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第19話 死の森から来た少女
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森を抜けた先は、なだらかな草原地帯だった。
リリアは、久しぶりに見る広い空に、思わず感嘆の声を上げた。
だが、そこで見たのはそれだけではなかった。
幅5mの、自分たちが出てきた奇妙な森の出口。その出口を中心に、半弧を描くように、ずらりと並んだ人影。
磨かれた鎧。抜身の剣。掲げられた、見たこともない紋章の旗。
それは明らかに、何かを待ち構える、完全武装の兵士たちの一団だった。
リリアの顔から、さっと笑みが消えた。
一瞬の戸惑い。だが、それはすぐに歓喜へと変わった。
「止まれ!――何者だ」
「人だ! やっと、人に会えた!」
止まれの一言は、自ら発した喜びの声にかき消され、リリアの耳に届かなかった。
助かった。もう、あの森で怯える必要はないんだ!
リリアは保護を求める一心で、兵士たちの一団へと駆け出した。
その光景を、300メートルほど離れた監視台の上から、この一行を率いる防衛隊長は苦虫を噛み潰したような顔で見ていた。
「隊長?」
「後衛、矢を番えさせろ。いつでも射てるようにだ」
副官の問いに、隊長は低い声で命じた。彼の目は、無邪気にこちらへ走ってくる少女から片時も離れていない。
(馬鹿な・・・)
忌むべき【死の森】から、突如として現れたメイド服の女。驚いたことに見た目からは成人女性ではなく、少女だ。
常識ではありえない。
場違いな格好は怪しいとしかいえない。
2日前、森を抉り取るほどの謎の光が放たれて以来、森は不気味なほど静まり返っている。斥候によれば、森の入り口付近の魔物さえ、姿を消したという。
そしてのタイミングで現れた、一人の少女。
(人の姿を騙る、凶悪な魔物に違いない。ハーピーか、あるいは高位のサキュバスか!・・・)
隊長の脳裏に、最悪の想定が浮かぶ。ここで油断すれば部隊が、そして街が壊滅する。
「抜剣! 目標を包囲、決して近づけさせるな!」
隊長がそう叫んだ、その瞬間だった。
「――待ちなさい」
凛とした、しかし有無を言わせぬ声が、彼の命令を遮った。
声の主は、きらびやかな白いマントを羽織った、一人の美麗な騎士、いや女騎士だ。ごわごわとした鉄の鎧ではなく、皇国聖騎士だけが着用を許される、気品と機能性を兼ね備えた制服に身を包んでいる。
隣国アルフォート王国の王妃と並び称されるほどの美貌の聖騎士。
一目見れば誰魔が見つめる程の美貌の騎士が声を上げた。
「セスティーナ殿・・・しかし!」
「私が確認します」
女騎士――セスティーナは、隊長の抗議を、ただ一瞥するだけで黙らせた。
「信じられませんが、死の森から人が・・・それも、あれほど小さな少女が出てきた。それに、あの日以来、森の魔物の気配がしないのも事実」
女騎士――セスティーナは、隊長の抗議を、ただ一瞥するだけで黙らせた。
彼女は静かに草原を駆け始めた。その動きは、戦場を駆ける騎士というよりは、舞踏会でワルツを踊る貴婦人のように、優雅だった。
(この目・・・この表情・・・)
セスティーナは、まっすぐにこちらへ向かってくる少女の瞳を、見つめていた。その瞳は、紛れもなく、恐怖から解き放たれ、本気で助かったと安堵している者の目だった。彼女には、害意が一切感じられない。
そして、その目には、確かに既視感があった。それは、遥か昔、自分自身が誰かに助けを求めた時と同じ、純粋な希望に満ちた輝きだった。
そんな少女の元に、女騎士は驚かせないように優雅に向かっていった。
リリアは、久しぶりに見る広い空に、思わず感嘆の声を上げた。
だが、そこで見たのはそれだけではなかった。
幅5mの、自分たちが出てきた奇妙な森の出口。その出口を中心に、半弧を描くように、ずらりと並んだ人影。
磨かれた鎧。抜身の剣。掲げられた、見たこともない紋章の旗。
それは明らかに、何かを待ち構える、完全武装の兵士たちの一団だった。
リリアの顔から、さっと笑みが消えた。
一瞬の戸惑い。だが、それはすぐに歓喜へと変わった。
「止まれ!――何者だ」
「人だ! やっと、人に会えた!」
止まれの一言は、自ら発した喜びの声にかき消され、リリアの耳に届かなかった。
助かった。もう、あの森で怯える必要はないんだ!
リリアは保護を求める一心で、兵士たちの一団へと駆け出した。
その光景を、300メートルほど離れた監視台の上から、この一行を率いる防衛隊長は苦虫を噛み潰したような顔で見ていた。
「隊長?」
「後衛、矢を番えさせろ。いつでも射てるようにだ」
副官の問いに、隊長は低い声で命じた。彼の目は、無邪気にこちらへ走ってくる少女から片時も離れていない。
(馬鹿な・・・)
忌むべき【死の森】から、突如として現れたメイド服の女。驚いたことに見た目からは成人女性ではなく、少女だ。
常識ではありえない。
場違いな格好は怪しいとしかいえない。
2日前、森を抉り取るほどの謎の光が放たれて以来、森は不気味なほど静まり返っている。斥候によれば、森の入り口付近の魔物さえ、姿を消したという。
そしてのタイミングで現れた、一人の少女。
(人の姿を騙る、凶悪な魔物に違いない。ハーピーか、あるいは高位のサキュバスか!・・・)
隊長の脳裏に、最悪の想定が浮かぶ。ここで油断すれば部隊が、そして街が壊滅する。
「抜剣! 目標を包囲、決して近づけさせるな!」
隊長がそう叫んだ、その瞬間だった。
「――待ちなさい」
凛とした、しかし有無を言わせぬ声が、彼の命令を遮った。
声の主は、きらびやかな白いマントを羽織った、一人の美麗な騎士、いや女騎士だ。ごわごわとした鉄の鎧ではなく、皇国聖騎士だけが着用を許される、気品と機能性を兼ね備えた制服に身を包んでいる。
隣国アルフォート王国の王妃と並び称されるほどの美貌の聖騎士。
一目見れば誰魔が見つめる程の美貌の騎士が声を上げた。
「セスティーナ殿・・・しかし!」
「私が確認します」
女騎士――セスティーナは、隊長の抗議を、ただ一瞥するだけで黙らせた。
「信じられませんが、死の森から人が・・・それも、あれほど小さな少女が出てきた。それに、あの日以来、森の魔物の気配がしないのも事実」
女騎士――セスティーナは、隊長の抗議を、ただ一瞥するだけで黙らせた。
彼女は静かに草原を駆け始めた。その動きは、戦場を駆ける騎士というよりは、舞踏会でワルツを踊る貴婦人のように、優雅だった。
(この目・・・この表情・・・)
セスティーナは、まっすぐにこちらへ向かってくる少女の瞳を、見つめていた。その瞳は、紛れもなく、恐怖から解き放たれ、本気で助かったと安堵している者の目だった。彼女には、害意が一切感じられない。
そして、その目には、確かに既視感があった。それは、遥か昔、自分自身が誰かに助けを求めた時と同じ、純粋な希望に満ちた輝きだった。
そんな少女の元に、女騎士は驚かせないように優雅に向かっていった。
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