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第51話 初心者ダンジョンスキル
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「全員、玉を一つずつ拾え。そして、使え。何が出るかは、お前たちの運次第だ」
ディノッゾの非情な、しかし覚悟に満ちた命令。
7人の少年少女たちとリリアがゴクリと喉を鳴らし、自らの運命が込められた宝玉へと、震える手を伸ばそうとした、その時だった。
「あ、あの……先生!」
おずおずと手を上げたのは、パーティーの一人の、知的な雰囲気を持つ少年だった。
「さっきから、いくつかアイテムが落ちてますけど……その中に、鑑定ができるような物はないんでしょうか?」
その、あまりにも真っ当な、しかし希望的観測に満ちた問いにディノッゾは、やれやれと首を振った。
「坊主、気持ちは分かるがな。そんな都合のいい物が、こんな時に、こんな場所で手に入るわけ……」
「……あのー」
ディノッゾの言葉を遮ったのは、ミノタウロスのドロップ品をかき集めていた、別の少女の声だった。
彼女は、拾い上げたアイテムの中から、一つの、奇妙な虫眼鏡のようなものをつまみ上げていた。
「これ、なんですかね?」
ディノッゾは、その虫眼鏡を受け取ると、訝しげに眉をひそめた。ただのガラスと金属でできた、何の変哲もない虫眼鏡に見える。
彼は、試しに、近くに落ちていた別のドロップ品(魔物の爪)を、そのレンズ越しに覗き込んだ。
すると、レンズの中に、淡い光で文字が浮かび上がった。
【ミノタウロスの爪:素材ランクC。武具の素材として有用】
「…………」
ディノッゾは、無言で、虫眼鏡をひっくり返し、裏側を見た。
そして、もう一度、爪を覗き込んだ。やはり、文字が浮かぶ。
彼は、ゆっくりと、先ほどの言葉の続きを口にした。
「…………あった!なんて都合の良い!」
その場にいた全員が、ずっこけた。
都合の良すぎる奇跡と、それを全く予期していなかったリーダーの間の抜けた一言。
ダンジョン内に響き渡ったのは、魔物の咆哮ではなく、子供たちの大きな笑い声だ。
都合の良すぎる奇跡。だが、今はその幸運に感謝するしかなかった。
ディノッゾは、手に入れた【アイテム鑑定の虫眼鏡】を手に、子供たちが見守る前で、まず地面に転がったスキル玉を鑑定し始めた。
ミノタウロスが落としたスキル玉【剛力】。サイクロプスが落としたスキル玉【衝撃波】。グリフォンが落としたスキル-玉【飛翔】。サキュバスが落としたスキル玉【魅了】……。
次々と、宝玉に秘められた力が明らかになっていく。
「よし、スキルは全部で九つ。早い者勝ちだ。欲しい奴から前に出ろ」
ディノッゾの言葉を受け、子供たちは、それぞれ自分の役割に合ったスキルを選び取り、その場で吸収していった。
そして、最後に一つだけ、スキル玉が残った。
それは、サイクロプスがドロップした、ひときわ強い輝きを放つ宝玉だった。
「【テレポート】……短距離を瞬間移動する空間魔法、か」
ディノッゾが鑑定結果を読み上げると、子供たちの間でどよめきが起きた。あまりにも強力で、希少なスキルだ。
だが、問題は、装備だった。
「先生……スキルは手に入れましたが、僕たちの武器や防具は、もうボロボロです」
リーダーのリオがおずおずと言う。
「何言ってんだ。そのために、これを集めさせたんだろうが」
ディノッゾは、まるで当然のように、魔物たちが落としたドロップ品の山を顎でしゃくった。
そして、鑑定の虫眼鏡を使い、武器の更新を始めた。
「【ミノタウロスの戦斧】……ランクC+。おい、斧使いの坊主、こいつを使え」
「【サイクロプスの大盾】……ランクB。そこの盾持ちのリーダー、お前のより百万倍マシだろ」
「【グリフォンの革鎧】……ランクB。風の抵抗を減らす魔法が付与されてるらしいぞ。斥候の奴、お前のだ」
