盾の間違った使い方

KeyBow

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第40話 朝の検収(インスペクション)と鋼の自制心

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 目が覚めた瞬間、俺の脳内には最大級の警告(アラート)が鳴り響いた。
(……温かい。そして、重い)
 腕に伝わる、柔らかくもしっかりとした重み。鼻をくすぐる、石鹸とわずかな甘い香り。
 視線を落とすと、そこには俺の腕を枕代わりにし、胸元に顔を埋めて眠る雫ちゃんの姿があった。いわゆる、絵に描いたような「朝チュン」スタイルだ。
「……っ!?」
 一瞬、心臓が跳ね上がり、呼吸が止まる。
 三年間、無菌状態だった俺の生活に、とびきりの美少女が密着しているという「異常事態(イレギュラー)」。
 昨夜、彼女を抱き留めた記憶はある。だが、眠りに落ちた後の俺が、無意識に「けだもの」へと変貌していなかったか? 紳士の皮を被った「不適合品」に成り下がっていなかったか?
 俺は冷や汗を流しながら、即座に緊急検査(インスペクション)」を開始した。
 まずは、自身の状態。
 ワークウェアのベルト……よし、締まっている。ボタン……欠損なし。
 次に、腕の中の彼女だ。
 俺は視線を極力逸らしながら、彼女の背中に回した指先だけで、その「仕様」を確認する。
 ワークウェアの襟元、乱れなし。そして、背中に触れるわずかな突起――。
(……ブラジャーのホック、装着状態を維持。……よしっ)
 指先に伝わるその確かな感触に、俺は心の底から安堵の息を吐いた。
 着衣の乱れ、なし。
 強制的な干渉の形跡、なし。
 俺の理性が、「騎士(品質管理者)」としての動作仕様を完遂したことを、客観的証拠(エビデンス)が証明していた。
(……よかった。事案(トラブル)は発生していない。俺はまだ、クズじゃない)
 あまりの緊張から解放され、どっと疲れが押し寄せる。
 俺の心臓の音が少し速まっていたせいか、雫ちゃんが「ん・・・」と小さく声を漏らし、長い睫毛を震わせた。
「おはようございます、佐東さん」
 寝ぼけ眼で俺を見上げるその無防備な顔。
 俺は努めて冷静な、いつものように落ち着いた声を絞り出した。
「……ああ、おはよう。雫ちゃん。……検収の結果、異常なしだ。よく眠れたか?」
「……けんしゅう? はい、おかげさまで、とっても。……あったかかったです」
 彼女が花が綻ぶように微笑む。
 その純粋な破壊力に、俺の脳内会議は再び緊急開催の危機を迎えたが、俺は強引に立ち上がった。
「よし。起床だ。……朝のルーチン(トイレと朝食)に移行する。……君も、準備ができたらテントから出ておいで」
 俺は逃げるようにベッドを抜け出した。
 理性の堤防は守りきった。だが、この生活を続けるなら、俺の「精神的耐久テスト」は、これからが本番になりそうだ。

【如月 雫:ステータス】
  状態: 覚醒(安眠完了) / 佐東への信頼が「本能的な安心感」へと昇華。
 ギフト: 『聖女の祈り』『異世界言語』
 装備: 自作衛生装備一体型下着 Mk-1(異常なし)

【佐東 柾:ステータス】
 状態: 疲労(極度の自制による) / 朝の検収により「白」を確認し安堵。
 スキル: 鉄の意志(対誘惑耐性・極) ―― 娘の面影が強力なリミッターとして作動。
 ネクストタスク: 朝食の準備と本日の予定を確認。
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