別の話として聞いてくだされば幸いです。これは私からのあくまで頼みです」

 太一はそれ以上涙を流し震える老女に何も聞けなかった。ただただ抱き締め、背中を擦る。分かりましたとただ一言言い、収納に手紙を入れた。ただ、それとは別にどうしてもどうにもならないと思った時にこれを読みなさいと封筒を渡された。太一が読める字で書いたと。但し日本語とは言ってはいなかった。

 太一は多分これから危険な事や辛い目に遭うんだろうなと半ば確信していた。ただ、一つ言えるのはフローラが分かって言ったのか意図せずに言ったのか、一つ確実な事を言っていた。

 フローラの死後1年は太一とシャロンは無事で、シャロンと行動を共にしているのだ。シャロンとはどういった関係になっているのだろうか?恋人?単なる同行者?従者?太一は多分わざとヒントを与えたのだろうと考えた。

またはシャロンを大事にして欲しい親心だろうか。今は素直で善良な素敵な女性としか分からないが、自分の運命は自分で決めなきゃなと何となく思うのであった。

 それはさておき、身元を隠す為に行動を開始するのであった。
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