神の布使い

KeyBow

文字の大きさ
39 / 53

第37話 再びアカデミーへ

しおりを挟む
 晃司とネリスはジッデルと名乗る講師が乗ってきた馬車でアカデミーに向かう事になった。

 実技試験の時に呆けていて魔力を込めすぎており、試験会場を混乱の渦に陥れた負い目がある。
 それもあるが、酔っていたのもありアカデミーに来いという事に反射的に行きますと言ったのだ。

「晃司と言ったな、貴様我らが合否判定に苦慮しておると言うのに、呑気に酒を飲みおって!学生が飲酒などけしからん!」

「ジッデル殿と言えば良いのだろうか?私達は試験を受けただけであり、まだアカデミーの生徒ではない。ずっと試験に向けて頑張って来て、その慰労会をしていたのですよ。年齢も飲酒を認められる歳ですから咎められるいわれはないと思うのだが。確かに、アカデミーの規則で生徒は飲酒、性行為、喫煙が禁じられているのは我らも知っている。だから勿論生徒になれば酒も飲まない」

「ふん。弁えているなら良い。しかし何をやったのだ!?受験生の半分は時間がなくて最後まで出来ないのに、開始15分で終わらせ、しかも全問正解だとは!」

「俺がまともに勉強したのはこの世界の歴史位で、後は暗記できる内容だぞ。それと過去問題。あんなんで試験が成立するのに驚いた位だぞ」

「なっ!?言うに欠いて簡単だと言うのか?我ら講師でも時間内に全問正解するのは厳しいのだぞ」

 晃司は今更だが、この世界の学力が低いのだと知らなかった。
 正直、小学校で学ぶレベルの問題だったので驚いた位だ。

「晃司様、このネリスも他の者よりも早く回答出来ましたが、晃司様に言われたように、よく分からなかったり時間が掛りそうなのを諦めて先に進んだからですわ。お陰様で自分で言うのもなんですが、上位に入っていると思いますわ。最後の方に簡単な問題が多くあり、そちらは自信がありますから。しかし、あれらを全て正解するとはこのネリス驚きました。一生お仕え致します!」

「ネリスは大袈裟だねぇ。試験対策は解けない問題は後回しが鉄則だよ。何故皆それを知らないかなぁ」

「ほう、仲間にそれを教えていたのか?」

「アモネス殿下、その付き人のライラ、俺の相棒のラミィとその従者となるエリーに伝えている。それと多分殿下の取り巻きと思われる3人の女性と、その従者には殿下からアドバイスがされているんじゃないのかな?」

「ぬう。確かにその者達は序盤の回答がないが、後半は全て書かれていたな。って益々怪しいではないか!?」

「あのなぁ、問題用紙は持って帰る事ができるから、皆独自に自己採点するのな。だから過去問題が出回っていて、少なくともこの10年分は序盤は時間が掛かる問題、終盤に簡単なのを入れているんだぞ。過去問題を読み解くとそのような結論になるのが普通だと思うぞ。と言うか、それを知らないのは試験を舐めきっていると思うぞ」

「ぬう。確かに、例年試験問題を作る時に前年の内容を参考にしているそうだが。うむ。あながち貴様は不正をしたというのではないのだな」

「1つ言っておくと言うか、ネタバラシをすると、今回の問題は15年前と、12年前の問題をそのまま持ってきていたぞ。それもあり早く解けたんだがな。以前のも何年か前の問題の中から組み合わせただけだぞ」

「なっ!?本当か?」

「確かに見た覚えのある問題でしたが、流石に20年分の問題と回答を覚えるのは無理ですわ」

「では過去問題から問うぞ、初代国王陛下が最後に統一した国の名は?」

「シトラル。16年前の出題だ」

「なっ!では2代目が亡くなった時の摂政の名は?」

「ヤーリク。7年前の出題だ」

「ま、まさか覚えているのか?」

「流石に計算問題は毎回違うようだが、似た内容だし簡単過ぎて覚えるまでもない。けどな、文章問題が過去問の使い回しってのは感心しないな。もし違ったら流石に答えられたか怪しかったがな」

「う、疑って悪かった。恐らく同じような事を聞かれると思う。正直に答えて貰らった方が良いと思う。それにしても凄まじい記憶力だな」

「そういう事か。確かに文章問題については予め答えを知っていたという疑い自体は的を得ているけど、その理由は違うからね」

 道中、ジッデルから色々な質問をされたが、全て何年前の問題にあったかと付け加えており、脱帽していた。

「こりゃあ参ったな。君は凄いな。貴様とか言ったりして悪かったね」 

「いえ。話せば分かる先生で助かります。少し気になる事があるのですが、良いですか?」

「私に分かる事や答えられる範囲なら構わないが」

「錬魔法場って壊れちゃったけど、お金ってどれ位請求が来たりしますでしょうか?あまりお金がないんですよ」

「ぐはははは!さっきまでと違い妙にオドオドしているじゃないか!くくく。心配するな。あれは魔導具の不備だ。何か幻覚や過去の事を思い浮かんだりしなかったか?」

「あっはい。数日前の事を思い出していました」

「まさかの欠陥品でね。新製品に飛びついたのだけど、ある程度の魔力を込めると幻覚等が見え、爆発するまで魔力を込め続けるようだ。だからあれは魔導具の所為だから気にしなくても良いぞ。中々年相応なところもあるじゃないか!気に入ったぞ!何かあったら私を頼りなさい!また、講師としては下っ端に近いから頼り甲斐がないかもだけどな」

 最初こそ高圧的な態度だったが、少なくとも話が通じ、誤解だと分かると目下の者に対してちゃんと謝れる所に晃司は好感を持てた。

 そうこうしていると、アカデミーに到着し、晃司は本日2度目となる王立アカデミーに足を踏み入れるのであった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。

名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

処理中です...