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第49話 サキュバス
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「死にたくなきゃこいつに、とどめを刺せ」
ディノッゾの命令に、少年は震える腕で、錆びた剣を振り上げた。
目の前には、手足をもがれ、もはや抵抗する術もない、巨大なサイクロプス。
だが、その一つ目は、まだ憎悪の光を宿し、少年を睨みつけている。サイクロプスに出来るのは殺気をぶつけ、威圧することだけだなやなも
恐怖。吐き気。そして、ここでやらなければならないという、絶望的な使命感。
少年の中で何かが、ぷつりと切れた。
「あああああああっ!」
狂ったような叫び声と共に、彼は目を固く閉じ、振り上げた剣を、ただがむしゃらにサイクロプスの目に突き立てた。
ぐさり、と肉を貫く鈍い感触。
巨体が、びくんと一度だけ大きく痙攣し、そして、完全に動きを止めた。
シーンと静まり返った通路に、少年の荒い息だけが響き渡る。
やがて、サイクロプスの巨体が、淡い光となって霧散し始めた。
その場に残されたのは、巨大な魔石と、いくつかのアイテム、そして、これまで見たこともない、拳ほどの大きさの、淡く光る宝玉だった。
「……スキル玉……」
誰かが、呆然と呟いた。
ボス級の魔物が、ごく稀にドロップするという、スキル玉。手にした者に、新たなスキルを与えるという、伝説級のアイテム。
ディノッゾは、その玉を拾い上げると、とどめを刺した少年に、無造作に放り投げた。
「お、俺にですか……?」
「当たりめえだ。お前が倒したんだからな」
「で、でも、これをどうすれば……」
「さあな。よく分からんが、とりあえず、地面に叩きつけて割っとけ。そしたら、何か起きるだろ」
その、あまりにも乱暴な指示に、他の子供たちが「そんな貴重なものを!」と色めき立つ。
だが、ディノッゾは、そんな彼らには構わず、リリアに向き直った。
「さて、と。俺は次の獲物を狩りに行ってくる。その間、お前ら、自己紹介でもしとけよ。ああ、リリア、俺のも適当に紹介頼むな」
「ええっ!? ちょっと、ディノ!」
ディノッゾは、リリアが止めるのも聞かず、再び一人でダンジョンの奥へと進んでいった。
残された子供たちは、顔を見合わせるしかない。
英雄なのか、悪魔なのか。自分たちの目の前にいる男が、一体何者なのか、全く理解できなかった。
数十分後。
子供たちが、お互いの名前と、震える声で自己紹介を終えた頃。
通路の奥から、ディノッゾが戻ってきた。
その肩には、またしても、とんでもないものが担がれていた。
翼を折られ、くちばしを砕かれながらも、鋭い目でこちらを睨みつけている、伝説の魔獣、グリフォン。
ディノッゾは、その半殺しのグリフォンを、今度は別の子供の前に、どさりと投げ出した。
そして、にやりと笑った。
「さあ、二番目。お前の番だ」
ディノッゾの、地獄のレベルアップ教室。
その二時限目が、今、始まろうとしていた。
数分後。
通路の奥から、ディノッゾが戻ってきた。
その肩には、またしても、とんでもないものが担がれていた。
翼をもがれ、歩くこともできないように足を砕かれながらも、妖艶な笑みでこちらを誘うかのような、手足をもがれたエロいお姉さん。
魔物サキュバスだった。
ディノッゾは、その半殺しのサキュバスを、今度は別の少年の前に、どさりと投げ出した。
そして、にやりと笑った。
「さあ、3番目。お前の番だ」
ディノッゾに促された少年は、目の前に転がされたサキュバスを見て、顔を真っ青にした。
手足はもがれているものの、その顔立ちは絶世の美女と言ってよかった。苦痛に表情を歪め、か細い声で助けを求めている。それが、自分たちを誘惑し、精気を吸い尽くして殺す、凶悪な魔物だとは、到底思えなかった。
「……先生」
