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第二章 逃亡編

第13話 地理

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 三郎は悶々としていた。
 格好を付けたは良いが、二人は控えめに言って美少女だ。そしてその魅惑的な胸が上下しており、胸が強調されている状況でゴクリとなる。柔らかそうな胸が手を伸ばせば触れられる位置にある。誰もが羨むようなきれいな顔立ち、柔らかそうな胸、魅惑的な唇・・・そんな魅力的な美少女が自分に身を委ね、無防備な姿を晒して寝ている。少女と言っても自分と同年代だ。しかも何をしても誰も文句を言ってこないし、権利がある。もし今性的に何かをすれば二人から下衆と思われ、奴隷と主人として修復不可能な溝ができる。できれば一人の男の子として、主人としてではなく見て欲しかった。別の出会い方ができていたら良かったのにとため息をついた。

 年頃の男の子が性欲を我慢するのは一筋縄ではない。ごくりとつばを飲み込み、念仏を唱えてみたりと煩悩を追い出すのに苦心していた。魅惑的な見た目、声、仕草、体の温もりも感じるのだ。それにタイプが違うが超がつくほど好みの外観だ。しかも奴隷に対して何をしても、犯すのも合法と言われている。勿論本人の意思に反し、女性を抱くのは出来ないし、するつもりはない。

 どうしても我慢しきれないなら娼館で女を買う事を考えないとなと、ついつい二人に手を伸ばしそうだからそう思った。

 気を逸らすのに武器の事について色々試して見ようと思った。

 槍や杖にする場合長さは身長の1.5倍が限界だ。それだと扱い難いので実用的な長さで言えば1.5 m だ。ヌンチャクにする場合鎖の長さを含め3 m程になった。やはりヌンチャクに化けるとは言え、勇者武器であり杖だと言うのが分かった。試しに槍状態にして投擲すると、木に刺さるも直ぐに木から抜けて三郎の手に戻ってきた。

 一時間位で申し訳無さそうにソフィアが目覚めていた。

 二人の身の上話は落ち着いてから聞くとした。ソフィアはそれを聞いてホッとしたようだったが、敢えて突っ込まなかった。

 国の規模やザックリとした地理について聞いたが、今いる国はマルダザールという。

「えっと、行き先を決めなきゃだよね。それでまず大雑把でいいからこの国の規模や周辺国の位置や規模等が知りたいけど、分かったりする?」

「はい。この国は・・・」

 途中からアルテミスも目覚め、二人が補いあいながら教えてくれた。二人は寝ている間に着衣に乱れもなく、三郎が何もしてこなかった事に驚いていた。

 この大陸は大小様々な国家から構成されており、この国は小規模な国だと言う。地図上の左隣のハイガスラン国と長年トラブルを抱えていた。
 上下に規模の同じ小国に挟まれており、右側にはハイガスラン国より少し大きいバルドウィン国があり、マルダザールとは貿易が盛んだ。

 上下にある小国とは国境線について多かれ少なかれ小競り合いが有るが、今の所大きな火種はない。
 また、ハイガスランの先には大陸最大国のアルガス国がある。

 また、この国の上側にはアルガス国の8割の国力のハレム国がある。この2国が大陸の最大国になり、各国に睨みを効かせている。

 地面におおよそで位置関係を書いてもらった。

 今回は兵士の訛や装備品の模様やらマークから判断すると、ハイガスラン国が攻めてきたようだった。兵士から奪った剣の柄に描かれた模様は、ハイガスラン国のシンボルマークだそうだ。

 規模や国の特徴を聞き、冒険者に優しい?ハレムが良さそうだと感じた。

 バルドウィンは、自分達が逃げ込む先として第一候補になり、先回りされている可能性がある。小国を経由しなければならないが、大国を最終目標とした。アルガスに行くにはハイガスラン国を経由するしかない。ハイガスランに向かうのは自殺行為となった。

 そうこうしていると、2時間が経過したようで剛達が起きてきた。ミライは剛と腕を組んでピタッと寄り添っている。まるで恋人のような接し方をしていた。

 三郎達がポカーンとその様子を見ていると未来が察したようだ。

「うふふ。私は運命の人と出会ったようですの。奴隷としてではなく、一人の女として剛様の事が好きになりました。あの弓捌き素敵でしたわ!」

 剛は弓の名手だ。高校の時に弓道を行っており、先程も三郎が戦っている中、三郎の視界外から斬り掛かっている者を射ていた。剛もミライに一目惚れしたと言っており、付き合い始めのラブラブ感が有った。

 剛に行き先について相談した。

「三郎君が示した行き先で大丈夫だと思うよ。確かに理に叶った行き先だね。ただ、これから先は偽名を使った方が良いと思うよ」

「と言うと?」

「ほら、僕らは城で名乗ったから、敵に知られていると見て間違いない。そうだな、僕の事はギブス、いや、やっぱりトニーと呼んで欲しいな」

「じゃあ僕はルースで。所で名前の由来は?」

「うん、ドラマの登場人物だよ。ギブスはトニーの上司で、トニーは2枚目で中々のナイスガイかな。所でルークじゃないんだ」

「ブルース・リーから取ったんです。ルークだとジェダイじゃないですか」

「やっぱりそうか。うん。分かった。宜しくルーク。じゃなくてルース。僕の事はトニーと。愛称だと思ってね。この子達は誓約から様付けは避けられないようだけど、一応ミライには人前では奴隷として扱って貰わないとトラブルの元だと言われたよ。アルテミスさんも、ソフィアさんも僕と主従関係にないから、単に仲間として接してくれないかな?」

「その、努力は致しますが、ルース様と同格の方に馴れ馴れしくするのは周りに見られますと変に勘ぐられてしまいますし、使い分けが出来る程私は器用では有りません。ボロが出るのが関の山ですので、お気持ちだけ頂戴します。お気遣いありがとうございます」

「そっか。分かったよ。無理強いはよくないからね。さて、一応皆に確認だけども、僕らのリーダーは今のパーティー登録と同じでルースで良いよね?」

 ルースはえっ?となったが、3人が頷いていて、拒否出来ないのだと感じた。

「と言う事で宜しくねリーダー!残念だけど、僕はそんなに頭が良くないんだ。行き先を決めるのに点数を付けて優先順位をつけてたろ。何だったかなそのやり方。確かにQCの七つ道具にあったよね。僕には思いつかなかったよ。僕がルースが決めた行き先で良いといったのはそこに書いていたのを見たからだよ」

 そうしてリーダーを押し付けられたルースがブツブツ言っていたが、とりあえず国境や集落を目指して先を進む事にしたのであった。
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