「【サキュバスの魅了のダガー】……こ、これは……まあ、短剣使いの嬢ちゃんが持ってろ。変な気を起こすなよ」
次々と鑑定される、高ランクの装備。
子供たちは、夢見心地で、ディノッゾから手渡される、自分たちの身の丈には不相応な、英雄級の武具を受け取った。
武器を手に取り、鎧に身を包む。その瞬間、彼らの顔から、先ほどまでの怯えや不安が消え去っていた。
その時、リーダーのリオが、意を決してディノッゾの前に立った。
「……先生。その、最後のスキル玉は……」
その言葉を、勝ち気な両手剣使いのカミラが引き継いだ。
「当たり前でしょ! 先生が取るに決まってるじゃない!」
他の子供たちも、次々と声を上げた。
「そうです! 先生がいてくれたから、僕たちは助かったんだ!」
「先生がリーダーなんだから!」「お願いします!」
「先生、取ってください!」
子供たちの、純粋で、そして力強い声援。
その、あまりにも真っ直ぐな尊敬の念に、ディノッゾは、たじろいだ。
「い、いや、俺はいらねえよ! 俺には、あの馬鹿げたスキル(ハメハメハ)があるだけで十分だ。ていうか、それすら持て余してんだ。こんなもん、これ以上増やしてどうすんだよ」
だが、子供たちは引き下がらない。
「ディノ」
リリアも、隣で優しく、しかし有無を言わせぬ口調で言った。
「みんなが、そう言っています。受け取ってください」
ディノッゾは、完全に包囲されていた。
自分を、絶対的なリーダーとして、心の底から信頼してくれる、「教え子」たちの、キラキラとした瞳に。
彼は、観念したように、大きなため息をついた。
「……ああ、もう、分かったよ! 分かったから、そんな目で見るんじゃねえ!」
彼は、照れ臭そうに頭を掻きながら、【テレポート】のスキル玉を、ゆっくりと拾い上げた。
その宝玉が、一体どんな力を秘めているのか。
そして、それが、この規格外の男の手に渡った時、一体どんな化学反応を起こすのか。
その場にいる誰もが、固唾を飲んで、その瞬間を見守っていた。
ディノッゾの非情な、しかし覚悟に満ちた命令。
7人の少年少女たちとリリアがゴクリと喉を鳴らし、自らの運命が込められた宝玉へと、震える手を伸ばそうとした、その時だった。
「あ、あの……先生!」
おずおずと手を上げたのは、パーティーの一人の、知的な雰囲気を持つ少年だった。
「さっきから、いくつかアイテムが落ちてますけど……その中に、鑑定ができるような物はないんでしょうか?」
その、あまりにも真っ当な、しかし希望的観測に満ちた問いにディノッゾは、やれやれと首を振った。
「坊主、気持ちは分かるがな。そんな都合のいい物が、こんな時に、こんな場所で手に入るわけ……」
「……あのー」
ディノッゾの言葉を遮ったのは、ミノタウロスのドロップ品をかき集めていた、別の少女の声だった。
彼女は、拾い上げたアイテムの中から、一つの、奇妙な虫眼鏡のようなものをつまみ上げていた。
「これ、なんですかね?」
ディノッゾは、その虫眼鏡を受け取ると、訝しげに眉をひそめた。ただのガラスと金属でできた、何の変哲もない虫眼鏡に見える。
彼は、試しに、近くに落ちていた別のドロップ品(魔物の爪)を、そのレンズ越しに覗き込んだ。
すると、レンズの中に、淡い光で文字が浮かび上がった。
【ミノタウロスの爪:素材ランクC。武具の素材として有用】
「…………」
ディノッゾは、無言で、虫眼鏡をひっくり返し、裏側を見た。
そして、もう一度、爪を覗き込んだ。やはり、文字が浮かぶ。
彼は、ゆっくりと、先ほどの言葉の続きを口にした。
「…………あった!なんて都合の良い!」
その場にいた全員が、ずっこけた。
都合の良すぎる奇跡と、それを全く予期していなかったリーダーの間の抜けた一言。
ダンジョン内に響き渡ったのは、魔物の咆哮ではなく、子供たちの大きな笑い声だ。
