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第2章

修行初日

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 ギルドを出た後シャロンは太一を連れて服を買いに向かっていた。今日は冒険者として行動する為お揃いの戦闘服を着ていた。しかし太一には普段用の服がないのだ。馬車の中に服もあったのだが、サイズが合わなかったり、死んだ者達の服の為、着る気にはなれなかったのだ。

 今日はフローラから魔法を教わるのは午後からの為、買い物とお昼を食べてから屋敷に戻る事になっていた。

 太一はこの世界の事を何も知らない。当然初めて見る街並みに興味津々で色々な物を見ている。キョロキョロしながらシャロンにあれは何?これは何?と質問をしまくっていた。特に字が読めないので、あれは何て書いてあるのかというような事を何度も聞いていた。

 たまたま娼館のある所を通らざるを得なかったのだが、これは何の店かと聞くとシャロンがムスッとしていた。

「ここは太一様が行くような所ではございません。その、男性が、その、女性を買い、ぶ、ふしだらな事をする所ですわ」
 
 太一はなるほどと分かり

「そうか娼館ってやつなんだね。確かに僕には縁がなさそうだね」

 そう言うとシャロンはにっこりしていた。服を何点か買い、寝間着や靴等も買って行く。武器防具は足りていると判断していたからスルーした。また日常生活で必要な物ばかりを買っていく。特に髭剃りを必要としていた。

 娼館の前を通らざるを得なかったのは、娼館の近くにある紙を扱っている店に用があったからだ。紙は高かったのだが、フローラ様の言いつけなのでとシャロンが大量に買っていった。どれ位高いかと言うと、用紙10枚で金貨1枚程するのだ。金貨1枚もあれば高級な宿に泊まれるそういう値段なのである。

 ギルドで言われていたのが、2日後に初心者講習なるものがあると言う。冒険者に登録したばかりの初心者の為の講習だという。基本この講習に出ないと採取依頼しか受けられないと言うので申し込みをしていた。その時は冒険に出るための装備などを持っているなら持ってくるようにと言われている。

 一通り買い物終わり屋敷に戻る。大量に物を買った筈だが2人共持っていない。

 シャロンも服や下着類を買っていたのだが、さすがに下着類は自分で持つと言ったが太一は許さなかった。何が入ってるか察しはついていたのだが、買い物が終わり道の脇に行き、人がいないのを見てから収納にどんどん買い物を入れるを繰り返していた。

 屋敷に戻る途中にシャロンはここが美味しいと評判の店に寄り、ランチを食べる。パスタのような麺とスープ、野菜のサラダといった感じで、ヘルシーなメニューだった。

 屋敷に戻ると改めて太一の部屋を案内された。気を使ってくれたのかシャロンの隣の部屋である。部屋数はかなり多く、誰かの隣の部屋を使う必要ないのだが、そこはフローラの配慮と策略がある。

 荷物を置いてから普段着に着替えフローラの部屋に行く。そこで魔法についての講義を受けるのだ。シャロンもおさらいを兼ねて一緒に受けるように言われており、二人で参加する。

 まずは基本的な魔法の概念からの説明である。この世界には魔素と呼ばれる魔力の素があり、それが大気中に分布している。魔素を体内に取り込み、魔力として変換し体の中に保管をする。この魔素を取り込み、魔力に変換する能力が強い者が魔力が強いと言われ、威力が高い者になり魔力量が多いと、威力も高いのが一般的だと言う。フローラの言うには太一は魔力量、威力共に格別な強さがあると言う。おそらくこの世界で太一の右に出る者がいないのではないかと言っていた。

 比べられるのが歴代勇者だと言っていた。ただ、既に魔法を無意識下に、知らず知らずに使っている為新たな魔法を取得するのはマジックアイテムなど特殊な手段を用いて得る以外は困難を極めると言われた。知識がないのに使ってしまった為、感覚形になってしまっている為知識を持って理論立てて使用していかなければ呪文を唱えての呪文の発動が困難になるという。

 おそらく当面は初級魔法を覚えるのが課題だと。少なく共フローラが生きている間は初級魔法の一つでも使えれば御の字だと言っていた。


 初級魔法が使えるようになれば今使っている生活魔法による攻撃もバリエーションと威力が増える筈だと言っていた。

 言うなれば子供の水鉄砲の威力の筈の魔法が、高圧洗浄の水の出方へ。それ程までに違うようになる、そういった類の事を言っていたがシャロンはフローラの言う事を必死に帳面に記録していたが、太一は全くしていなかった。シャロンは単に文字の読み書きができないから記録を取らないのだろうとしか思わなかったのだが、太一には必要がなかった。  

 一度聞けば全て覚えてしまうからである。
 そう記憶力は抜群なのだ。
 少なく共今日シャロンに聞いていた看板に書いてある文字等はすべて覚えている。
 ただ、看板文字を見ただけでは読み書きができるほどの学習にはならない。

 シャロンはと言うと、宮廷魔導師までとは言わないが、普通の冒険者パーティーの中にいる魔法の専門職よりは上だと言う。ただ極大魔法等のような極端に魔力を必要とする魔法は無理だろうと。中級魔法位までは使えるのだと言う。

 太一は魔素という名の魔力の素を感る事とが難しかった。理由は簡単である。己の魔力が強過ぎて周りの魔力を感じるのが難しいのである。


 基本的に太一の近くに来てしまうと皆そうなってしまう。なので魔法を放たれても強力な魔法以外は当たる直前まで、接近に気づかない。その為フローラが最初に教えるのは魔力結界による魔力防御であった。これはシャロンにも教えていなかった。そう太一が来てシャロンに一緒に教える事になると分かっていたからである。

 2時間程講義を行った後実地訓練である。外に出て魔力結界を張る為の訓練になる。魔力を体の一部に集中させ、そこを魔力で覆い魔法が当たっても覆った魔力でカバーするという操作をし、威力を落としてくれる、そういうものだ。

 ただ四六時中丸く結界を張っれる訳ではない。当然ながら魔力結界を張ると魔力を消費するからである。

 太一のようにほぼ底なしに近い大量の魔力を持っていれば問題ないのだが、それでも魔力を出し続けると疲労していくのだ。なので一瞬で必要な所を防御する、そういった訓練が必要になる。

 まずは結界そのものを発動しなければ話にならないので、それの訓練から始まるのだ。手を魔力のオーラでただ単に覆う、それだけなのだが、初日は太一にはできなかった。
 シャロンはごくごく薄い膜を張る事に成功していたのだが、これが感覚で魔法を使う事をしてしまった者と、訓練してちゃんと理屈から教えられ、理屈を理解した者との差であったのである。
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