神獣使いは魔法の使えない魔法使い!〜異世界召喚された魔法使いはヌンチャクの使い手だった!奴隷少女と格闘派魔法使いの異世界成り上がり物語!〜

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第二章 逃亡編

第27話 臨検と戦闘

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 前方から五十騎ほどの騎馬の一団が向かって来たのだ。
 何もない平原であり、多少の草はあるが、うつ伏せになれば辛うじて体を隠す事が可能かも分からないが、それ位の高さである。だが馬車で進んでいる以上どうにもならないのだ。

 まだ少し距離があったが、ルースは嫌な予感しかしなかった。

 ルースは御者席から器用に馬車の中に入り、荷物を収納の中に入れていった。トニーとミライに前方から騎馬の一団が来ている旨を告げ、最悪の場合馬車から馬を切り離し、自分が時間稼ぎをするから国境の壁に向かって行くようにと指示をした。国境に対し、進行方向から見て右側の方に進みある程度、そう30分程進んだ処で落ち合う事にすると告げた。

 トニーには最悪の場合は皆をインビジブルで守りながら逃げ、その後自分を見付けて欲しいと伝え、自分も壁伝いに歩くと手短に話した。トニーは短く分かった、君も死ぬなよとだけ答えた。

 とりあえずターバン風にタオルを巻いて、髪が見えないようにした。

 またもや器用に御者席に戻り、不安そうにするソフィアに最悪の場合の事を伝えた。万が一の時はアルテミスと一緒に馬で逃げてくれと。そしてルーナを守ってあげて欲しいと。

「とにかくトニーと一緒にいるんだ。僕の方は大丈夫だから。万が一の場合は相手を切り伏せながら自分が時間を稼ぐからさ。自分一人だけなら何とでもなるけど、ソフィア達を守りながらであればかなり辛いよ」

 ソフィアは震えながらうんと唸るしかなかった。

 アルテミスも近くに来ており、アルテミスを御者席に座らせ、ルースはリーナの背に乗っていた。

 手元にコンパクトな状態として持っている4節根の状態であれば目立たないので、何かを持っているとは分かっても、武器を持っているとは気付かれ難い。また、鎖の長さを調整すれば最大3m位の長さまで攻撃は当たる。杖や根の状態にすれば1.5m位の長さが限界である。

 脇に避けて道を譲ろうとしたが、案の定道を塞がれてしまった。

 ルースはチッとつい舌打ちをした。城を攻めていた側の兵士が着ていた装備や鎧と同じたったからだ。

 騎馬の一団は8メートル位先で止まり、その中の一人が駆け寄ってきた。そして3名が後を追ってきて、付き従っている感じだった。

「臨検だ。馬車の中を確認させて貰うぞ」

 ルースは馬車と相手の真ん中位に立っていた。

 後から来たうちの2名が馬車の方に行くが、ルースは最初に声を掛けてきた者と対峙している状態だ。

「他、隊長!えれえべっぴんがいるぜ!こりゃあすげー!高級奴隷だぞ」

「まったくこの私がこんなしょうもない任務を与えられ、ハズレを引いたかと思ったが当たりじゃないか!くくくくく貴様が一行を率いているのか?聖獣使いのようだな?な。よもやこのような旧街道で貴様達のような者に出くわすとはな。俺も運が向いて来たな!これで父上も私を認めざるを得ないな。くくく」


 先の二人が馬車のドアを開け中を見ていた。

「こりゃすげー!高級奴隷が全部で3人もいるぜ!こりゃあ今夜はお楽しみだな!」

 どうみても状況は良くない。ルースは冷静に対応をしようとした。

「僕達に一体何の用ですか?僕らは先を急いでいるんですが」

「悪いなぁ兄ちゃん。死にたくなければ女を置いていけ!と言いたいところだが駄目だな。俺達に遭遇したのが運の尽きだ。お前が生きている限り俺達はこの奴隷達とやれないからな。まあ恨みはないが運が悪かったという事で死んで貰うぞ。いくら聖獣使いとはいえ、この人数には叶うまい。せめてもの情けだ。抵抗しなければ楽に死なせてやるぞ。そうだな、女をお前の目の前で犯し、犯し終わったら女の見ている前で喉を掻き切ってやろうか?」

 隊長と言われた者の横に部下が一人いたが、そいつが剣を抜いて死ねと一言述べながらルースに斬り掛かった。ルースは咄嗟にヌンチャクを振るい、その者の顔を打ち付け馬から落とした。皆甲冑を着込んでおり、兜の面は上げてあるが、兜に着いている飾りから位の上下が推測出来るが、顔はよく見えない。

「ちっ!我らに逆らうというのだな!楽に死ねると思うなよ!みんな捕らえろ!女は殺すなよ!生きて捕えろ!男は殺しても構わぬ!やれ!」

 後方にいた者も接近してきた。ルースはリーナから飛び降り、馬車の方にいた者を立て続けにヌンチャクでなぎはらった。アチョオ!
 ホアオー!と間の抜けた奇声を発していたが、戦闘に興奮していたのだ。

 そして手持ちの剣で馬車を壊し馬を解いて独立させた。

「馬で逃げろ!」

 そうすると馬車から慌てて飛び出てきた四人が馬に乗り駆け出した。

 既にリーナが近寄ってきた兵士を攻撃していた。リーナは幼いとはいえ賢い子の為、何が起こっているのかが分かっていた。ルースの口調などから相手が敵だと判断したのだ。

 手練れがいるというのが分かり、隊長と言われた者は後ずさり、部下に対応を押し付けていた。

「聖獣使いがいるぞ!気をつけろ!聖獣は捕らえて本国に連れ帰れば恩賞が出るぞ!こんなしがない偵察部隊からおさらばだからな!」

 ルースはリーナと一緒に必死に戦った。後退しつつ距離を置き四節棍にしてアウトレンジから近付く者を順次葬っていた。正直兵士程度になら2対1位なら遅れを取らない自信が有った。ただ、それ以上だと厳しいと、己の技量を判断するだけの力量を持ち合わせていたので冷静に判断をしていたが、今は時間稼ぎが必要だと。逃げながら戦略を考えつつ、追ってくる者を各個撃破していた。

 それも時間の問題だ。個人の技量がこちらが遥かに上だと分かったようで隊列を組んて半包囲をしようとしていた。個の力は上でも、集団には勝てない。まだ10人位しか倒していなかった。

 それでも今はこれしかないとフォアオーなどと発しながらヌンチャクを振っていく。

 4節棍、この状態にして剣の間合いに複数の兵士に入られる前に倒していく。あるものは肩を砕かれ、ある者は足を砕かれていた。殺す必要はないが、多勢に無勢の為急所を外すつもりが手元が狂い、急所に当たる事もある。当たった半分は即死だった。

 そんな中一騎がトニー達を追い始めた。まずいと思い咄嗟に槍状態にした勇者武器を投擲した。すると見事にその胸に刺さり、落馬させる事に成功したのであった。
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