都合の良すぎる奇跡。だが、今はその幸運に感謝するしかなかった。
ディノッゾは、手に入れた【アイテム鑑定の虫眼鏡】を手に、子供たちが見守る前で、まず地面に転がったスキル玉を鑑定し始めた。
ミノタウロスが落としたスキル玉【剛力】。サイクロプスが落としたスキル玉【衝撃波】。グリフォンが落としたスキル-玉【飛翔】。サキュバスが落としたスキル玉【魅了】……。
次々と、宝玉に秘められた力が明らかになっていく。
「よし、スキルは全部で九つ。早い者勝ちだ。欲しい奴から前に出ろ」
ディノッゾの言葉を受け、子供たちは、それぞれ自分の役割に合ったスキルを選び取り、その場で吸収していった。
そして、最後に一つだけ、スキル玉が残った。
それは、サイクロプスがドロップした、ひときわ強い輝きを放つ宝玉だった。
「【テレポート】……短距離を瞬間移動する空間魔法、か」
ディノッゾが鑑定結果を読み上げると、子供たちの間でどよめきが起きた。あまりにも強力で、希少なスキルだ。
だが、問題は、装備だった。
「先生……スキルは手に入れましたが、僕たちの武器や防具は、もうボロボロです」
リーダーのリオがおずおずと言う。
「何言ってんだ。そのために、これを集めさせたんだろうが」
ディノッゾは、まるで当然のように、魔物たちが落としたドロップ品の山を顎でしゃくった。
そして、鑑定の虫眼鏡を使い、武器の更新を始めた。
「【ミノタウロスの戦斧】……ランクC+。おい、斧使いの坊主、こいつを使え」
「【サイクロプスの大盾】……ランクB。そこの盾持ちのリーダー、お前のより百万倍マシだろ」
「【グリフォンの革鎧】……ランクB。風の抵抗を減らす魔法が付与されてるらしいぞ。斥候の奴、お前のだ」
「【サキュバスの魅了のダガー】……こ、これは……まあ、短剣使いの嬢ちゃんが持ってろ。変な気を起こすなよ」
次々と鑑定される、高ランクの装備。
子供たちは、夢見心地で、ディノッゾから手渡される、自分たちの身の丈には不相応な、英雄級の武具を受け取った。
武器を手に取り、鎧に身を包む。その瞬間、彼らの顔から、先ほどまでの怯えや不安が消え去っていた。
その時、リーダーのリオが、意を決してディノッゾの前に立った。
「……先生。その、最後のスキル玉は……」
その言葉を、勝ち気な両手剣使いのカミラが引き継いだ。
「当たり前でしょ! 先生が取るに決まってるじゃない!」
他の子供たちも、次々と声を上げた。
「そうです! 先生がいてくれたから、僕たちは助かったんだ!」
「先生がリーダーなんだから!」「お願いします!」
「先生、取ってください!」
子供たちの、純粋で、そして力強い声援。
その、あまりにも真っ直ぐな尊敬の念に、ディノッゾは、たじろいだ。
「い、いや、俺はいらねえよ! 俺には、あの馬鹿げたスキル(ハメハメハ)があるだけで十分だ。ていうか、それすら持て余してんだ。こんなもん、これ以上増やしてどうすんだよ」
だが、子供たちは引き下がらない。
「ディノ」
リリアも、隣で優しく、しかし有無を言わせぬ口調で言った。
「みんなが、そう言っています。受け取ってください」
ディノッゾは、完全に包囲されていた。
自分を、絶対的なリーダーとして、心の底から信頼してくれる、「教え子」たちの、キラキラとした瞳に。
彼は、観念したように、大きなため息をついた。
「……ああ、もう、分かったよ! 分かったから、そんな目で見るんじゃねえ!」
彼は、照れ臭そうに頭を掻きながら、【テレポート】のスキル玉を、ゆっくりと拾い上げた。
その宝玉が、一体どんな力を秘めているのか。
そして、それが、この規格外の男の手に渡った時、一体どんな化学反応を起こすのか。
その場にいる誰もが、固唾を飲んで、その瞬間を見守っていた。
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