少年は、震える声で、いつの間にかディノッゾをそう呼んでいた。
「俺には、殺せません……!こんな綺麗な女性を手に掛けるなんて・・・」
彼は、手に持っていた剣を、カラン、と地面に取り落としてしまった。
「……そうか」
ディノッゾは、無理強いはしなかった。彼もまた、この少年と同じように、人型の魔物を殺すことに、どこかで躊躇いを覚えていたからだ。
だが、この甘さが、いずれ全員の命取りになることも、彼は知っていた。
ディノッゾが、どうしたものかと思案した、その時だった。
「……あんたがやらないなら、私がやるわよ!」
鋭い声が、通路に響いた。
声の主は、先ほどまで入り口で泣いていたパーティーのリーダー格だった、一人の少女。
彼女は、少年が落とした剣を拾い上げると、何の躊躇いもなく、サキュバスの前に立った。
「ま、待て!」
少年が止めようとするが、彼女は聞かない。
「甘いこと言ってんじゃないわよ! こいつが、あたしたちを殺すのに、一瞬でも躊躇うとでも思ってんの!? やるか、やられるか。それだけよ!」
少女は、そう言い放つと、サキュバスの命乞いにも似た瞳を、氷のような目で見下ろした。
そして、その美しい心臓めがけて、容赦なく剣を突き立てた。
「きしゃあああああっ!」
サキュバスの、断末魔の悲鳴が響き渡る。
その最期は、あまりにも人間的で、その場にいた他の子供たちの中には、思わず目を背ける者もいた。
やがて、サキュバスの体も霧散し、魔石と、新たなスキル玉が、その場に残された。
少女は、返り血を浴びた剣を振るうと、何事もなかったかのように、そのスキル玉を拾い上げた。
彼女の行動は、あまりにも容赦がなかった。
ディノッゾは、その少女の姿を、ただ黙って見つめていた。
(……こいつは、強いな)
強い、というより、あるいは、この地獄に順応するのが、誰よりも速いのかもしれない。
彼は、自分が始めたこの非情な育成が、子供たちの心を、良くも、悪くも、急速に変えていっているという事実を、改めて痛感させられたのだった。
ディノッゾの命令に、少年は震える腕で、錆びた剣を振り上げた。
目の前には、手足をもがれ、もはや抵抗する術もない、巨大なサイクロプス。
だが、その一つ目は、まだ憎悪の光を宿し、少年を睨みつけている。サイクロプスに出来るのは殺気をぶつけ、威圧することだけだなやなも
恐怖。吐き気。そして、ここでやらなければならないという、絶望的な使命感。
少年の中で何かが、ぷつりと切れた。
「あああああああっ!」
狂ったような叫び声と共に、彼は目を固く閉じ、振り上げた剣を、ただがむしゃらにサイクロプスの目に突き立てた。
ぐさり、と肉を貫く鈍い感触。
巨体が、びくんと一度だけ大きく痙攣し、そして、完全に動きを止めた。
シーンと静まり返った通路に、少年の荒い息だけが響き渡る。
やがて、サイクロプスの巨体が、淡い光となって霧散し始めた。
その場に残されたのは、巨大な魔石と、いくつかのアイテム、そして、これまで見たこともない、拳ほどの大きさの、淡く光る宝玉だった。
「……スキル玉……」
誰かが、呆然と呟いた。
ボス級の魔物が、ごく稀にドロップするという、スキル玉。手にした者に、新たなスキルを与えるという、伝説級のアイテム。
ディノッゾは、その玉を拾い上げると、とどめを刺した少年に、無造作に放り投げた。
「お、俺にですか……?」
「当たりめえだ。お前が倒したんだからな」
「で、でも、これをどうすれば……」
「さあな。よく分からんが、とりあえず、地面に叩きつけて割っとけ。そしたら、何か起きるだろ」
その、あまりにも乱暴な指示に、他の子供たちが「そんな貴重なものを!」と色めき立つ。
だが、ディノッゾは、そんな彼らには構わず、リリアに向き直った。
「さて、と。俺は次の獲物を狩りに行ってくる。その間、お前ら、自己紹介でもしとけよ。ああ、リリア、俺のも適当に紹介頼むな」
