神獣使いは魔法の使えない魔法使い!〜異世界召喚された魔法使いはヌンチャクの使い手だった!奴隷少女と格闘派魔法使いの異世界成り上がり物語!〜

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第二章 逃亡編

第12話  交代

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「三郎君、悪いがそろそろ見張りを交代して欲しい」

 2時間が経過し、見張りを交代する時間になった。

「あっはい。何か有りましたか?」

「怖いくらい何もなかったよ。悪いが早速休ませてもらうよ。僕もそうだが、何よりミライが限界なんだ」

「剛様、も、申し訳ありません」

「ううん。気にしないで。毛布は一枚だから彼らのようにピタッとくっつかないと休めないね。おいで」

「はい、剛様。剛様もお休みくださいね。失礼致します」

 ミライはピタッと恋人のように寄り添う形で剛の胸にその頭を置き、甘えているような感じだった。

 あれっ?と思わなくはないが、奴隷とはいえ女性が進んで身を委ねるのだからどうこう言う事もないし、短時間だが剛の人となりは立場を利用し、奴隷を手籠めにする者ではないと理解した。どちらかと言うとミライが剛に惹かれつつあるのかな?と感じていた。

 それはともかく、二人と交代し、三郎達は見張りを行うべく入り口に座っていた。

 特にやる事も無く、三郎はこの機会に二人と話をする事にした。

「二人共少しは疲れが取れた?僕は大丈夫だけど、女の子には辛いよね?見張りは僕一人で大丈夫だからもう少し休んでいて」

「ご主人様、その、申し訳ございません。もしもの時はどうか私達を捨て置きください。どう見ても私達は足手纏いです。その、申し訳むごごご」

 三郎が手でソフィアの口を塞いだ。

「そんな事はしないよ。僕は決して女の子を見捨てないから。僕は鍛えているから大丈夫だけど、気が回らずごめんね。よく見ると二人共辛そうだよね。今まで劣悪な所にいたようだから体力も落ちているでしょ?悪いけどこれから先、少なくとも別の街で馬車を確保するまでは辛い思いをさせてしまうと思うんだ。ごめんね」

「いけません。ご主人様が奴隷如きにごめんなさいなどと。その、勿体なきお言葉です。それと、犯される所だった私をお救い頂き本当に感謝をしております。その、ご主人様はお強いのですね。驚きました。それとその、胸板が厚く、お顔からは想像がつかないですが、鍛えられているのですね」

「あのう、その、ご主人様と言うのを止めて、ミライさんが剛さんと言うようにせめて三郎と名で呼んで欲しいな」

「か、畏まりました。三郎様」

「様付けじゃなくさん付けじゃ駄目?」

「畏れ多い事でございます。その、出来ましたら様付けを。その、さん付けというのは申し訳ございませんが、どうしてもというのであれば、ご、ご命令を」

「はぁ。分かったよ。今はそれでいいよ。そのうち二人から自主的に様付け以外で言って貰える位の信頼を得られるように頑張るさ。その、僕は君達を奴隷として扱うつもりはないよ。所で君達のような奴隷を奴隷から開放し、一般人にする手立てはあるんだっけ?」

「どうして三郎様は私達に対してそこまで考えて頂けるのですか?会ったばかりの、しかも高々奴隷ですよ?」

「うーん、青臭いかもだけど、僕のいた世界には基本的に奴隷は無いんだ。その、女の子とエッチな事をしたいかしたくないかで言えばしたいよ。でもさ、嫌がる女性と無理やりなんてとてもじゃないけど出来ないよ。そんな精神の持ち主は僕のいた世界じゃ犯罪者位かな。僕は性欲を満たす為だけに奴隷を抱けないよ。もし君達とそういう関係になるとしたら、お互いに好きあって、そういう雰囲気になってからがいいんだ。笑わないでね。その、体が欲しいんじゃなくて、心が欲しいかな。やっぱり偽善で青臭いかな?」

 二人は顔を押さえて泣き出してしまった。ソフィアは部屋でも聞いた事だが、アルテミスは初めて聞いた。まさかこのような方が主人になるなんて、ありえない幸運だと泣いたのだ。

 三郎は二人をギュッと抱きしめた。

「約束します。君達を一人の女性として接し、決して奴隷として扱いません。ただ、今は右も左も分からない異世界人の僕を助けて欲しいんです。手立てが有るなら全力で二人をいずれ奴隷から開放し、自由にすると誓うよ」

「はい!三郎様。その、手立てが無くは無いのですが、莫大なお金が掛かってしまいます。そうですね、一般人の年収のざっと100倍は掛かる筈です。ですからもう諦めています。せめて私達に情を掛けて頂けるならば、優しく抱いて頂ければ幸いです。その、三郎様の戦うお姿、カッコ良かったです」

 アルテミスからも似たような事を言われた。三郎は二人を強引に引き寄せ、己の肩に寄りかからせたが、抗議するまでもなく直ぐに寝息を立てた。やはりまだ疲れが取れていなかったのだ。

 三郎はテンパっていた。異世界に召喚されたと思ったら数時間後には召喚した国が滅亡したっぽいのだ。多分城は落ちたとしか思えなかった。しかも奴隷の少女を保護しながらの逃亡となったのだ。

 人の面倒を見ている余力はない筈なのだが、気が付いたらこうなっていた。見捨てられないし、彼女達に助けてもらわないと路頭に迷うのもあり、頭の中はくちゃくちゃだった。

 二人の温もりが心地良かった。こんなふうにではあるが、今までに女子とくっつくような事は無かったのだ。あの時部屋から脱出する時に小夜子を抱き上げるまでは。
 あいつ助かったかな?溺れていないよな?とふとその顔が思い浮かんだ。

「ねぇ三郎君。女の子にうつつを抜かしてないで、ちゃんと鍛えようよ。最近腕立て伏せサボってない?それと女の子には優しくしないと駄目だぞ!」

 あいつが今の僕の事を見たらそんなふうに言うよな。会いたいな・・・またいつものダメ出しをされたいな、としみじみとボヤく三郎であった。

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