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第69話 古竜の墓守
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『アンデッド化…完了』
雫の悲痛な鑑定結果が、俺の脳天に突き刺さる。
儀式の最後のピースが、ハマってしまった。
俺たちが殺した竜の命が、最悪の形で、新たな死の王を産み落としてしまったのだ。
老魔術師の亡骸が、ぎし、ぎし、と不自然な音を立てて起き上がる。
その眼窩に、禍々しい紫電の光が宿った。
俺はまだレベルアップの余韻でふらつく雫を背後にかばい、両手の盾を固く構え直す。
圧倒的な力を持つドラゴンを倒したことになり、レベルアップを果たした。
とはいえ、目の前にいるのは伝説級のアンデッド、リッチだ。勝てる保証などどこにもない。
リッチはゆっくりと立ち上がると、まず自分の骨張った手を見つめた。
そして周囲を見渡し、完全に絶命して光を失った古竜の骸、本体から分離していた一部を認めると、その眼窩の紫電をわずかに揺らめかせた。
俺と雫は息を殺して、その次の一手に身構える。
死の宣告か、必殺の魔法か。
だが、リッチの口から発せられたのは、俺たちの想像とは全く違う、拍子抜けするほどに穏やかな、老人の声だった。
「…何じゃ。終わったのか?」
その言葉に俺は盾を構えたまま、凍りついた。
リッチの視線は、血と汗の匂いが染みついた俺を滑り過ぎると、その後ろで怯える、膨大な聖なる魔力を放つ少女へと、まっすぐに注がれた。
「えっと、私は…」
雫が、か細い声で何かを言いかけたのを、老人は「ごほん」という、乾いた咳払いで遮った。
「お嬢さんが、倒したのかや?」
その、あまりにも見当違いな問いかけに、俺も雫も、言葉を失う。
雫は、助けを求めるように、俺の背中を小さく叩いた。
「さ、佐東さん…!」
俺は盾を降ろさないまま、警戒を込めて問い返した。
「…あんたは何者だ?」
俺の問いに、老人は「ふむ」と顎に手を当てた。
その眼窩の紫電が、まるで遠い記憶を探るかのように、激しく明滅する。
「わしは…?」
彼は首を傾げた。
「はて…名前が…思い出せんな」
その、あまりにも人間臭い、頼りない答え。
俺たちの緊張が、わずかに、しかし確実に緩んだ、その時だった。
よろり、と。その骨だけの身体が大きく傾いた。
「佐東さん!」
雫が、思わず駆け寄ろうとするのを、俺は手で制する。
「待て、雫!」
目の前にいるのは、敵か、味方か。
あるいは、ただの、悠久の時の中で、自分の名前さえも忘れてしまった、一人の哀れな老人の成れの果てなのか。
俺たちの、奇妙で、そして危険な共同生活は、三人目の同居人?を迎えることで、さらに混沌を極めようとしていた。
雫の悲痛な鑑定結果が、俺の脳天に突き刺さる。
儀式の最後のピースが、ハマってしまった。
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その眼窩に、禍々しい紫電の光が宿った。
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そして周囲を見渡し、完全に絶命して光を失った古竜の骸、本体から分離していた一部を認めると、その眼窩の紫電をわずかに揺らめかせた。
俺と雫は息を殺して、その次の一手に身構える。
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だが、リッチの口から発せられたのは、俺たちの想像とは全く違う、拍子抜けするほどに穏やかな、老人の声だった。
「…何じゃ。終わったのか?」
その言葉に俺は盾を構えたまま、凍りついた。
リッチの視線は、血と汗の匂いが染みついた俺を滑り過ぎると、その後ろで怯える、膨大な聖なる魔力を放つ少女へと、まっすぐに注がれた。
「えっと、私は…」
雫が、か細い声で何かを言いかけたのを、老人は「ごほん」という、乾いた咳払いで遮った。
「お嬢さんが、倒したのかや?」
その、あまりにも見当違いな問いかけに、俺も雫も、言葉を失う。
雫は、助けを求めるように、俺の背中を小さく叩いた。
「さ、佐東さん…!」
俺は盾を降ろさないまま、警戒を込めて問い返した。
「…あんたは何者だ?」
俺の問いに、老人は「ふむ」と顎に手を当てた。
その眼窩の紫電が、まるで遠い記憶を探るかのように、激しく明滅する。
「わしは…?」
彼は首を傾げた。
「はて…名前が…思い出せんな」
その、あまりにも人間臭い、頼りない答え。
俺たちの緊張が、わずかに、しかし確実に緩んだ、その時だった。
よろり、と。その骨だけの身体が大きく傾いた。
「佐東さん!」
雫が、思わず駆け寄ろうとするのを、俺は手で制する。
「待て、雫!」
目の前にいるのは、敵か、味方か。
あるいは、ただの、悠久の時の中で、自分の名前さえも忘れてしまった、一人の哀れな老人の成れの果てなのか。
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