「ええっ!? ちょっと、ディノ!」
ディノッゾは、リリアが止めるのも聞かず、再び一人でダンジョンの奥へと進んでいった。
残された子供たちは、顔を見合わせるしかない。
英雄なのか、悪魔なのか。自分たちの目の前にいる男が、一体何者なのか、全く理解できなかった。
数十分後。
子供たちが、お互いの名前と、震える声で自己紹介を終えた頃。
通路の奥から、ディノッゾが戻ってきた。
その肩には、またしても、とんでもないものが担がれていた。
翼を折られ、くちばしを砕かれながらも、鋭い目でこちらを睨みつけている、伝説の魔獣、グリフォン。
ディノッゾは、その半殺しのグリフォンを、今度は別の子供の前に、どさりと投げ出した。
そして、にやりと笑った。
「さあ、二番目。お前の番だ」
ディノッゾの、地獄のレベルアップ教室。
その二時限目が、今、始まろうとしていた。
数分後。
通路の奥から、ディノッゾが戻ってきた。
その肩には、またしても、とんでもないものが担がれていた。
翼をもがれ、歩くこともできないように足を砕かれながらも、妖艶な笑みでこちらを誘うかのような、手足をもがれたエロいお姉さん。
魔物サキュバスだった。
ディノッゾは、その半殺しのサキュバスを、今度は別の少年の前に、どさりと投げ出した。
そして、にやりと笑った。
「さあ、3番目。お前の番だ」
ディノッゾに促された少年は、目の前に転がされたサキュバスを見て、顔を真っ青にした。
手足はもがれているものの、その顔立ちは絶世の美女と言ってよかった。苦痛に表情を歪め、か細い声で助けを求めている。それが、自分たちを誘惑し、精気を吸い尽くして殺す、凶悪な魔物だとは、到底思えなかった。
「……先生」
少年は、震える声で、いつの間にかディノッゾをそう呼んでいた。
「俺には、殺せません……!こんな綺麗な女性を手に掛けるなんて・・・」
彼は、手に持っていた剣を、カラン、と地面に取り落としてしまった。
「……そうか」
ディノッゾは、無理強いはしなかった。彼もまた、この少年と同じように、人型の魔物を殺すことに、どこかで躊躇いを覚えていたからだ。
だが、この甘さが、いずれ全員の命取りになることも、彼は知っていた。
ディノッゾが、どうしたものかと思案した、その時だった。
「……あんたがやらないなら、私がやるわよ!」
鋭い声が、通路に響いた。
声の主は、先ほどまで入り口で泣いていたパーティーのリーダー格だった、一人の少女。
彼女は、少年が落とした剣を拾い上げると、何の躊躇いもなく、サキュバスの前に立った。
「ま、待て!」
少年が止めようとするが、彼女は聞かない。
「甘いこと言ってんじゃないわよ! こいつが、あたしたちを殺すのに、一瞬でも躊躇うとでも思ってんの!? やるか、やられるか。それだけよ!」
少女は、そう言い放つと、サキュバスの命乞いにも似た瞳を、氷のような目で見下ろした。
そして、その美しい心臓めがけて、容赦なく剣を突き立てた。
「きしゃあああああっ!」
サキュバスの、断末魔の悲鳴が響き渡る。
その最期は、あまりにも人間的で、その場にいた他の子供たちの中には、思わず目を背ける者もいた。
やがて、サキュバスの体も霧散し、魔石と、新たなスキル玉が、その場に残された。
少女は、返り血を浴びた剣を振るうと、何事もなかったかのように、そのスキル玉を拾い上げた。
彼女の行動は、あまりにも容赦がなかった。
ディノッゾは、その少女の姿を、ただ黙って見つめていた。
(……こいつは、強いな)
強い、というより、あるいは、この地獄に順応するのが、誰よりも速いのかもしれない。
彼は、自分が始めたこの非情な育成が、子供たちの心を、良くも、悪くも、急速に変えていっているという事実を、改めて痛感させられたのだった。
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