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第78話 黒きオーラの朝そして帝との謁見
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王都の空は抜けるような青空だったが、最高級ホテルの一室だけは、地獄の底のような淀んだ空気に包まれていた。
「……許さん……許さんぞ、皇帝……」
ディノッゾはベッドの端に座り込み、ゆらりゆらりと漆黒のオーラを立ち昇らせていた。
一睡もしていない。
彼の脳内では、『セスティーナが城に連れ込まれ、好色な皇帝(男)の手によってあんなことやこんなことをされている』という妄想が、一晩中リピート再生されていたのだ。
コンコン。
控えめなノックの後、ドアが開く。
「ディノッゾ殿、お迎えに上がりました」
現れたのは、凛とした騎士服に身を包んだセスティーナだった。
だが、その顔には隠しきれない疲労の色(※昨晩、女帝に朝まで質問攻めにされたせい)が浮かんでいる。
それを見たディノッゾの脳内回路がショートした。
(やつれた……!? まさか、本当に一晩中……!?)
ゴゴゴゴゴゴ……ッ!!
ディノッゾから噴き出す黒い殺気が、物理的な圧力を伴って部屋の窓ガラスをビリビリと震わせた。
「ひっ!? ディ、ディノッゾ殿!? いかがなさいましたか、その禍々しい気配は!?」
「……いや、なんでもない。行こうか、セスティーナ」
ディノッゾは地を這うような低い声で答え、立ち上がった。
その瞳は死んだ魚のように濁り、背後には怨霊のような黒い靄が見えるかのような気配。
「は、はい……。馬車を用意しておりますので……」
セスティーナは戦慄した。
(まさか、昨日の疲れが残っているのか? それとも、城の警備に対する威嚇? さすがはダブル、気合いの入り方が違う……!)
完全にすれ違ったまま、二人は王家の紋章が入った豪華な馬車へと乗り込んだ。
・
・
・
王城への道中も、馬車の中はお通夜のような静けさだった。
御者が「馬が怯えて進みたがりません!」と泣き言を言うほどの殺気を垂れ流しながら、ディノッゾは城門をくぐった。
そして、ついに「謁見の間」。
重厚な扉が開かれる。
煌びやかなレッドカーペットの先、数段高い位置にある玉座。
しかし、ディノッゾは顔を上げない。
怒りでどうにかなりそうだった。この先に座っている「男」が、セスティーナを汚した張本人だと思い込んでいるからだ。
カツ、カツ、カツ……。
ディノッゾは歩を進め、所定の位置で片膝をついた。
(……見なくてもわかる。どうせ、脂ぎった好色なオッサンか、女好きのキザな若造だろ。俺のセスティーナに手を出したこと、後悔させてやる。たとえ相手が皇帝だろうと、俺は……!)
その背中から立ち昇る黒いオーラは最高潮に達し、周囲の護衛騎士たちが「な、なんだこのプレッシャーは……!」と震え上がるほどだった。
謁見の間全体が、重苦しい空気に支配される。
その時。
玉座の方から、鈴を転がすような、しかし絶対的な威厳に満ちた声が響いた。
「――苦しゅうない。面を上げよ」
(……あ?)
ディノッゾはピクリと眉を動かした。
予想していた「野太い声」ではない。
むしろ、耳がとろけるような美しい響き。
ディノッゾは、恐る恐る顔を上げた。
そこには――。
黄金の髪を流し、宝石のような瞳をした、この世のものとは思えない絶世の美女が、優雅に脚を組んで座っていた。
女帝、マリアンヌ・ド・オルトリア。
ディノッゾの視線と、マリアンヌの視線が交差する。
「…………」
「…………」
一秒の沈黙。
その瞬間。
パァァァァァァァッ!!!
効果音が聞こえるほどの勢いで、ディノッゾの全身から黒いオーラが霧散した。
代わりに、背景にバラの花が咲き乱れるような、キラキラとした爽やかなオーラが爆発する。
(女だァァァァァァーーーーーーッ!!!!!)
ディノッゾの心の中で、天使がラッパを吹き鳴らした。
(皇帝は女! つまり女帝! ということは、セスティーナが一晩過ごしたと言っても、それは女子会! お泊まり女子会だ! 貞操の危機なんてなかった! セスティーナは俺のもの! セーフ!! 完全なるセーフ!!)
地獄から天国へ。
ディノッゾの表情は、先ほどの殺し屋のような顔つきから一変し、爽やか好青年の満面の笑みへと切り替わった。
「お初にお目にかかります、陛下! ディノッゾと申します! いやぁ、素晴らしい天気ですね!」
あまりの変わり身の早さに、周囲の貴族たちは「えっ?」と目を丸くする。
隣に控えていたセスティーナも、(さっきまでの殺気はどこへ……?)と呆然としている。
だが、玉座のマリアンヌだけは、その変化の理由を即座に察したようだった。
彼女は扇子で口元を隠し、クスクスと楽しげに笑った。
「ふふっ。……面白い男だ。なるほど、セスティーナが惚れ込むわけだ」
女帝はディノッゾの単純さと、底知れぬ実力を同時に見抜き、ニヤリと好戦的な笑みを浮かべた。
「よく来たな、伝説の『ダブル』よ。……そなたには聞きたいことが山ほどある。覚悟はよいな?」
こうして、誤解が解けて超ご機嫌になったディノッゾと、そんな彼をおもちゃにして遊ぼうとする女帝との謁見が幕を開けたのだった。
「……許さん……許さんぞ、皇帝……」
ディノッゾはベッドの端に座り込み、ゆらりゆらりと漆黒のオーラを立ち昇らせていた。
一睡もしていない。
彼の脳内では、『セスティーナが城に連れ込まれ、好色な皇帝(男)の手によってあんなことやこんなことをされている』という妄想が、一晩中リピート再生されていたのだ。
コンコン。
控えめなノックの後、ドアが開く。
「ディノッゾ殿、お迎えに上がりました」
現れたのは、凛とした騎士服に身を包んだセスティーナだった。
だが、その顔には隠しきれない疲労の色(※昨晩、女帝に朝まで質問攻めにされたせい)が浮かんでいる。
それを見たディノッゾの脳内回路がショートした。
(やつれた……!? まさか、本当に一晩中……!?)
ゴゴゴゴゴゴ……ッ!!
ディノッゾから噴き出す黒い殺気が、物理的な圧力を伴って部屋の窓ガラスをビリビリと震わせた。
「ひっ!? ディ、ディノッゾ殿!? いかがなさいましたか、その禍々しい気配は!?」
「……いや、なんでもない。行こうか、セスティーナ」
ディノッゾは地を這うような低い声で答え、立ち上がった。
その瞳は死んだ魚のように濁り、背後には怨霊のような黒い靄が見えるかのような気配。
「は、はい……。馬車を用意しておりますので……」
セスティーナは戦慄した。
(まさか、昨日の疲れが残っているのか? それとも、城の警備に対する威嚇? さすがはダブル、気合いの入り方が違う……!)
完全にすれ違ったまま、二人は王家の紋章が入った豪華な馬車へと乗り込んだ。
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王城への道中も、馬車の中はお通夜のような静けさだった。
御者が「馬が怯えて進みたがりません!」と泣き言を言うほどの殺気を垂れ流しながら、ディノッゾは城門をくぐった。
そして、ついに「謁見の間」。
重厚な扉が開かれる。
煌びやかなレッドカーペットの先、数段高い位置にある玉座。
しかし、ディノッゾは顔を上げない。
怒りでどうにかなりそうだった。この先に座っている「男」が、セスティーナを汚した張本人だと思い込んでいるからだ。
カツ、カツ、カツ……。
ディノッゾは歩を進め、所定の位置で片膝をついた。
(……見なくてもわかる。どうせ、脂ぎった好色なオッサンか、女好きのキザな若造だろ。俺のセスティーナに手を出したこと、後悔させてやる。たとえ相手が皇帝だろうと、俺は……!)
その背中から立ち昇る黒いオーラは最高潮に達し、周囲の護衛騎士たちが「な、なんだこのプレッシャーは……!」と震え上がるほどだった。
謁見の間全体が、重苦しい空気に支配される。
その時。
玉座の方から、鈴を転がすような、しかし絶対的な威厳に満ちた声が響いた。
「――苦しゅうない。面を上げよ」
(……あ?)
ディノッゾはピクリと眉を動かした。
予想していた「野太い声」ではない。
むしろ、耳がとろけるような美しい響き。
ディノッゾは、恐る恐る顔を上げた。
そこには――。
黄金の髪を流し、宝石のような瞳をした、この世のものとは思えない絶世の美女が、優雅に脚を組んで座っていた。
女帝、マリアンヌ・ド・オルトリア。
ディノッゾの視線と、マリアンヌの視線が交差する。
「…………」
「…………」
一秒の沈黙。
その瞬間。
パァァァァァァァッ!!!
効果音が聞こえるほどの勢いで、ディノッゾの全身から黒いオーラが霧散した。
代わりに、背景にバラの花が咲き乱れるような、キラキラとした爽やかなオーラが爆発する。
(女だァァァァァァーーーーーーッ!!!!!)
ディノッゾの心の中で、天使がラッパを吹き鳴らした。
(皇帝は女! つまり女帝! ということは、セスティーナが一晩過ごしたと言っても、それは女子会! お泊まり女子会だ! 貞操の危機なんてなかった! セスティーナは俺のもの! セーフ!! 完全なるセーフ!!)
地獄から天国へ。
ディノッゾの表情は、先ほどの殺し屋のような顔つきから一変し、爽やか好青年の満面の笑みへと切り替わった。
「お初にお目にかかります、陛下! ディノッゾと申します! いやぁ、素晴らしい天気ですね!」
あまりの変わり身の早さに、周囲の貴族たちは「えっ?」と目を丸くする。
隣に控えていたセスティーナも、(さっきまでの殺気はどこへ……?)と呆然としている。
だが、玉座のマリアンヌだけは、その変化の理由を即座に察したようだった。
彼女は扇子で口元を隠し、クスクスと楽しげに笑った。
「ふふっ。……面白い男だ。なるほど、セスティーナが惚れ込むわけだ」
女帝はディノッゾの単純さと、底知れぬ実力を同時に見抜き、ニヤリと好戦的な笑みを浮かべた。
「よく来たな、伝説の『ダブル』よ。……そなたには聞きたいことが山ほどある。覚悟はよいな?」
こうして、誤解が解けて超ご機嫌になったディノッゾと、そんな彼をおもちゃにして遊ぼうとする女帝との謁見が幕を開けたのだった。
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